10.お荷物の中で
ボロボロの攻略組に連れられ、大迷宮の外へ出る。
入り口から少し離れた所に巨大な荷車が六つあり、それぞれ三つずつを
「お前達は、最後尾の荷車に乗ってくれ!」そう言って姿を消す。
すぐにわかったことだが最後尾の荷車は誰も乗らず、荷物専用の荷車のようだ。
まぁ、二人だけなら話しやすいな。
「師匠、世界ギルドって……」
「え? まさか世界ギルドを知らないの!?」
「あ、はい……」
世界ギルドはそんなに有名ではなかったのかと一瞬思ったが、リーネなら何となくだが理由は分かるな。
「世界ギルドは、冒険者ギルドも所属する今では世界に広がり知れ渡っている組織で活動目的は世界の平和のために動いているな。例でいえばドラゴン級のモンスターの討伐やモンスターの蹂躙などでは戦力を回している」
世界ギルドの中には冒険者ギルド、攻略組、神典協会の三つが存在し、冒険者ギルドはどこの町にも支部がある気軽に冒険者登録をでき、組織的ではないがクエストを熟すことが役割となっている。
次に攻略組は攻略を目的とした組織性を持ち、加入するには冒険者より厳しく、一定以上の実力が合格基準とされており、実力のある冒険者が攻略組に加入することが多い。
最後に神典協会は神を崇拝する者、聖人と聖女によって構成されており、実力は攻略組と同等の合格基準であり、目的としては悪魔や魔人などの魔族などを対処や各国の守護などを行っている。
「へぇ~……目的は同じだけど役割が違うんですね」
「まぁね、私からしたら一番危ないのは神典協会だね。あの組織は魔王軍討伐に全戦力を投入していたからな」
「まぁ、神の大敵として魔王ということですか……そういえば師匠と魔王の関係、しっかりと聞いていませんでした!」
「ん? まぁ、二千年も前だからもう話しにくいことはないけど……まぁ、時間あるし話してやろう」
二千年前、魔王は存在した。
『終焉の魔王』アビルス・シィル・ルヴォロワール。
二つ名の通り、終焉のような力を操り、配下につく者は絶対的忠誠心を示し、同族からも恐れられている存在である。
黒き世界で最強の存在と言われたが、魔王が現れれば勇者も現れる。
世界の理なのか分からないが、魔王と勇者は同じ時間に生きると言われている。
だが『終焉の魔王』なら今代の勇者を倒れると言われていたが勇者によって殺された。
『勇者』ライン・アハルド・ヴァーリシュという人間であり、勇者の力を宿し、人知を超えた力を持つ者。
だから人間の勇者は魔王を倒せる。
正直な話、魔王様が倒されてすぐは『勇者』を倒す方法を模索していたが、存在するが意味不明な勇者の力の正体を明かすこともできず、断念した。
だったら自分が勇者を殺すほどに強くならば……。
そう思ったのは丁度百年経ったくらいだ。
「魔王が倒されれば、勇者は役目を終える。その勇者が死ねば、勇者は魔王が現れるまで現れることではない……魔王からしたら最悪の関係だ」
「師匠は、そんな時間、勇者を殺そうと?」
「どうだろう? 千年超えてから分からなくなったけど……今は違うな」
「そうですか……」
「安心した? 私が復讐心に溺れていないと」
「え! まぁ、はい!」明確に言い当てられたリーネは戸惑っていたが、最後は綺麗な笑顔で認めた。
「ふッ、リーネは正直なのが取り柄だな!」
「それ、褒めてますか?」
「中立かな……」ミーシャは荷車の後ろから見える景色を眺める。
ガタンガタンと揺られながら攻略組によって世界ギルドへ連れて行かれる。
そして二時間くらい経ち、ミーシャとリーネは揺られながら眠りについていると男達の声が聞こえた。
「おい、起きろ!」
「ん……あれ?」
最初に起きたのはリーネ。
男達に促られ、ミーシャを揺さぶり、外を見ると身体が自然と荷車を降りる。
「うわ~、師匠、師匠!!」とミーシャの耳にリーネの声が飛び込んできた。
「ん……なに、着いた?」
「師匠、ここ凄いですね!!」
「え、まさか聖王国来るの初めて?」
「はい、王国より凄いです!!」
ミーシャも荷車から降り、眩しいと感じる太陽の光を手で遮る。
「さぁ、こっちだ!」
「あ、はい……」
「師匠! 行きましょう!!」
「おい、観光はまだだぞ!!」
王国より発展しているラヴァエル聖王国の光景に魅かれたリーネは天真爛漫に駆け巡り、ミーシャはリーネに手を繋がれ、引っ張られながら国の中へと消えていった。
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