俺だけ7つのゲームの世界に入れて、ゲーム専用のスキルも魔法も装備も手に入れ放題。え?地球のモンスターって弱くないですか?片手間に始めた不定期の動画投稿も即バズりました。
にこん
第1話 なんだこの穴は
「1,2,3,4,5,6」
俺はゲームソフトを6本積んでいき、そして最後に
「7」
最新シリーズであるセブンを積んだ。
【フェイテッド・ファンタジー】
略してフェイファン。
「今年も出るかなぁ……」
フェイテッド・ファンタジー。
一年に一本新作が出る。
俺は小学生の頃から触り始めて全部のシリーズをやった。
何回もやったシリーズがあるし大好きなゲームだった。
それだけに文句もあったりする。
別に出るモンスターが変わったり、とか設定が変わったりとかっていうのはどうでもいいんどけど、旧作で使った武器が大幅下方修正食らってた、とかそういうのが気に入らない。
例えば1作目でぶっこわれだった武器の【フェイトブレイク】とか2作目以降も出たんだけど大幅に下方を食らった。
正直使い物にならないほどのレベルにまでナーフされた。
ぶっちゃけ萎える。
1作目でめっちゃお世話になって、難所とかでも世話になって思い入れのある武器だったのが、大幅に下方。
残してくれててもいいじゃんとか思うけど。
「……」
ゲームの中でくらい強くありたいんだよな。
現実の俺なんて大したことないんだから。
ゲームの中でくらい現実を本当に忘れさせて欲しいんだけど
(仕方ないんだろうな、たしかにぶっ壊れだったから)
そう思って俺はゲームシリーズを全部本棚に詰め直した。
好きなシリーズだから一番目について取りやすい場所に置いてる。
その時にふと視界に入ったものが俺をいら立たせる。
高校の教科書だった。
それを見て憂鬱な気分になる。
だって俺はいじめられてるから。
中学生の時からふとしたことでイジメが始まった。
なんだと思う?って聞いて答えられる人いないんだよ。
だって本当に小さな些細なことだったから。
俺が風邪で学校を休んだ時のことだ。
その日は日直だったんだけど、俺が来なかったせいで俺の事を嫌ってたやつ……
それで、それだけのせいだ。
次の日学校に行ったら机に落書きされてて、休み時間とかになるとトイレに連れていかれて殴られた。
蹴られたりもした。
そいつは取り巻きも連れてきて
「ほんと……卑怯なんだよ……」
やるならひとりでやりゃいいのに、保険か知らないけど俺が絶対にやり返せないようにしてる。
そして、それからだ。
俺はちょっと精神に異常をきたして、勉強に集中できなくなって。
志望校も落ちて、公立の下の方の高校に進学することになった。
そんで……そこには髙安もいた。
それで相変わらず俺はいじめられてた。
ほんとに些細なことだったのに。
こんなに続いてた。
親にも期待されてない。
出来のいい兄と比べられて、俺はダメだった。
本当はもっと上の方の高校に入ってほしかったみたいだけど、俺は入れなかった。しかもそれどころか平均をちょっと下回るような学校。
家族からも酷い扱いを受けてる。
そんな生活環境でストレスが溜まらないわけが無い。
俺は醜くぶくぶくと豚のように太った。
月に一度もらう小遣いで安物の体に悪そうな食べ物を買い込んで、それをやけ食いしてストレス発散するような日々が続いた。
ラーメンとか冷凍食品のチャーハンとか、そんなんだ。
それで俺の身長は170しかないのに体重は100を超えた。
その見た目はもう、誰がどう見てもデブと呼ばれるようなそんな姿で。
ストレスのせいもあるんだろう。
顔にはどんどんニキビも増えていった。
そんな俺についたあだ名は
【ニキビブタ】
安直だけど、ほんとにそんなあだ名だ。
髙安を中心に広がっていたこのあだ名は全校生徒が知るあだ名となっていた。
だから、そんなんだからさ。
ゲームの中でくらい強くありたいんだよ俺は……。
雑魚になんて苦戦せずに、サクサク倒せるような、そんな人間でいたかった。
「ずっと春休みでいいのにな」
今は一年が終わり二年に上がるまでの春休みだ。
その始まりの週だってのに、こんな余計なこと思い出して鬱になる。
この無限に続くような地獄から逃げ出すための解決策を俺はひとつしか持ち合わせていなかった。
「……死ねればいいのにな」
俺はこんなんだからさ。
何度も何度もリストカットとしてきたよ。
こんなことで死ねないと分かっててももさ。
なにかに
時刻は深夜の12時になろうとしていた。
まだ風呂に入ってない俺は風呂に向かった。
風呂って言っても自宅の風呂を使えるわけじゃない。
俺はこんな見た目だから家族に同じ風呂を使わないでくれって言われてる。
とても、みじめだ。
俺の部屋は二階にある。
足音を鳴らさないように階段を降りて1階に向かうけど。
ガラッ。
そのとき
一階の部屋の扉が空いた。
そこに立ってたのは兄貴だった。
「
ニヤッ。
兄貴の顔に歪んだ笑みが浮かび。
ゴッ!
