15.狂った保健医

夜見「それはそうとして……なんで力は抑えたのに、あんなことに?」


雫「……ボクの力は……強力なものほど、集中しなきゃダメなんだ、そして……集中してる間は、感覚が敏感になる、そういうこと。分かった?」


夜見「なるほどね……それで、か」


ミコト「あのー!それは分かったんだけど!私体痛くて動けないんだよね!助けてくれないかなー!」


廊下の向こう側から、比良坂先生が声をかけてきた。

そういえば、最初に吹き飛ばされてたな……


蓮夏「あっ!今行きまーす!」


蓮夏が急いで比良坂先生の方に走っていった。


ミコト「できれば保健室まで運んでくれると助かるな……どうだい?」


蓮夏「んー、できますかね、一回背負ってみても?」


ミコト「ん、問題ないよ。」


そう比良坂先生が言ったのを確認すると、蓮夏は比良坂先生を背負った。


蓮夏「ん、思ったより軽いですね……これなら保健室まで運べそうです!」


ミコト「ん、それならお願いしてもいいかな……?」


蓮夏「大丈夫ですよ!」


夜見「あ、私も着いていきますよ」


雫「え、なにそれ……ボクだけ行かなかったらなんかやな奴みたいじゃん、仕方ないな、ボクも行くよ」


ということで、全員で保健室に行くことになった。

しばらく校舎を歩いて、保健室に着いた。


蓮夏「失礼しまーす」


と、蓮夏がノックをしてからドアを開けて言う。


???「ん、はーい、って……やけに人数が多いですね……!?」


そういえば私たちは超健康優良児、所謂運動をしていないだけか転校生なので、保健室に来るのは全員初めてだった。とはいえ身体測定があったので保健医とは面識があるが……無いのは雫だけか。

そこには、桃色の髪をした長身の女性がいた。


夜見「あ、久しぶりです……えーっと」


???「ん、性谷涼。性に谷って書いてさがやって読むよ、倉橋さん。と……えーと?水浮さんに、あとは誰……?」


ミコト「あぁ、私はスクールカウンセラーの比良坂ミコトです……さっき怪我しちゃって、運んできてもらったんですよ」


雫「夢咲雫です、あー……今日転校してきました」


涼「あー……なるほどね、え、全員センシティブだろ」


夜見「……?何か言いました?」


涼「あーなんでもないよ……っぶねぇ〜口に出てた〜……!それで?比良坂さんが怪我したってこと?」


蓮夏「そうですね、ちょっとしたものなので、保健室に来ればすぐ治療していただけるかと思いまして」


涼「なるほどねー、ん、じゃあ怪我見せてください」


ミコト「あぁ、はい……水浮さん、降ろしてもらってもいいかな?」


蓮夏「あ、はい」


蓮夏は比良坂先生を背負うのをやめて、ソファに座らせた。


ミコト「ありがとう、水浮さん。それで……ちょっと、先程色々ありまして……身体の節々に怪我を負ってしまいまして」


涼「うわ、ほんとじゃないですか……傷だらけ……分かりました、軽い処置だけなら出来るので……」


そう言って性谷先生が比良坂先生の身体に触れた瞬間だった。


涼「ッ……!?」


性谷先生が、驚いたような顔をして、手を離した。


ミコト「え、どうかしました?」


性谷先生は、恐る恐る口を開いた。


涼「……つかぬ事をお聞きしますが、比良坂さん?」


ミコト「はい」


涼「比良坂さん、は。もしかして。女性、ではなく。男性?ですか?」


ミコト「え、はい……そうですけど」


涼「はぁ〜……はぁ〜?はぁ……?はぁ……は?」


ミコト「……?」


涼「っはぁ〜……え……?センシティブの塊かよ……ッ!」


ミコト「!?」


夜見「??」


蓮夏「……ええ?」


雫「……?」


時間が、止まったかのように、空気が凍りついた。

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