第50話 俺が知りえない因縁

そうして俺は目を覚ます。


「おい一お前大丈夫か?」


「ああ。隆介俺はどれくらい寝てた?」


「ほんの少しだよ。」


どうやらあいつと話していた時間は俺が感じていたよりも短かったようだ。

いや、時間の流れが違うのかもしれない。


「そうか。すまないな。いきなり寝ちまって。」


「それは全然良いんだがお前本当に大丈夫かよ。」


「大丈夫だよ。心配してくれてありがとな。」


「じゃあ、これからどうするかを考えるか。」


「だな。まずは現状の把握をしたいんだが柚木、今の現状をお前が話せる範囲で教えてもらえるか?」


「うん。私がストーカーっぽい人に付きまとわれてることに気づいたのは一か月くらい前なんだよね。」


「なんで付きまとわれてるのか思い当たるところはある?」


俺がそういうと柚木は少し考えこむような素振りを見せてあっと声を上げる


「何か思い当たる所があるのか?」


「これが原因かはわからないんだけどね、少し前にそれもちょうどストーカーが私に付きまとうようなったくらいに告白されたの。」


「誰に?」


「同じ大学なんだけど学部も違うからその時初めて名前を知ったんだけどね、谷山太陽っていう男の人に告白されたの。」


隆介は少しむすっとした表情を浮かべている。

それもそうだろう。付き合っているときに自分の彼女が他の男にちょっかいを出していたのだから、隆介が怒りを覚えるのも理解できる。

俺もこの話は初めて聞いたし、そんな素振りもなかったため驚いた。


「それで柚木は断ったんだよな?」


「もちろん!私はその、隆介のことが好きだし、、」


そういってもじもじし始める。

隆介のほうに視線を向けると隆介も恥ずかしそうに眼をそらしていた。

こんな時に惚気を聞かされるとは思っていなかった。

本当に時と場合を考えてほしい。

気を取り直して俺は話の続きを始める。


「その時その谷山太陽はどんな様子だった?」


「えっとあんまりわかんないけど爽やかな笑顔でそっかっていって走り去っていったよ。」


「じゃあ、その谷山太陽を警戒する感じでとりあえずはいいんじゃないか?」


「だな。俺は柚木となるべく一緒にいるようにする。」


「そうしてくれ。俺は可能な限り谷山太陽のことを調べてみることにするよ。」


「ありがとう。一。」


「気にしないでくれよ柚木。お前もなんかあったら遠慮なく俺か隆介を頼ってくれよ。」


「ああ!そうだぜ柚木。全然頼ってくれよ!」


腕に力こぶを作りながらそういう隆介に俺は少し苦笑し、また隆介らしいとも思った。


「あと、柚木は絶対に家以外で一人っきりにならないようにしてくれ。」


「うん。わかった。」


今日はとりあえず解散することになった。

だが、何故だろう。

”谷山太陽”の名前を聞いた瞬間頭痛がより一層と激しくなったような気がする。

何より、俺はその名前を聞いたことがあるような気がする。


もしかしたら、違う次元での”俺”の知り合いだったりしたのかな?

だとしたら、そいつが柚木のストーカーになったなんて考えたくもないな。

そんなことを呑気に考えながら俺は帰路を辿るのだった。

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