「かはっ……」
何が起きたのかは分からなかった。
でも、次の瞬間俺は兄貴に蹴られたのだと理解した。
壁に叩きつけられて、座り込んだ俺の髪の毛を掴んでくる兄貴……名前は明。
「なぁ、吹雪よ。俺の弟のくせにくだんねー奴だよなお前。県一のバカ高だもんなぁ。笑っちゃうぜ。お前今から風呂行くんだろ?なら、ついでに頼まれてくれよ。洗面所いくのだるいからさ」
カーッ。
ペッ。
俺の頭にタンを吐きかけてきた。
「あー。すっきりー良かったよ。こんなところに無料のタン処理機がいてさ。お前も俺の役に立ててうれしーだろ?」
そう言って部屋に戻っていく兄貴。
初めは嫌だったけど……人間慣れるもんなんだよな。
こんなの黙ってりゃそのうち終わるんだから。
(それにしても運が悪いよな、こんなとこで鉢合わせるなんて)
ヨロヨロと立ち上がって俺は玄関の方に向かうと玄関の上に置いてあった洗面用具を手に取って外に出た。
3月の下旬。
まだまだめちゃくちゃ寒いのに上着もなしで俺は銭湯に向かう。
この世界に俺の味方なんていない。
そんな気分にさせられる。
(俺はこの世界に生まれるべきじゃなかったんだろうな)
銭湯への道はそこそこ距離がある。
十字路を3つくらい超えて、次のT字路を通りがかったところだった。
「ワン!ワン!」
右手の通路になってない方、家がある方から犬の鳴き声。
(ほんとビビるよなぁ、ここの犬。犬にも嫌われてさ……)
まぁ、心構えできてたから今日はそんなにビビんなかった。
でも考え事の続きをする。
(こんな見た目を気にしないような人がいる、異世界に行きたい……)
そのとき。
左の通路からコォォォォォォォォっという音が聞こえてそっちに目をやる、と。
「な、なんだこれ……」
左の通路の道路の真ん中に穴が空いてた。
月明かりで照らされてるから分かった。
けど、穴の中は見えない。
(落とし穴か?でも昨日までこんなのなかったぞ?)
ソローっ。
俺は穴に近付いてみた。
で、しゃがみこんで四つん這いになって頭だけで穴を覗き込んでみた。
なんだ、これ。
真っ暗だ。
何も、見えない。
次に手を入れてみる。
(……??)
ちょっと生ぬるい感じ。
なんだこれ?
なにがなんだか分からないでいると。
そのとき。
「キャン!」
「わっ!」
さっきの犬にいきなり後ろから吠えられて、驚いて俺は穴の中に落ちてった。
(……どれだけ深いんだろうな、この穴……)
もう、なにも考えられない。
この後どうなるんだろう、とかってことも考えなかった。
俺は穴の底を見つめながらそのまま落ちていったが。
数秒後。
ドタッ!
「いてて……」
うつむきでどこかに落ちた。
予想していたような硬い感触はなくて。
まず感じたのはニオイだった。
(草……と土のニオイ?)
意外だった。
俺がさっき落ちたのは落とし穴。
それから考えてその底に草があるなんて思ってもいなかったからだ。
両腕を使って俺は四つん這いになって周りを見た。
すると
───────草原が広がってた。
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