第6話 神秘的な少女

 色々と謎が多い。

 俺の生前の名前を知っていた少女。

 それに現代人の装備に魔素が微量だが、合った。

 居場所の特定。


「警察の特殊部隊があそこまで来るのか?」


 考えれば考える程、全く分からない。

 あまりにも情報が少な過ぎる。

 情報が何か──抜けているのか? 脳を回し記憶を思い出そうとする。


「ニュースです……警察関係者が早急に対応する事を発表」


「……そうだニュース! あれはいつ放送された奴だ?」


 くそ、あの時感情に任せてパソコンを、壊すんじゃなかった。


「やってしまった事にはどうしようもない」


 警察が動くにしては、あまりにも早過ぎる。

 それに一番の手かがりは、魔素とクリスの拘束だ。

 もしクリスが油断して、捕まったとしても、SWATの隊員が無傷とは思えん。

 あの戦闘狂のクリスを簡単に倒した奴がいると、推測するのが一番のセオリーか。


「ねぇ君、ここで何をしているのかな?」

「!? あ? 誰だお前?」


 背後から急に声が聞こえ、後ろを振り向くと、そこには一人の少女。

 肩にまで伸びている綺麗な栗色の髪は、真っ直ぐ綺麗に切り揃えられていた。

 瞳も髪同様の色であり、可愛いというより一言、綺麗な容姿をしている。

 ダボダボな、パーカの上からでも目立つ双丘。

 それに一番に目に余るのは……。


「お、いきなり喧嘩越しだね!」

「お前──ただの人間じゃないだろ」


 俺の言葉を聞いた瞬間……少女は、一瞬だが硬直した。


「君、いきなり何を言ってるのかな? 厨二病かな?」

「誰が厨二病じゃ、だったらどう説明をするんだよそれは」


 俺は少女の方に、振り向き指を指す。

 すると、少女は困惑の表情から、ニヤリと不敵に笑みを浮かべている。

 無邪気な子供の様な笑顔で言う。


「もしかしてボクの胸?」

「違う。お前から大量の魔素が放出している」

「ちぇ、気付いてたか」


 いきなり変な事を言うから──ビックリした。

 ここで狼狽えれば、俺の知りたい事を、はぐらかされると思った。

 だが、少女はとぼける事もなく、素直に答えた。


「もう一度聞く、お前は一体何者だ?」

「うーん。君はまだ知らなくていいかな?」

「そうか……ならば武力行使だな」

「あ、女の子に手を出す感じ? 駄目だよ、男の子が手を出しちゃ!」

「………」


 この女、一体何者で何を考えている? 魔素が体から放出してる。

 そんなの異世界でもいなかった。

 この女は十分に危険だ。

 今の内に消す方が得策かも知れない。


「駄目だよ、そんな物騒な事を考えちゃ」


 少女は先ほどまでの猫撫で声ではなく、冷酷な声色で言ってくる。

 そして俺にキスが出来そうな距離にまで、顔を近付けてくる。

 直後、少女は俺を見定めするかの様に、じろじろと観察してくる。

 その行動一つ、一つに嫌悪感を抱く。


「……なんだ君もボクと、一切変わらないじゃん」

「俺をお前何かと一緒にすんな」


 少女の言葉に苛立ちを覚え、強烈な殺意を少女に向けた。

 少女は俺の殺意に動じず、不敵な笑みを浮かべている。


「それはごめんね。君とボクは魔素の量は変わらない」

「……お前が俺に正体を教えなくてもいい。だけど──これだけは答えろ」

「聞くだけ聞いて上げるよ」

「お前は俺の敵か?」

「あー、それは全く違うね。ボクは基本中立、場合によっては君の味方さ」

「………」

「何その顔? 絶対信じてないでしょ」

「胡散くせぇ」

「今聞こえた──はっきり聞こえた!」

「聞こえる様に言ったんだよ」


 少女はムキッて言い怒っていた。

 この怒ってる表情も、さっき見せた笑顔も全て、取り繕っている。


「さてと、少し喋り過ぎたかな。ボクはそろそろ行こうかな」

「そうか」

「あ、そうだそうだ、二人の人物には気を付けてね。ボクと同年代くらいだからな」


 二人の人物? こいつとあの時の少女じゃないのか?


「その二人の中にボクは入ってないよ」


 こいつさっきもそうだが、まるで俺の心でも読んでるようだ。

 もしそうだとするならば、厄介な奴。


「まぁいいや。あ、最後に君の名前を教えて」

「お前の名も教えろ。俺はクロム」

「ボクはジャンヌ」

「お前、日本人だろ」

「そういう君もね。それじゃあバイバイ。君に!」


 言い終わると少女は──屋上から飛んだ。

 俺は急いで下を見る。

 だが、そこには人は一切いない。


「あの女、本当何なんだよ!」


 仰向けに俺は倒れる。

 また色々と謎が増えた。

 それに神秘な神と言う単語。


「お前の方が神秘的な女だぞ。ジャンヌ」



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