高校⑤
そんな僕にも一度だけ色恋話が出たのは高校3年に上がった直後。
『宝城君って付き合ってる人いるんですか?』
偶々図書室で読書に耽っていたある昼休みに、突然近寄ってきた女子にそんな質問をされた。
『いないよ。』
本から目を外して質問主の顔を見たが、顔は見た事があるけど名前までは知らない子だったので、また本に目を戻して素っ気なくそう答えた。
『だ、だったら私とお付き合いしてくれませんか?』
『え?何で?』
『な、何でって……宝城君のことが好きだから……って理由じゃダメですか?』
他人から好意を寄せられる事に慣れていなかった僕は、その単純な理由に呆気に取られていた。
『好きだから付き合いたい』というドストレートな感情表現が面白い子だと思った。
でも……
『僕はキミの事を全然知らない。いきなり付き合うのは無理。』
『そうですか……じゃ、じゃあ友達からならいいですか?』
『別にいいんじゃない?』
その子は『やった!』と小さくガッツポーズをし、『
よく分からないまま何となく興を削がれた感じになった僕は、読んでいた本を棚に戻して図書室を出た。
『折角告白されたのに……』
教室に戻ろうと廊下を歩き出すと同時に背後からぼそっと声が聞こえた。
驚いて振り返ると浩香が不機嫌そうな顔で後ろを着いて来ていた。
『見てたのか?』
『悪い?』
『別に。』
『そ。』
拗ねたような顔と声でそうやり取りすると、浩香は『ふんっ!』とソッポを向いて何処かへ行ってしまった。
訳も分からず不機嫌になる浩香なんて大嫌いだ。
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