三章

第58話

そうして時は流れ、三年の月日が経った。


セレニティは十五歳になり、十八歳になったスティーブンやブレンダ、ナイジェルやジェシーは学園に通っている。

二十歳になったハーモニーとトリシャは公務で色んな国を飛び回っているそうだ。


三年経ち、セレニティが今までやりたかった夢をほとんど叶えることができて大満足の日々を送っている。


顔の傷は皮膚の上に薄らと残っている。

しかしブレンダやトリシャの協力のおかげか、だいぶ薄くなったように感じた。

三年前に傷物令嬢として距離を置かれていた時とは違って、社交の場にも積極的に顔を出していたからか、令嬢や令息の友人も増えてきた。


しかしメリーや一部の令嬢達からは嫉妬から嫌われているようで、陰で文句を言われることもあるが基本的にセレニティは無視している。

それでもしつこい時は「いつでも受けて立ちますわよ?」と圧をかければ大抵の人は去っていく。

セレニティは剣の腕を上げてきたので物理的に負ける気がしない。


スティーブンもハーモニーもブレンダも皆、セレニティを可愛がっている。

それを目の当たりにする回数が増えるほどにセレニティに絡んでくる者は減っていった。

そして今ならば彼らを盾にして威張っていたメリーやジェシーの気持ちがわかるような気がした。

何故ならば彼らの権力や影響力はとても大きいからだ。

セレニティもそのことを目の当たりにして実感していた。


そして嬉しかったことと言えばブレンダとナイジェルが婚約したことだろう。

トリシャから聞いた話では、ナイジェルはずっと昔からブレンダに片思いをしていたらしく、なんと初恋が叶ったようだ。

きっかけは三年前のパーティーだ。

セレニティがスティーブンと参加してブレンダとナイジェルが共に参加したことで二人の距離はグッと近づいた。


ナイジェルに「セレニティが気を回してくれなければオレ達が婚約することはなかったかもな」と言われたほどだ。

いつも令嬢達にモテモテで女性の扱いに長けているナイジェルだが、本命のブレンダにはデレデレしていて、敵わないといった様子だ。

ブレンダに尻に敷かれる未来しか見えないが、ナイジェルはブレンダに何を言われようとも幸せそうだ。


長年の片想いが実ったことで幸せが漏れ出ているらしく「ずっとニヤけていて気持ち悪い」とトリシャが不満そうだった。

相変わらず女神の如く美しいトリシャも少しずつ親しい友人に触れられるようになってきたと嬉しそうに報告していた。

触れられた友人も嬉しかったことだろう。


周囲もブレンダならばと納得のようで、ナイジェルがセリカ公爵家に出入りしているところを見るに、後継として婿入りするのだろう。


そしてナイジェルにブレンダという婚約者ができたので、令嬢達がスティーブンに殺到することになる。

ネルバー公爵に行くたびにスティーブンが疲弊していく様子を見て、ハーモニーやブレンダは心配していた。


学園では今、スティーブンを巡ってすごいことになっているらしい。

公爵家の嫡男で誠実、騎士としての腕も確かで見目もいいとなれば、その理由もわかる気がした。

そのせいかスティーブンの令嬢嫌いはますます増しているようだ。


そのうちの一人であるジェシーも婚約者がおらず、学園で必死にスティーブンを射止めようと、日々試行錯誤しているそうだが相変わらず空回りしているようだ。

それに関しては身内として申し訳ない気持ちでいっぱいだった。


セレニティがネルバー公爵家に行くとスティーブンの口からも令嬢達に困っていることを聞いていた。



「話が通じないんだ。一体、俺はどうすればいい?」


「スティーブン様……大丈夫ですか?」

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