八章 国王からの招集

 この日ソフィアとポルトの姿は王宮にあった。昨日ディッドから伝えられた言葉に従いレオに会いに来たのだ。


「こちらになります」


「謁見の間じゃないの?」


ディッドの案内に従い宮殿の中を歩いていたが明らかに謁見の間とは違う方角へと歩いていてポルトが尋ねる。


「誰かに聞かれてはまずい話ですのでレオ様の寝室の隣にある執務室でお話をするんです」


「成る程ね」


彼の説明にソフィアは納得して頷く。


「失礼いたします。ライゼン通りの錬金術師ソフィアさんとポルトさんをお連れ致しました」


「入れ」


執務室の扉の前に立つとノックの音を響かせディッドが言う。それに数秒後レオの声が聞こえて来た。


「……」


部屋の中へと入るとそこにはレイヴィンやマルセン。イクトにハンスそれにリゼットの姿があり。他にも特別部隊の隊員達や冒険者達。王子と王女もこの場に集結していた。


「ここにいる者達にはすでに説明を終えたところだ。ソフィー。ポルト君。今から話すことは誰にも話さないと誓ってくれるか」


「勿論よ」


「おいらも言ったりしないよ」


真剣な顔の国王の言葉に二人はこれからどんな話を聞かされるのだろうといいた様子で頷く。


「うん。それではこれより二人にも作戦の内容を話して聞かせる」


「作戦?」


大きく頷きレオが言った言葉にポルトが首をかしげる。


「この国にいまだに黒の集団が潜んでおり尚且つ何かを企んでいるというソフィーの情報を基に私はレイヴィン達を使って色々と捜査を行っていたのだ」


「……」


国王が話し始めた言葉を二人は姿勢を正して聞く。


「しかし黒の集団の尻尾を掴むことは出来なかった。そこで前回夏祭りの日に奴等が何かを企てていたことを思い出し。その夏祭りの日に何か動きがあるのではないかと思い作戦を考えたのだ」


「それで、その作戦とは?」


レオの言葉にソフィアは早く聞かせてくれといいたげに尋ねる。


「夏祭りの日に王宮を誰にでも解放して自由に使ってもらう。そうすれば黒の集団も一般人に混ざり王宮に集結する事だろう。そこを狙って奴等を一網打尽にするのだ」


「成る程。市民達に混ざって黒の集団も闇取引を行うために王宮にやってくるかもしれない。って事ね」


国王の話に神妙な面持ちで彼女は呟く。


「この作戦にはここにいる者達全員の力が必要だ。私やジョンにシュテナはお客達を出迎えながら黒の集団らしき人物を探す。特別部隊と冒険者は常に王宮の中を警戒しパトロールをしてもらい、イクトとハンスには王宮の一角を貸し与えお店を出してもらう。そこで怪しい動きをしている者がいないか見張ってもらうのだ。そしてソフィーとポルトには錬金術のアイテムを沢山作って貰いたいのだ。黒の集団を見つけ出すための探知アイテムから捕まえるための捕縛系アイテム。そしてもし戦いになった場合でも対峙できるように攻撃系のアイテムもお願いしたい」


「分かったわ」


「おいら達はそれだけ?」


レオの言葉に皆頷く中ポルトだけ不満があるのか尋ねるように言う。


「うむ。それだけだ」


「おいら達も作戦に協力するんだからもっとスリリングな体験をしたいよ」


「君達を危険な目に合わせるわけにはいかないからな。だから聞き分けてくれないか」


小さく頷く国王へと唇を尖らせ彼がぼやく。それにレオが困った顔をして穏やかな口調でお願いするように話した。


「むぅ~。分かったよ。でもそのかわり夏祭りの日にこの王宮の中を見て回るのはいいだろう。王宮の中なんてめったに見れないんだからさ」


「まぁ、遊びに来るというのならそれはかまわない。だが黒の集団の件は一切手を出さないと約束してくれるのであればの話だがな」


「しょうがないな。分かった。それでいいよ」


不服気な顔で渋々引き下がったかと思ったポルトだが何か企んでいる様子でそれを見抜いている国王が話すと彼が仕方ないといった感じに折れる。


「話は以上だ。皆ここで聞いたことは決して他言しないようにな」


『はい』


話を締めくくるレオの言葉に皆が一斉に返事をした。こうしてソフィアとポルトは錬金術でアイテムを大量に作る事となりお店を閉めてさっそく依頼の品を作り始める。


「ソフィーいるか?」


「マルセン。如何したの?」


扉をノックする音が聞こえて入って来たのはマルセンでポルトが不思議そうに首をかしげた。


「これ。使えるかと思ってな」


「これは不死鳥の羽。これ如何したの」


袋一杯に入っている不死鳥の羽を見てソフィアは尋ねる。


「この前仕事で討伐依頼が入った時に集めてきていたのさ。これを使って防御系のアイテム作れるんだろう」


「えぇ。作れるわよ。でも本当にこんなに沢山貰っていいの?」


マルセンの言葉に彼女はさらに問いかけた。


「俺が持っていたって宝の持ち腐れだからな。それなら錬金術のアイテムとして生まれ変わったほうのがこいつの為でもある。それに、素材集めに出かけている時間なんてないだろう」


「有り難う。大切に使わせてもらうわね」


「あぁ。それじゃあ俺はこれで」


ソフィアが受け取ったことを確認すると彼が帰って行く。それと入れ違いにユリアとローリエがやって来た。


「ソフィーさん。こんにちは」


「お邪魔しますね」


「二人ともどうしたの?」


二人が揃って工房へとやって来た事にポルトが尋ねる。


「暫く工房を閉めて依頼の品を作るってハンスさんから聞いたんです」


「それで。わたし達も何かお手伝いできればと思いお店の品を持って来たのです」


「丁度明日ポルトに頼んで買い物に行こうと思っていたところだったのよ」


彼女達の話にソフィアは嬉しそうに微笑む。


「それではこちら自由に使ってくださいね」


「足りなくなったら持ってきますのでいつでも声をかけて下さいね」


ユリアが言うとローリエも笑顔で話す。二人の気遣いに有難いといった顔で彼女はお辞儀した。


こうして周りの皆に協力してもらい素材を集めながら王国からの依頼の品を作り上げたのである。

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