第20話 二人の本音と新しい始まり

「久しぶりだね。一君」


 玄関を開けた先には月風が立っていた。




「そうだな。じゃあ、俺は行くから。」


 そういって歩いだそうとした瞬間




「まってよ!!なんで一人で行こうとするの?」




 月風はそういって俺の手をつかんだ。

 掴んだとはいっても力はあまり込められていなく、

掴んでいるというよりは触っているに近い



「なんでって、月風は俺のことが嫌いだろうからさ、少しでも一緒にいたら君の気分を害してしまうかもしれないだろ?」




「そんなことない!!私は一君のことを嫌ってなんかいないよ!!それに、その手に持ってる封筒は何なの?」


 そういって月風は俺の封筒を見つめる。




「これは退学届けだよ」




「なんで退学するの」




 月風は泣きそうな声でそう俺に問い掛ける。




「俺は君にこれ以上嫌われたくないんだ。」




「私は嫌ってなんかいな、」




「嘘だ!!あの俺の姿を見て僕から離れていかなかったのは隆介と柚木だけなんだ!!」




「他のみんなはすぐに俺から離れていった。だから、俺はこれ以上君に嫌われないために君の前から消えるんだ!!」




 俺は叫んでいた。

 ここまで人前で叫んだのは久しぶりかもしれない。



「じゃあ、私が三人目になる!!この際だからはっきり言うね。私が一人になったときに話しかけてくれたのは一君しかいなかった。一緒に勉強会をしたのも、その時私が男の人に絡まれているときに助けてくれたのも、私に友達を作るきっかけをくれたのも、この前の少し怖い一君もみんな、全部私を助けてくれた…………一君なの。そんな人を嫌いになるわけない!!」




 月風は叫んでいて、だからこそそれが本気だということが伝ってくる。

 ここまで素直に感情をぶつけられたのは初めてかもしれない。



「でも、おれは、」


 


「そんなに信用できないならこれからもずっと一緒にいてよ!!私が今の言葉が本当だって証明するから!!一君があの時私にそうしたみたいに。」




 彼女は笑顔でそういった。


 やめてほしいものだ。こんなに笑顔で言われたら信用したくなってしまう。

 俺が月風に声をかけたとき、月風もこんな風に感じていたのかもしれない。



「わかった。一緒にいる。だから”君のほう”から離れないでくれ。」




「プロポーズ?」


 彼女は笑いながらそう言った。




「ちっ、違う!そんな意味で言ったんじゃない。」




「ふふ、わかってるよ。じゃあこれからよろしくね?一君!」




「ああ。よろしく。月風」


 俺がそういうと月風は不満そうな顔で言う。




「これからはずっと一緒にいるって言ったのにいつまでも苗字で呼ぶの?」




 彼女はそんなことを言ってくる。

 このままずっと一緒にいられったらな…………………………………



「わかったよ。涼葉。これでいいか?」




「うん!改めてよろしくね。一君。」




「よろしく!涼葉!」




 そういって俺達は握手を交わした。

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