第37話 マネージャーは忙しい
「こちら。白中晴斗君。玲香のマネージャーの仕事を手伝ってもらうためにボランティアとして協力してくれたの」
「白中晴斗です。まだわからないことしかありませんが、精一杯頑張りますので宜しくお願いします」
丁寧に頭を下げて誠意を示す。
パチパチと男子部員から拍手をもらう。
「それでは練習始めるぞ。123! 」
「「「うぉぇ〜〜」」」
キャプテンの掛け声に続き、部員達が叫ぶ。
「1234」
「「「5678!!」」」
掛け声を出しながら、部員達は体育館内を円を描くように周回する。
「白中晴斗君。玲香達はドリンクの準備しよ! 」
「うん。わかった」
晴斗は玲香の指示に従う。
玲香と一緒に昇降口に設置された洗面所に移動する。
「このスクイズボトルに氷とポカリの粉末を投入してから、水を淹れてね」
玲香はスクイズボトルを晴斗に差し出す。
「了解」
スクイズボトルを受け取り、指示通りに氷とポカリの粉末を投入する。その後に洗面所の蛇口を捻り、水を淹れる。
「それで完成だね。そのポカリが詰まったスクイズボトルを20個作る必要があるからね」
「2、20個も! 」
「うん。とにかく早くしないと部員が水分補給できないからちゃちゃっと完成させるよ」
(俺、今日体力がもつかな)
休み暇もなく、手を高速で動かし、10分ほどでポカリの詰まったスクイズボトルを完成させる。
「よし! 完成したスクイズボトルをすべてカゴに仕舞ってっと」
1つのカゴが満帆になると、次のカゴにスクイズボトルを玲香が投入する。
すべてのスクイズボトルを仕舞い終わると、晴斗と玲香は体育館に戻る。
「みんな! ドリンクできたよ! 」
大きな声で玲香が部員達に呼び掛ける。
「おお。サンキュ」
「喉カラカラなんだわ」
部員達が一気にドリンクの入ったカゴ周りに密集する。次々と部員達はポカリを口内に流し込む。
(すごいな。あれだけ用意したのに。1時間も経たずに全部無くなりそうだな)
実際に、2、3個のスクイズボトルは空になってしまった。
「よし! 次はシュートの練習だ。まずはレイアップシュートから。マネージャー達はコーンの準備とシュートの回数を数える仕事を頼む! 」
キャプテンの声掛けを合図に、部員達はシュート練習の準備に就く。半分以上の部員がバスケットボールを手に持つ。
ちなみに、レイアップシュートとは走りながら、ゴールの真下辺りでシュートを放ち、バックボードに置いてくるイメージのシュートだ。某有名なスポーツ漫画の主人公がシュートを打つ際に、置いてくる、と呟いていたシュートがこれだ。
「玲香はタイマーでシュートの数をカウントするから、白中晴斗君はコーンを用意して」
駆け足で玲香はタイマーの設置された体育館の真ん中辺りに向かう。
「わかったけど。コーンはどこに置けばいいの? 」
コーンがどこにあるかは理解しているが、どのような使い方をするかまでは知らない。
(そもそもコーンなんてバスケで使用するのか? )
「とにかくコーンだけ用意して部員に渡して。そうすれば何とかなるから! )
既にレイアップシュートの練習は始まっており、玲香はタイマーでシュートの決まった本数をカウントする。
「わかった」
(俺大丈夫かな? 足手まといになってないかな)
晴斗はそんな一抹の不安を抱きながら、コーンがある体育館倉庫に足を踏み入れた。
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