第17話 陰キャの実力

 次の日から月風はどんどん柚木との話を俺にするようになっていた。


 俺はこのことがとてもうれしかった。


 話を聞くと、今度二人で遊びに行くそうだ。


 本当に仲良くなったようで安心だ。


 


ーー放課後ーー


「月風がいない?」


 俺はいつも通り校門付近で彼女を待っていたのだが今日はやけに来るのが遅い。


「何もないとは思うが探してみるか。」


 そうして俺はもう一度校内に向かって足を進めようとした瞬間だった。




「やめてくださいっっ!」


 こんな叫び声が聞こえてきたのは…………


 いつもはご都合主義をバカにしているがこの時、今だけはご都合主義の神様をあがめることにする。




「これは、月風の声だ。」


 俺はそう判断すると声がした方向に向けて走り出す。


何も無いでくれよ!

変な汗を全身に感じながら走った。


 たどり着いた先は体育館裏だった。




 その中に月風の姿を発見する。


 月風は複数人の男子生徒に囲まれていた。




「なあ、パパ活してるんなら、俺たちともしてくれよ。」


 そんな下種な発言が聞こえたとき、俺の中で何かが切れた。


 ネクタイの色からあれは2年生のようだ。


 許せない。


「…………何をしているんですか?彼女嫌がってますけど。」


 俺がそう問いかけると下種どもは答える。




「俺たちは今この子と話してんの。陰キャは引っ込んどけよ!てか、お前もしかして陰野って名前だったりしない?」


不愉快そうに返答したかと思うといきなり俺のい名前を聞いてくる。


「ええ。俺の名前は陰野ですよ。」


 この受け答えをしているだけでも目の前の屑どもを殴りたくてうずうずしてくる。

 なんでこいつらは俺の名前を知ってるんだ?気持ち悪い。



「やっぱり?お前があの太陽が言ってたやつか。」


 やはりあいつが元凶か…………

俺は奴が救いようのないクズだと再認識した。




「お前ら、こいつ囲め!!どうせならここでボコっちまおうぜ!!」


 ざっと6人くらいが俺の周りを囲む。




「悪く思うなぁがっ…………」


 屑がしゃべり終わる前に俺はそいつの腹部を殴っていた…………


 そんなゆっくり喋っていたら殴ってくださいと言ってるようなもんだろ?

 それにもう我慢の限界だった。

 月風にこんなことをしておいてただで済ませるわけにはいかない。


「我慢の限界だ!!月風をてめぇらみたいな屑がさわりやがって。」


 俺は今までにないほどにイライラしていた。




「おかしいぞ!!太陽はただ虐められてるだけの陰キャって言ってたのに…………」




「なんでお前はそんなに強いんだ?前は太陽たちにいじめられてたんだろ?」




「黙れ!!来るならとっとと来い!!」


 俺がそういうと屑どもが一斉に殴りかかってくる。

 だが、そいつらの攻撃を俺はいなし躱し反撃し




 数分後


 そこには屑の山ができていた…………




「月風大丈夫か?」


 そういって座り込んでいる月風に手を差し伸べる。




「ひっ…………」




 月風は俺の手を取らずにそのまま走り去っていってしまった。




「あっ…………」




 俺はショックを受けた。




「だよな…………今の俺は怖いよな…………」



 確かにこんな暴力的な人間は一緒にいて怖く感じるだろう。

 俺はまだ意識のある屑に話しかける。




「なんでこんなことをした?」




「ひっ、えと太陽が月風涼葉はパパ活してるからワンちゃんあるかもって言ってみんなのりきになって…………それで…………」


 やっぱり今回の件も裏で糸を引いていたのはあいつか。




「で、その太陽は今どこにいる?最近学校に来ていないみたいだが…………」




「本当にしりません!!ただ、最近あいつはどこかの半ぐれとつるんでいるらしいです。それくらいしか…………」




「そうか」


 そういって俺は家に向かった。

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