第82話 訪問 ハンター大学校
今回、橋本さんのスカウトで瑠衣さんが加入したが、もっと人材を採っていきたい。
そう考えた俺はひなたさん、瑠衣さん、小鳥遊さんが同じ大学に通っているということで、3人にヒアリングをした。
「えっ、大学でスカウト出来そうな人がいないかって?この辺で唯一のハンター専門の大学だからそれなりに人はいるけど…」
ひなたさんが答える。
「うーん、めぼしい人って正直高校生か大学入ってすぐにどこかのギルドに所属しちゃうのよね」
小鳥遊さんが付け加えてくれる。
「そうか。ただまだ埋もれているような人もいると思うから、1度試させて欲しいな。ダメかな?」
俺がお願いすると、3人はOKしてくれた。
3人がそれぞれ学年が異なるのも好都合な気がしており、それぞれが関わる教授を紹介してもらう。
ひなたさんに紹介してもらった
メールでアポをとると、是非会いたいということで残りの教授の日程も合わせてくれた。
○
金曜の夕方、ハンター大学校へ向かう。
街中にあるキャンパスなので電車でいき、駅から歩いて向かう。
数分歩くとキャンパスが見えてきた。
街中にあるとは思えないほど敷地は広い。
大学としてダンジョンを管理しているみたいだ。
キャンパスの入口でひなたさんが立っていた。
「時間通りだね、エラいエラい。
手続きはしておいたから、これを首からぶら下げておいて」
臨時の通行証を渡される。
「いやいや、今更子供扱いされても」
「私の方がお姉さんだからね」
そんなことを話しつつ、道案内をしてもらう。
「今から本館に向かうから、ついてきて」
俺たちは5分ほど歩き、本館に着いた。
中に入ると、ロビーのようなところに瑠衣さん、小鳥遊さんと、男性が3人立っていた。
俺は近づき挨拶をする。
「ライズギルドの九条です。本日はお時間頂きまして、ありがとうございます」
男性の中の1人が返事をした。
「初めまして、ハンター学の教授の湯神です。今ハンター業界で有名な九条くんに会えて嬉しいよ。よろしくね」
残りの男性も自己紹介をしてくれ、
「早速話をしていこうか。ライズギルドとしてうちの学生を採りたいって事だよね?」
「はい、そうです。
こちらにいる八木さん、宝条さん、小鳥遊さんもライズギルドに所属してもらっています。とても優秀な方たちなので、こちらの大学には他にも優秀な方がいるんじゃないかと思って連絡させてもらいました」
「ハハ、そう言ってもらえると大学としても嬉しいよ。
ただ、その3人は特に優秀な3人だからね。他を探してもそう簡単には見つからないと思うよ」
褒められた3人は少し照れているようだ。
「そうなんですね」
「ただ、いないわけでは無いので、今度行われる合同ギルド紹介にライズギルドもエントリーするといい。確か来月だったはずだ。
もしかしたら締切を過ぎているかもしれないが、私の紹介と言えば大丈夫だから」
「ありがとうございます!助かります」
そこからはライズギルドを作った経緯の話や、ダンジョン管理の方法論について教授たちと話をした。
「九条くんもこの大学に来ると楽しいと思うよ。ギルド運営にも役立つ知識が得られるはずだ」
湯神教授から誘われる。
大学か、考えていなかったな。
高校を卒業したら、そのままライズギルド1本でいくことしか頭に無かった。
選択肢として持つのは有りだな。
「ありがとうございます。考えてみます」
そのあとは雑談を少しして教授たちとの話し合いは終わりとなった。
部屋を出て、そのまま合同ギルド紹介にライズギルドを追加して欲しい旨を教務課に伝えに行くと、やはり締切を過ぎていると言われた。
湯神教授に許可を得たのですがというと、即座にOKとなった。やはり湯神教授の権限は強いんだな。
来月と言いつつ、あと2週間しかないので話すことやパネルなどを準備しないといけない。明日は作戦会議だな。
そのあとは、ひなたさん、瑠衣さん、小鳥遊さんと夕食を食べに駅前に向かう。
定食屋があったので、そこでご飯を食べる。
「蓮くん、うちの大学はどうだった?」
瑠衣さんが聞いてきた。
「想像以上に良い所でしたよ。
教授の皆さんもいい人ばかりでしたし」
