第19話 一歩進んで弁当後の膝まくら
「すごい美味しかった! ご馳走様でした! 」
大変満足した気分で、晴斗は弁当袋を祐希に手渡す。返却したのだ。
弁当箱の中身は完全に晴斗が食べ尽くした。
昼休みの屋上。祐希が手作り弁当の提供を晴斗に初めて1週間が経過した。
「お粗末さまでした。満足してくれて非常に嬉しいよ!」
晴斗の満足した顔を見れて嬉しいのか。祐希はニヤニヤが止まらない。頬は緩みっぱなしだ。
「満腹の状態になったら眠くなってきたかも。ご飯食べたら毎回この状態になるんだよね」
盛大な欠伸を漏らす。晴斗の目尻に幾分か涙が溜まる。
「身体の感じはどんな感じ? 身体全体から力が抜けてく感じ? 」
「うんそんな感じ。毎回そうなんだけどフワフワするんだよね」
現段階の状態を感覚的に、晴斗は言語化する。中々、感覚を言語化することは難儀だ。
隣に座る祐希がいきなりモジモジし始める。身体を左右に揺らす。
「もし…よかったら。…私の膝まくらでおねんねする…」
恥ずかしそうに祐希は頬を染める。呼応して耳も赤く染まる。
「えっ!? そんなのいいの? 少なからず野末さんの負担になるよ? 」
疑心暗鬼で晴斗は疑問を投げ掛ける。聞き間違えた可能性も無きにしも非ずだ。
並外れて晴斗は耳が肥えていないのだから。
「…うん…。少し恥ずかしいけど。…白中君に気持ちよくなってもらうためだから…」
「お…おう。さいですか」
祐希の言葉に動揺を隠せない。
祐希が自身のためを思って、膝まくらを提供してくれるとは。
(え!? まじで膝まくらをしてくれるの? ラノベ好きの俺からしたら夢のシチュエーションだけど。本当に良いのか? 無理してないよな)
「ど、どうぞ…」
ぽんぽん。
シミやデキモノ1つ無く、美しい太ももをタップし、祐希はスタンバイする。いつでも晴斗を迎えられる状態だ。
「で、では…お言葉に甘えて」
断ろうかと強く思った。だが、祐希の勇気を無下にはできない。その上、夢のシチュエーションを堪能したい気持ちが勝った。心の中で制御の壁が打ち破られた。
ぽふん。
柔らかい肉厚のある弾力が晴斗の頭を出迎える。胸のように柔らかい弾力は心地よい感触で、晴斗をより脱力させる。
「ど、どうかな? 感想としては…」
緊張した面持ちで祐希は上から晴斗を覗き込む。おずおずと顔色を窺うように。
未だ反応がないため不安そうだ。
「う、うん。最高だよ。太ももは柔らかいし。なんて言うか野末さんの優しさも伝わるよ」
「ふふっ。なにそれ。わかんない。でも満足してくれたなら嬉しい」
頬を赤く染めたまま、祐希は満面の笑みを浮かべる。顔の周りに桜の華が満開した。
そんな錯覚をしてしまうほど、祐希の笑顔は魅力的だった。
(か、可愛い。なんて幸せそうなんだ! それに笑顔が100点満点すぎる〜〜)
祐希の可愛さが起因して、自然と顔がニヤけてしまう。表情筋に力を込めないと、おそらくだらし無い顔を露見させてしまう。
「ご、ごめん。ちょっと眩しいから目を隠すね」
「うん。どうぞ」
祐希の許可を得て、照れ隠しするように、晴斗は掌で2つの目を覆う。
視界は真っ黒に変貌する。
そのため、祐希の表情は視認できない。意図的にそうした。
(流石にこの夢の状況で野末さんと目は合わせられないよ)
両目を隠した理由はだらし無い表情を隠すためだけではない。他にも理由は存在する。
そして、未だに心地よい太ももの感触を味わいながら、眠気に襲われ、ゆっくり瞼を閉じる。掌を両目に載せた状態をキープしたまま。
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