ナナシの祟り:天音島の不可解な掟。
萬賢(よろずけん)
エピローグ
「暗夜の波 炎映す故郷 独り泣く」
いつしか、授業で聞いた千年前の歌が口から溢れる。
遥か彼方の海の向こうに聳え立つ天音山が、大地を揺るがし、空へと火と煙を噴き上げていた。赤く灼熱の光を放つ山の斜面は、本土の海岸までその光を届けていた。
そこに一人、僕は立っていた。安全な対岸の海辺から、炎の舞う島をただ眺めていた。懐かしい風景が思い出と共に心に浮かび上がる。痛みが深く刻まれ、涙が溢れてきた。
春香、涼、キツネ、美空、アスカ――そして、i。
なぜ、僕だけが助かったのか。その疑問と罪悪感に苛まれながら、膝を砂に突き刺し、そのまま泣くように倒れ込んだ。
しかし、終わりではない。右手で胸につけていた塊を握りしめ、眩しく輝くその光が僕に力を与えてくれた。
砂を蹴って立ち上がり、奥歯を噛みしめて、僕は神が与えた過酷な試練に再び立ち向かっていく。
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