「有名人の蓮くんに会えたから、少しはしゃいでいたわね」
「そうなんですか?そうは見えなかったな」
「まぁ教授としての面子もあるから、隠してはいたけどね」
今日は色々な収穫があった1日だったな。合同ギルド紹介ができることも良かったし、何より教授たちと話せたのが楽しかった。
連絡先は聞いたのでまたお話を聞かせてもらいたい。
ご飯を食べ終わり、駅に向かう。ひなたさん、小鳥遊さんとは乗る電車が逆方向なのでここでわかれる。
瑠衣さんと二人っきりとなった。
「男の人とこうやって一緒に帰ったりとか前までの私なら考えられなかったわ」
「そうなんですか?瑠衣さんモテるだろうから、誘いも多いんじゃないですか?」
「学費を稼がないといけなくて、そんな余裕も無かったわ。
いまはライズギルドに加入できてお給料もかなりいただける予定だから生活も安定すると思うわ。本当にありがとう」
「瑠衣さんにそれだけの価値があるってことですよ、そんな感謝とかしないでいいです」
「それでもこの機会を作ってくれたのは蓮くんよ、ありがとう」
そんなやり取りをしていると、瑠衣さんから連絡先を交換したいと言われたので交換する。
「また連絡するわね。今日はお疲れ様」
「はい、待ってます。お疲れ様でした」
瑠衣さんは電車から降り、振り向いて手を振ってくる。俺は手を振り返す。
俺は瑠衣さんがいなくなり、少し寂しさを覚えつつ、帰宅した。
○
ハンター大学での合同ギルド紹介の日がやってきた。
俺はパネルなどの説明資料を車に乗せ、ギルドホームを出発する。
ひなたさんが運転してくれている。
瑠衣さん、小鳥遊さんは現地集合の予定だ。
30分ほど車を走らせると、大学に着いた。
駐車場に車を停め、荷物を持って、合同ギルド紹介が行われる大ホールへ移動する。
大ホールで瑠衣さんと小鳥遊さんと合流すると周りから注目を集めていることに気付いた。
「うわっ、八木さんに宝条さん、小鳥遊さんまでいるぞ!?うちの大学のミス候補の美女勢揃いだぜ」
3人はこれを聞いて顔を伏せている。
成程、これがあったから大学を紹介するのを嫌がったのか。
うーん、3人のことが目当てで入られても困ってしまうからなぁ。
そうしていると、合同ギルド紹介の時間となり、各ギルドの紹介が始まる。
ほとんど名前を知らないギルドばかりだが、1つ知っているギルドがあった。
『
県で1番の規模を誇るギルドで、ハンター協会との繋がりも深いギルドみたいだ。
最終的にハンター協会の代わりになろうとすると、この月夜見ギルドは避けては通れず、倒すか、仲間にするかしないといけない。
俺の方から声を掛けに行ってみる。
「こんにちは、月夜見ギルドの方ですか?」
「そうだが」
「初めまして、ライズギルドの九条と言います。挨拶をと思いまして」
相手の表情が変わる。
「あー、君があの九条か。
私は月夜見ギルドの副ギルドマスターの
「こちらこそ、よろしくお願いします」
俺は少し話をして、すぐに離れた。
俺が九条とわかった時の敵意が凄かったな。やはり協会とは繋がりが強くて、
月夜見ギルドと仲間になるのは難しそうだ。
そのあと、各ギルドの紹介を行っていき、ライズギルドの番となる。
マイクを持ち、ギルドの概要を説明していく。
県下でも有数の戦力を誇り、質が高いハンターが多いことをアピールする。
事業としては、ダンジョンをトータルで7個保有しており、一般開放し運営していることや、スレイヤーズギルドを傘下に持つことなどを紹介していく。
また、雷光放送と清水商店と提携しており、それなりの事業基盤を有していることを説明する。
説明の途中から学生の聞く態度も真剣になってきたのを感じた。
最後に契約面の説明をすることで、トップクラスの給料をもらえることも分かってもらえた。
何人かはあとから受けたいと話しかけてくれたので、今回の合同ギルド紹介に出た成果はあったと思う。
ただ、まだ知名度が低いのは事実なので、もっと活躍することでライズギルドの知名度を向上させていきたい。
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