ダンジョンで成り上がろうとするのはダメですか？-男子高校生は庭のダンジョンを使い倒す-

第38話 動画配信サービス

　ヒデキがギルドに加入した次の日の午前、俺はいつも通りに授業を受け、昼食を食べている。

　目の前には天霧くんが座っており、先輩聞いてくださいよーと色々な話をしてくれている。

　俺も楽しく話を聞いていたところ、

「レン、私も一緒に良いかな」

　と声を掛けられた。

　俺が声の方を向くと、昨日会った人物がそこにいた。

「ヒデキ?!なんでここに居るんだ?」

「転校してきたからさ。ライズギルドに加入したからね」

　軽く言われ、俺は驚く。

「え?転校?東京に住んでるんじゃないの?」

「駅前のマンションに引越したさ」

　ヒデキは席につきながら言う。

「ええ?」

　俺としては、ライズギルドへは高校を卒業した後から本格的に加入くらいだと思っていた。

「そんなわけないよ。やりたいことには全力を注ぐ。これは雷光家のモットーさ」

　そう言いながら彼は食事を始める。

　昼食を終え、天霧くんとヒデキとわかれ、教室へ戻る。

　本当にヒデキには驚かされてばかりだ。

　ただ、本格的にライズギルドの活動に参加してくれるのはありがたい。

　ギルドとしてのランクも上げていきたいと思っていたところだ。

　放課後帰ろうとすると、廊下で亜希さんとヒデキが待っていた。

　俺たちは他愛ない話をしながら、ギルドホームへ向かう。

　この日は天霧くん、高槻さん、ヒデキと順番に模擬戦をおこなう。

　俺と天霧くんの模擬戦では天霧くんに先手を譲り、俺が反撃し天霧くんが対応できるかをみていた。

　高槻さんとヒデキも天霧くんとやる時は指導する感じで対戦してくれ、天霧くんの実力は向上していった。

　高槻さんとヒデキの対戦は白熱したものになる。

　ヒデキの雷魔法と高槻さんの氷魔法の勝負も見応えがあり、槍と剣の攻防も互角だった。

　いつまで経っても勝負がつきそうに無かったため、引き分けとなった。

　次は俺と高槻さんの模擬戦となり、俺は剣術で攻める。

　戦い慣れた相手だからこそ、自分の実力向上を実感する。

　俺は剣で攻撃しつつ、魔法を適切に繰り出す。

　高槻さんの隙を見つけ、そこを攻める。

　この勝負は俺の勝ちだ。

　最後にヒデキとの模擬戦をおこなう。

　槍と剣の勝負はやはり互角となる。

　ヒデキを剣術で圧倒できるようになりたい。

　もっと鍛錬がいるな。

　模擬戦としては魔法を織り交ぜていくがここでも差がつかず引き分けとなる。

　模擬戦ではファイヤーストームを使う気にはなれず、決定打になる攻撃ができなかった。

　もう少し攻撃のパターンを増やさないと。

　課題がみえた模擬戦だった。

　模擬戦のあとはヒデキに連れられて駅前の繁華街に出かける。

　紹介したい人がいると言われている。

　繁華街にあるビルにはいる。

　よくみたら雷光グループのビルだった。

　5階に上る。入口に雷光放送と書いてある会社へ入る。

　ここは昨日業務提携した動画配信サービスを展開している会社だ。

　受付を通り、会議室に案内される。

　中に男性が1人座っており、俺の顔を見るとにこりと笑い、

「初めまして、九条くん。わたしは雷光放送でプロデューサーをしている三橋です。どうぞよろしく!」

「よろしくお願いします」

　呼ばれた理由はライズギルドの探索動画を作りたいという話だった。

　全国大会の1位と3位がいるパーティーで、新進気鋭のギルドを運営しているという話題性もあり、今探索動画を出していくのに適していると判断したとの事だった。

　俺も動画配信の可能性は大きいと考えており、やってみたいと話をする。

　出来ればそれなりの難易度のあるダンジョンの方がやはり視聴率は良いらしい。

　ただ探索失敗は配信者として致命的となるため、探索するダンジョンの難易度選定が非常に難しい。

　ダンジョン探索を撮影する日を決める。

　今週末に実施となった。

　撮影のために数人スタッフが参加するということだった。

　俺は宣伝もできるため、ライズダンジョンを探索すると三橋さんに伝えると、

「自分たちで運営しているダンジョン!?

　良いねー、視聴者は食いつくよー!」

　三橋さんの了承をもらったため、ここで帰宅した。

　ギルドメンバーに今日の話を伝え、週末に動画配信の撮影が入ると伝える。

　皆興味ある顔をしている。

　週末が楽しみになってくるな。

　○

　週末になり、朝からギルドメンバーが集まっている。

　雷光放送のスタッフもやってきた。

　全員でダンジョンにはいる。

　低層階は天霧くんを中心に探索していく。

　特に問題なく倒せている。

　地下4階辺りからは天霧くんも厳しいところが出てきたため、ゆうりさんが前に出る。

　目標は地下9階のトレントキングだ。

　途中の階のモンスターは少し相手をして全部は倒さずに進む。

　順調に進んでいく。

　地下9階につく。

　トレントキングとの対戦だ。

　パーティーで連携してトレントキングと戦う。

　雷、氷、火魔法がトレントキングを襲う。

　ゆうりさんは覚えたばかりだというシールド系魔法でサポートしてくれる。

　ヒデキ、天霧くんの加入と個人の実力向上のため、トータルの攻撃力がだいぶ上がっている。

　終始、優勢に進めることが出来た。

　ダメージが蓄積し、動きが鈍くなったトレントキングに対し、最後は俺と高槻さんの連撃が決まり、割とすんなり倒すことができた。

　よし、これでライズダンジョンでの迫力ある動画の素材を集めれた。

　今後はこれをうまくストーリー展開してくる。

　視聴率が良ければ定期的に放送も有り得ると聞いている。

　認知度アップにはもってこいなので是非とも続けられるとありがたい。

　ここからは三橋さんが腕を見せてくれるはずだ。楽しみだな。