生ぬるい

おなまみっく

プロローグ

生ぬるく、生臭い風が顔を撫でる。

赤黒い空を見上げ、心が凪ぐのを感じる。一歩進むごとに、腐った肉片を踏みつける。


くちゃりくちゃり


もうとうの昔に、そんなものは気にもならなくなった。

進む方向が正しいのかもわからない。ただ今まで通り足を前に進めるのみ。


何のために?

私はなんのために生きている?


流れる血で喉の乾きを潤し、腐りかけの肉で空腹を満たし、ただ呼吸をして、歩いているだけ。


何のために?

私はなんのために歩き続ける?


他の命を奪ってまで。

もうよくわからない。


ヒュッヒューゴヒュッ


もう声も出ない。喉の奥に血の塊が絡みつき呼吸の邪魔をする。体はもう人間として生きることを忘れたせいか咳も出ない。


私は一体何になったのだろうか。

まぁいいか、考えるだけ無駄だ。

心は浮くことも沈むこともなくただ凪いでいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る