常識と言い張ればそれは常識ってことで

カートン怪

第1話 召喚されたってことで

 深い海中をさ迷っているような朦朧とした意識から、少しカビ臭いような重い湿気を含んだ空気が鼻腔をくすぐり、少しずつ覚醒していく。

 今は夜中だろうか?

 明日は仕事に行くんだっけ・・そもそも自分が社会人であったのかも思い出せない。

 ここはどこだ?

 意識はハッキリしてきたような気がしつつまどろみのような、それとも麻酔から覚めるような感じだろうか・・。麻酔を打たれて手術とかしたことあったっけ?

 突然人の気配に気が付く。やはり麻酔から覚めて医者か家族がそこにいるのだろうか。でもそれにしては、うまく説明できないが雰囲気が違う。薬品の匂いもしないし、病院特有の医療機器のたてる音もしない。部屋の中は少し湿気っていてシンとしている。

 「勇者様」

 はっと意識が覚醒するとともに仰向けに寝てる状態から上半身を起き上がらせた。すると目の前には金髪の美少女が心配そうにこちらを覗きこんでいた。


 なぜ金髪???

 僕は純粋日本人で、日本から出たこともない・・ないよな?

 目はライトブラウンでとても大きくキラキラしていて奥底は次元が違うようで吸い込まれそうだ。顔があり得ないくらいに小さく、金髪のロングヘアも一本の枝毛なく輝いている。肌が白くてシミ一つなく昔なにかで見た北欧人のようにも見える。

 薄暗い部屋の中で異次元の存在感を放っている。彼女の瞳の深層に意識が釘付けにされて思考がフリーズした。

 (日本語???あれ、今日本語喋った???)

 僕は日本語以外話せないと思うんだけど、言葉は通じるのだろうか。たとえ通じたとしても何を話せばいいのかまったくわからない。

 ふと金髪美少女の視線が不自然に僕の後ろの斜め上を向いていた。気になって後ろを振り返ったが何もなかった。何かを見ている感じじゃなくて、僕に視線を向けるのを避けているような気がする。僕の様子を見て金髪美少女はうつ向いてしまった。

 そして僕は肌寒くを感じて身震いすると、自分が真っ裸で何も身につけていないことに気がついた。

 

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