第一章.異能力研究所

2.学校で①

夜見「……で、もう四時なんだけど、どうしてくれるの?」


ナイト「いや……それは、分かりませんよ……」


夜見「まあいいや、今日は徹夜で」


ナイト「……身体には気をつけてくださいよ?」


夜見「分かってるよ……じゃあ。」


ナイト「はい、また何か御用があればお呼びください。」


そう言うとナイトは目の前から消えた。

いつの間にか雨も止んでいるし、家に戻る。

今から寝ても無駄だし、徹夜でもするかとベッドに寝転がりながらスマホを見る。

すると、いつの間にか私の身体は睡魔に呑まれ、眠りに就いていた。


???「……ねーちゃん、おねーちゃん!」


聞き覚えのある声が聴こえる。……この声は、明里……?

私を起こしに来たのかな。別に気にしなくていいのに。


夜見「……明里?」


そこには、私と同じ紫色の髪を後ろで纏めた、赤いリボンが似合う私とは似ても似つかぬ対照的な明るい妹が居た。


明里「おねーちゃん、おはよ!早くしないと遅刻しちゃうよー?」


夜見「……明里もでしょ、小学校に遅刻しちゃうよ」


明里「私はもう準備してるもーん!ほら、おねーちゃん、着替え置いておいてあげたから!今日も一日がんばろ?じゃ!」


……あぁ、眩しいな

本当に私の妹なのだろうか。

それくらい、彼女は眩しく、太陽と言うに相応しい人間だった。

本当に、私なんかの妹には、勿体ない。

そんな事を考えながら、部屋を出ていく明里を見送って、私も着替え始める。

ああ、今日も学校か、憂鬱だな。

着替えや諸々の朝の支度を終わらせて、私は家を出た。

朝日が眩しく、私の体を照らす。

今日は金曜日だし、早く終わらせて帰らせて欲しいな。

とかそんな事をぼんやりと考えていると、学校の正門に着いた。

正門に立つ何人かの教師に軽く挨拶をして、メインホールから教室へと向かう時だった。


???「わだっ!?」


……目の前で、誰かが盛大にすっ転んだ。


夜見「……えぇ……?大丈夫ですか……?」


珍しく柄にも無く人を心配している。いやだって、こんな完璧な転び方されちゃね……


???「あ、うん……大丈夫だよ、えーと……そうだそうだ、3-Aの倉橋さん。」


白く長い髪を後ろで少し結んでいて、小柄なその人物は、私の名前を呼んだ。

……そう言えば、見覚えがある人だ。


夜見「……それなら良かったです、比良坂先生」


比良坂ミコト先生……この人は結構名の知れた精神科医で、スクールカウンセラーとしてこの学校に来てくれているらしい。

何でも、比良坂先生に診てもらったらあっという間に精神が癒され、悩みが無くなるのだとか。


……そんな事、ある訳ないのに。

あるとしたら、その人はそんなに精神に問題を抱えてない人。

でも、比良坂先生が凄腕の精神科医って言うのは、本当なんだとは思う。

今この現状を見て、信じろと言われたらあんまりだけど……


ミコト「心配してくれてありがとうね、倉橋さん。倉橋さんも何か悩みがあったら私に相談してくれると嬉しいな」


……偽善者……って言いたいけど、きっとこの人は根底から優しい人なんだろうな。

なんだか、そんな感じがする。


夜見「はい……その時が来たなら、お願いしますね、では私は教室に行くのでそろそろ……」


ミコト「分かったよ、足を止めさせちゃってごめんね。今日も頑張って。」


……この人も、眩しいな


夜見「……はい」


そう一言だけ言って、私は比良坂先生と別れ、再び廊下を歩き出した。

その時だった。


ナイト『……だんちょ、じゃなくて……夜見、今のは?』


頭の中に、ナイトの声が響いた。


夜見「……!?」


ナイト『あぁ、驚かせてしまいすいません。私はだ、夜見の異能の一部ですから、顕現していない時は夜見の中に居るのです、ですから、こうやって脳に直接語り掛けることができまして……

だん、夜見も、頭の中で返事ができるはずです』


なるほど。

すごい便利だけど、ナイトそれだと暇そうだな……


夜見『……あ、ほんとだ、なんか行けそう。で、今のはって?』


ナイト『今の小柄な人物の事ですよ』


夜見『あの人は比良坂先生って言って……凄腕の精神科医らしい。学校にはスクールカウンセラーとして来てるんだってさ』


ナイト『……成程……だ、夜見。』


夜見『なに?』


ナイト『……気を付けろ、そいつは、比良坂は……』


ナイト『異能力者だ。』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る