第25話 たまたま……? いや、そんなことはないな。

 いつも強気なサファリだが、カロリーナには勝てない。

 あんな姿を見て、それをシェリーが知っているなんてわかった日にはサファリは間違いなくとばっちりを受ける。


 公爵家四天王の一人とはいえ、サファリも小さな時からカロリーナには弱いのだ。

 これは、どんなに腕っぷしが強くなろうとも別の力関係が働いている以上、変わりはしない。


 僕たちは途中からカロリーナのことは気にせずにデザートをお腹いっぱい食べることにした。シャリーは本当に気にしなかったせいで、カロリーナとすれ違うハプニングもあったが、そのまま気が付かないふりでやり過ごすことができた。


 その時のカロリーナの焦った顔と、すれ違ってからのどや顔はなんとも見ものだった。

 きっとあの怪しい変装に自信をもったに違いない。

 お店を出る前に僕はこの後の予定を確認する。


「さて、朝一で食事に来たけど、この後はどうするつもりなの?」

「そうだね。かき氷でも食べに行く?」


「昨日食べたし、今デザート食べたばかりじゃん」

「やっぱり夏と言えばかき氷じゃない?」


「夏といえばって言うのは否定しないけど……それはまた今度かな」

「今度っていつ?」


「今度は今度だよ」

「今度なんてないかもしれないじゃん」


「そんなことないよ。君はまだまだ生きるし、明日も必ずくるから予定を先送りしても大丈夫だよ」


「そんなことわからないじゃない。幻術の森の魔女にいきなり襲われて殺されることだってあるじゃない」


「それはならないよ。幻術の森の魔女がでてきてもサファリが守ってくれるから」

「そこは僕が守るじゃないの?」


「僕は戦闘系の魔法使いじゃないからね」

「まぁそういうことにしておこう。それじゃあかき氷を食べにいくよ」


 僕の先ほどの意見はやっぱり無視され、そのまま馬車に乗せられかき氷を食べに行くことになった。そのかき氷屋は最近王都でも有名になりつつある隠れた名店らしい。


 僕たちの馬車がその店の近くまで行くと、そこにはシェリーの家の馬車に似た馬車が止まっている。


「シェリーわかっていて来ている?」

「さぁなんのことかしら? たまたまじゃないかな」


 その馬車はカロリーナが擬装用に準備した馬車だった。ただ、なんて言えばいいのだろうか。偽装が下手すぎてもう、なんて言ったらいいのかもわからない。

 見慣れた人が見れば公爵家の馬車であることは間違いない。


「今日はお姉さんに突っかかりたい日なの?」

「そんなわけないじゃない。たまたまよ」


「たまたまでかき氷食べにくるの?」

「もちろん! 実は私かき氷なら毎日食べられるんだ」

「そういう設定にしておくよ」


 彼女はそのままお店の中へソランと一緒に入って行く。

 僕とサファリはお互いに視線をかわす。中に入っていったらもめ事になる未来しかみえない。僕たちはできれば入りたくないが……。

 大きくため息を吐き、シェリーたちのあとを追って店の中へ入った。

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