第59話 ハンター協会の腐敗
B級昇級の模擬戦の一件からハンター協会の副支部長のポストは空席となっていた。
依頼を受けにハンター協会を訪れると、男性に声を掛けられる。
「九条くんだよね?」
「そうですけど、あなたは?」
「はじめまして、
「こちらこそ、よろしくお願いします」
その後早乙女さんは軽く世間話をして離れていった。
少しすると八雲さんがやってきて、少し話しをする。
早乙女さんは浜島とおなじ八雲さんの敵対派閥の人のようだ。
注意しておかないといけないな。
今のところ浜島みたいには敵意を見せてきていないが。
俺はギルドホームに戻り、メンバーにも副支部長の件を伝える。
○
数日後、早速動きがあった。
ライズギルドに協会から査察が入ることになった。
協会の職員がギルドホームに訪れ、どのような活動をしているか、帳簿なども確認していった。
特に指摘事項は無かったが、対応するだけでも労力を要した。
メンバーたちからも少し不満が出た。
査察自体は協会の業務の1つだが、早乙女さんが来てすぐと言うのが気になる。
一応八雲さんに確認しておこう。
八雲さんに確認すると、早乙女さんの指示で実行されたようだ。
早乙女さんの言い分としては、飛ぶ鳥を落とす勢いで伸びているギルドであり、何かしら不正があるかもと思うのは自然では?ということらしい。
これまで1度も査察が入っていないこともあり、指示からすぐに実行されたようだ。
副支部長権限で実行されるとなかなか情報が上がってこないらしく、協会の支持系統はまだまだ見えないところが多いようだ。
八雲さんも苦労しているな。
とりあえず、2回目は無いよう釘を刺しておいたと言っていた。
今後もこう言った微妙な嫌がらせは増えていくかもな。
反抗的な態度をとったりしたら、向こうの思うつぼなので、メンバーにも対応については共有しておこう。
今度はライズギルドの専属受付を変更された。
これまでは小早川さんが担当してくれており、非常に良好な関係を作れていた。
それが早乙女さんの指示で別の若い女性に変更となった。
表向きは小早川さんは昇進することで受付から外れるという事だ。
小早川さん本人も納得していないようだった。
新しい担当の女性がギルドメンバーの依頼受理であったりの事務処理を少し後回しにしたりと地味な嫌がらせをしてきているらしい。
俺に対しては非常に好意的な感じで来ていたが、頻繁にデートの誘いをしてきて、かなり困っている。
ライズギルドへの嫌がらせが始まってから、他のハンターもそれに気づき、この支部の評判は一気に落ちていった。
そして、極めつけは八雲さんの降格人事だった。
B級昇級の模擬戦の1件で、浜島の介入、これまでの数々の不正に対し、職場のトップとしての責任を追求され、別の支部へ異動となることが決まったらしい。
小早川さんが教えてくれた。
俺は八雲さんと話しをするため、連絡を取る。
ハンター協会の応接室で話しをする。小早川さんにも来てもらっている
「いつ異動なんですか?」
「急なんだが、来週だよ。こちらの派閥の上から切り捨てられたみたいだ。もう協会は厳しいかもしれない…」
八雲さんは何とも言えない表情で言う。
俺は意を決して口を開いた。
「八雲さん、小早川さん、急ですがライズギルドへ来ませんか?
一緒にハンター協会に変わる組織を作ってくれませんか?」
八雲さん、小早川さんは驚いた表情をしている。
「今まで小早川さんや八雲さんとしか接してなくて、ハンター協会の腐敗に気づけていなかったです。
今のハンター協会は何のための組織なのかわからない。
むしろ私利私欲のために地域の人を蔑ろにしているとも感じます。」
俺は思っていることを素直に伝える。
「ならこの県だけでも協会に代わる組織を作れないかと思っています。多分すぐに作っても潰されてしまうので、少し時間は必要ですが…
一緒にやってくれませんか?」
俺がそういうと、
「こんな老いぼれで大丈夫かい?」
八雲さんは同意してくれた。
小早川さんは
「やっと誘ってくれましたね」
と言い、OKしてくれた。
「ありがとうございます。
まずはこの県でライズギルドを圧倒的な地位に持っていきます。
そのあと、4年に1度あるギルド対抗戦で優勝して、ライズギルドを日本一のギルドにします。そして、他の地域に傘下ギルドを増やしていけば可能性は高まると思っています。
かなり難しい道ですが、このまま協会のやりたいようにされて良い未来は見えてこないと思います」
「ハンター協会は政治家とも繋がっている。そこも切り崩していかなければならない」
八雲さんが言う。
「望むところです。それにこれは俺の目的にも繋がります、やりますよ」
ただすぐに動いて警戒されるのは得策ではないということで、まずは小早川さんからライズギルドに加入し、八雲さんは再来月くらいの落ち着いた時に加入するという事で話がまとまった。
今後の進むべき道が決まった。
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