クラスで出来損ないの僕は、異世界転生しても地道に勉強するしかないようです。

ゆーしん

第1話

「それではテスト返却を始めます」

世界史の担当教師の声がして、僕は震え上がった。今回のテストは、正直言ってかなり難しかった。平常時でも僕は平均点以下しか取れないのだから、今回は赤点必至だ。でもこの学校は、成績が低い者に対して追試が課され、しかもその追試が満点を取れるまで続くときた。

 あぁ・・・嫌だな・・・・嫌だな・・・・嫌だな・・・・



「それでは、教科書の48ページの、『大陸横断鉄道は・・・』のところを三上君、読んでください」

「はいっ?」

不意打ちを食らったせいか、素っ頓狂な声が口から漏れた。

どうやらいろいろ考えているうちに、テスト返却から授業へ移ったらしい。幸いにも、机の上には教科書とノートのセットがある。クラスメートの視線が地道に痛いし、とりあえず読み上げることにしよう。

「大陸横断鉄道は、西部開拓の需要から生じた人やモノの移動を・・」


指定された箇所をどうにか読み終え、僕は席についた。

あれ?そういえばテストは?

・・・という僕の疑問は、すぐに解決した。ノートの下敷きになる形で、答案用紙がおいてある。覗く記名欄の隣には16点。ひっくり返したら91点だな・・・なんてくだらないことを考えるくらいしか、現実から逃げる方法がなかった。

 


「優馬、今からカラオケ行こうぜ。推しの新曲出たからさ~久しぶりに歌いたい気分なんだよね~」

放課後、親友に声をかけられたが、あいにく僕には追試があるのだ。

「あぁ、ちょっとワリィ、赤点に引っかかって追試があるから、俺パスで。また今度誘ってくれよな」

「そうか、大変だな。頑張れよ」

僕は彼の気を損ねないよう、出来る限りの笑顔で断った。でも心の底では笑えなかった。僕はこれからも、こうやって生きていくのだろう、今から頑張っても、狙えるのはせいぜいFラン私大。そこからどこかに就職して、なんとなく社会の負け組として生きていくのだろう。

「やってみればなんとかなる」とかいう歌詞で綺麗事を吹聴しているアイドルも、オーディションを重ね、他人を踏み潰した上に立っているにすぎないのだ。踏み潰させた彼らは、「やってもできなかった」のだ。成功した彼らのせいで。

 どうやら、人生イージーゲームとは

別の世界の言葉であるらしい。そう、たとえば異世界とかね。





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