幸せな負けに負けるな幸せな二人よ幸せに !

森緒 源

第1話 幸せな負けに負けるな幸せな二人よ幸せに !

「お義父さん、幸子さんを僕に下さい!…絶対幸せにします !! 」

「お父さん、お願い ! 私も幸男さんを愛してるの、結婚したいの !! 」


「お前たち、いきなりそんなこと急に言われてもなぁ、二つ返事でハイどうぞ、ってな訳には行かん!」

「ご挨拶が遅くなったことは申し訳なく思っています!…でも僕はどうしても幸子さんと一緒に生きて行きたい、幸子さんじゃなきゃダメなんです!」

「だが、私も今日まで幸子を大事に愛情込めて育てて来たんだ!…タダで君にくれてやる訳には行かんな !! 」


「…そうですよね…分かりました、じゃあ百万でどうですか?」

「ちょっと!…幸男さん何を言ってるの? タダでくれてやる訳に行かないって、そういうことじゃないでしょ!」


「…負けたよ」

「え?…ちょっとお父さん !? …」


「幸男くんの覚悟は分かった!…百万で幸子はくれてやる、幸せにな !! 」

「二人とも何?…私が百万って、えっ何それ !? …バカにしてるの?」


「え?…だってお前、幸男くんと結婚したいんだろ!? …だったら別に良いじゃないか ! 」

「ふざけないで!…今日まで大事に育てて来たとか言ってたのに、それがたった百万て何よ!…だったらせめて三百万にして!」


「分かった!…と、いう訳で幸男くん、娘は三百万で君にくれてやる、幸せにな!」


「負けて下さい!」


「何?…」


「三百万も持ってないですし、お義父さんはさっき百万で OK 出したじゃないですか!…それがいきなり三倍に増額じゃあ、ぼったくりバーですかここは !? 」

「ちょっと幸男さん、ぼったくりバーとは何よ!…言って良いことと悪いことがあるわよ!」

「分かった!…という訳で百万よりびた一文出しません !! 」

「いやだからそういうことじゃなくて !! … 」


「…負けたよ」

「え?…お父さん、何それ !? 」

「幸男くんの言い分はもっともだ!…百万で娘はくれてやる !! …幸せにな」

「ありがとうございます、お義父さん ! 」

「え?…二人とも何? 私ものすご~く釈然としないんだけど!」


「という訳で幸子さん、お義父さんも結婚を認めてくれたし、僕が絶対幸せにするから、いや~良かったなぁ」

「私ものすご~く釈然としないんだけど!…百万だ三百万だとか負けろとかぼったくりとか、人をバッタもん商品みたいに… !! 」


「三百万は持ってないけど、僕の貯金が二百万ほどあるんだ!…百万はお義父さんに、もう百万は結婚する前の幸子さんにプレゼントするよ!…独身最後の想い出になるように使ってくれ ! 」


「負けたわ… ! 」


「幸子、幸男くん、良かったな !! … 結婚は、当事者二人だけじゃなく、家族みんながそれぞれ幸せにならなくてはいかん!幸子、そのことをしっかり心にとめて、花嫁になるんだぞ!」

「はい、お父さん!」


「よし、それでは幸男くん、花嫁の父として君に言っておきたいことがある!… ちょっとこっちに来てくれ」

「はい、…お義父さん、どんなことですか?」


「百万は、私の家内には内緒で、現金でお願いする ! 良いよな?」


「えっ? はい、…いや~、お義父さんには……負けました ! 」



 幸せな負けに負けるな幸せな二人よ幸せに !

 完



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