第50話 早朝からランニング

「おはよう! 白中晴斗君! 」


 玲香が晴斗に元気よく挨拶する。玲香はTシャツ半ズボンと動きやすい格好だ。Tシャツの胸辺りはしっかり膨らんだ双丘が存在する。想像するだけで弾力があり柔らかそうだ。


「うん。おはよう」


 晴斗も笑顔で挨拶を返す。


 時刻は早朝7時。晴斗の自宅の最寄り公園に集合した。場所は予めレインで伝達していた。


「ありがとうね。山本さんが俺の運動能力向上に協力してくれるのは助かるよ。バスケ部のマネージャーとはいえ、確か昨年の体力の測定成績では学年の女子の中で1番だったんだよね? 」


「よくご存じで! 玲香は運動には自信があるのだ! 」


 堂々と胸を張る玲香。


 玲香は去年の体力測定の成績で50メートル走と反復横跳びなど全ての種目で学年女子1位の記録を叩き出した。


「さて、じゃあ早速だけど、ランニングを始める前にストレッチから始めるよ」


「えっ!? いきなり走るんじゃないのか?」


「いきなり走って筋肉痛になったらどうすぼ……まずは柔軟だよ。怪我したら元も子もないからね」


 そう言って晴斗は地面に座り込むと、両脚を開いて前屈をする。地面は砂で臀部の部分は汚れるが気にしない・


 晴斗の両膝の間に身体を入れるように玲香も座る。


「んー!! 硬いなぁ〜!! 全然曲がってないぞ!」


「俺、めちゃくちゃ身体硬いんだよね」


「むぅ〜!! もうちょっと伸ばさないとケガしちゃうよ」


 後ろから玲香は晴斗の背中を前に押す。両手を晴斗の両肩に置き、胸を接触させながら。


「ちょ…。痛い痛い! がちで限界なの」


「ほれほれぇ〜」


 さらに強く押してくる玲香。


「おぉ〜!! これは凄いなぁ〜!! ってそんな場合じゃない。まじで足がつりそう~」


 玲香の柔らかい感触が伝わってきて、つい変な声を出してしまう晴斗。だが、すぐに我に返り嘆く。



「ふふん♪ もっとやっちゃおうかなぁ〜」


 調子に乗ってさらに押してくる玲香。


「ぎゃあああっ!!」


 結局、足のつる寸前まで晴斗は玲香にストレッチを施された。



「ぜぇ……ぜぇ……」


「大丈夫か? 白中晴斗君? 少し休憩する? 」


 晴斗は公園にあるベンチで横になって息を整えていた。ストレッチだけで晴斗の身体は限界を迎えていた。まだランニングに着手すらしていない。


「だ……だいじょうぶ……。ランニングしよ」


 苦しそうに晴斗は立ち上がる。


「はい! スポーツドリンク買ってきたよ」


 玲香はスポーツ飲料の入ったペットボトルを差し出す。


「ありがと……」


 ゴクッゴクッゴク。晴斗はスポーツ飲料を一気に飲み干す。冷たい液体が喉を通り抜けていくのがよくわかる。


「ぷはっ! 生き返ったよ。山本さんありがとう」


「どういたしまして! じゃあランニングしようか! 」


「お、おう」


 意外に玲香はスパルタかもしれない。晴斗と玲香は公園内を走ることにした。2人は並んで走る。最初はゆっくりジョギングペースで走っていたのだが、徐々にペースを上げていった。そして10キロ近く走ったところで休憩を挟むことになった。


「どう? もうちょっとスピード上げても付いてこられる? 」


「うん。このくらいなら問題なく走れると思う」


「そっか。じゃあ次はもう少し速くするよ」


 2人は再び走り始めた。


「はっ! はっ! ほっ! 」


 玲香の掛け声と共にペースを上げる。


「いいね!その感じだよ! 」


 晴斗も負けじと食らいつく。


「白中君! あと5分だけ頑張って! 」


「はぁ。わ、わかった…よ! 」


 それからラストスパートをかけて遂にランニングは終了した。


「お疲れ様!」


 玲香がハイタッチを求める。


「う、うん。お疲れ…さま」


 きつそうに肩で息をしながらも、晴斗は玲香とハイタッチを交わした。その後、両ひざに手を付き、数秒間酸素を体内に求めた。その間、全く足を微動だにできなかった。

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