2.煽りと驚き
「はぁ~……時代が変わったせいか、人の考え方が変わっているかな?」
そんなことを呟きながらミーシャは魔法書と魔道具を表紙が黄金で装飾されている一冊の魔法書に詰め込んで行く。
中位魔法――《
魔法書と魔道具の他に魔法自体や食料も収納している。
これ一冊持ち歩けば、困ることはないが逆に失えば終わりということだ。
まぁ、それも対策済みだ。
せっせと片付けをし、完了した。
「ふぅ~、二か月くらいだったけどいい場所でした!」丁寧にお礼のお辞儀をし、黄金の魔法書を背負い、白い杖を片手に持ち、部屋を出る。
すぐ横には宮廷魔法使い指導役ライゲル・ルージェルトが壁に寄りかかっていた。
彼のデフォルトの表情がミーシャから見たら、こちらを完全に睨みつけている。
「はい、これ鍵です」
「ん、何でお前みたいなガキが宮廷魔法使いに就けるのか、不思議で仕方ないな……」
何でだろう。
何でこいつは人の不幸な所に更にそれを加速させることを言うのだろうか?
全く……。
私から言わせれば、こんな奴が宮廷魔法使いに就けることが不思議だ。
一度私が憧れた? というか、興味があった職業にこんな奴がいるとは思わなかったが……。
「それは貴方のような人物が宮廷魔法使いの指導役というのも稀、いや状況がおかしいですよ!」完全なる言い返しと表情で煽り、対抗する。
そんなミーシャの煽りに何か引っかかる所があるのか、眉をピクリと動かす。
「何だと……クソガキィィィ……」
「一応言っておくけど、見た目がガキだが中身は貴方より上だと思いますけど?」
「貴様ぁ、追放されるからと言ってよくもこの俺にぃ……」
「まぁ、それもありますが、こんなガキの言い返しに怒るとか本当に貴方のような人が宮廷魔法使いだということが疑問でしかないですね! じゃあライゲルさん、二か月の間お世話になりました!」
彼にお辞儀をし、そそくさと後にする。
「貴様ぁぁぁッ!! この俺をバカにしたことを後悔するがいい!!」絶叫と共にライゲルは如何にも高級な短杖を取り出す。
「は?」
まさか、魔法を行使するために発展するとは!?
ただやり返しただなのに……。
「死ねぇ――《
中位魔法――《
「ッ――――《
その瞬間、ミーシャの周りが凍り付き、《
ライゲルが発動した同じ中位魔法を発動した。
「なッ! そんな、バカな……」
「室内で魔法を行使するなんて、宮廷魔法使い失格ですね! 相手が私じゃなければ、ここは崩壊していましたよ!」とライゲルにそう告げ、再び歩き出す。
「ふぅ~……」とライゲルが見えなくなるまで廊下を歩いたミーシャはため息をついた。
「――流石ね、訪ねてみたら健在で何よりだ」
気配もなく、彼女は壁に寄りかかり、いつの間にかミーシャの横に黒いドレス、赤紫色の長髪の女性がいた。
「ッ……どちら様でしょうか?」ただならぬ気配と魔力、突如現れた女性に警戒しながら問いかえる。
その問いに女性は不気味な笑みを浮かべ、口を開く。
「あら、私は貴方を訪ねてきたのに貴方は私を知らないと? まさか二千年経っただけで忘れちゃったわけじゃないよね?」
「二千年……まさか、『破滅の魔女』ナイラ・ディルリオン――――!!」
二千年前、勇者と大魔王が戦っていた時代に大魔王と肩を並べて名を轟かせていた者達の一人だ。
その者達は大魔王の下に着くことを拒絶した強者。
『破滅の魔女』……その名の通り、破滅を呼ぶ魔女。
まぁ、何で私が二千年前の人物と知り合いなのか……それは無論、私も二千年前から生きていたのだ。
だけど『破滅の魔女』は大魔王が勇者に敗れた後、『破滅の魔女』の情報は一度も耳にしなかったから死んだとばかり思っていたが……。
「い、生きていたなんて……だけど今更私に何か用ですか?」
「用はないけど、二千年前から生きている人なんて指の数ほどしかいない……その中で貴方を選んだわけで……」ナイラはミーシャに近づき、まじまじと見る。
「へぇ、私もそうだけど変わっていないねぇ~……」
「……要件はそれだけですか――?」とミーシャが訪ねた直後に横から声がかかる。
「――ナイラ様、キルア様がお呼びです」とメイド服を着た水色の短髪の女性がまたまたいつの間にかそこにいた。
「ありがとう、ミナ。じゃあまた会えたら会いましょう!」と最後に残し、二人は城の奥へと歩いて行き、ミーシャは少し不気味に感じながら、城を出て、トボトボと歩き出す。
「控えめに言って、最悪な日だ。まさか、大魔王と肩を並べていた一人、しかも『破滅の魔女』が生きていたなんて……」
追放から過去の敵であった女性との対面、自然と感情が下がるのも無理もない。
そして城下町を歩いていると少し騒がしくなったので、その方向を向くと冒険者ギルドの前だった。
「ん……」ギルドの前に設置されている掲示板の一つの記事に釘付けになった。
「難攻迷宮、か……行く所もないし、そこに行って見るか!」迷宮攻略は二か月前から収集や研究でやってきた。
もうだいぶ慣れ親しんだと言っても過言ではない野外の寝泊まりや冒険全般。
自分は中より外の方か得意だということを自覚し、早速得意分野へと飛び込むのだった。
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