異世界は、キミと共に
遅延式かめたろう
第1話 始まった雨の日
しかし今は3年の6月。話をするには、どちらかと言うと遅い。
「
「そんなことぐらい、分かってるよ」
「言われたら行動で示すが筋だろ! なんだお前の今までの行動は? 挙句の果てにその服装はなんだ! お前が通っている中学校はどういう場所か分かっているのか!!」
また始まった。
今年に入ってから、我が家の空気はピリピリしたまま変わっていない。
それが4月……いや3月からか?
とにかく数か月前からこの状態だ。
それに対して俺はどうしてるか。
受験する高校の候補すら上げておらず、この父親が言ったことをそのまましている。
頭では分かっているのに、いざ見てみると本当に逃げてしまうもんだ。
「本当に、どうしてお前はそうなってしまったんだ?」
「……速く戻りたいんだけど」
「戻って何をする? まさか今から勉強するとか言うのか? いいか、そうするなら先に親に相談してからだな……」
母親の方は何も言ってないが、こういう無言の圧が案外怖い。
教科書だけはきちんとバッグに入れているのも、
速くこの思いカバンをベッドの上に投げたい。
(そうだ、いつものように無視して2階に行こう。この大声も部屋に籠っていればいずれ消える)
どうせ今日もそうなると思い込んだ自分は、そのまま廊下に行こうとした。
その時だ。
「やはり、お前は俺達の子供じゃないな」
「…………………………………………………………………………は?」
「
「なんだよ? 今まで貰って来た賞の数で子供を測るってのか?」
「別に、間違った事じゃないだろ?」
はは、と笑うことしか出来なかった。
自分の親は最低最悪かもしれない。この家よりも別の場所にいる方が良いかもしれない。
だが、どんなに表情では笑えても、心の中では笑えなかった。
冗談じゃない。
こんなのは狂っている。
「別にお前の全てを否定する気は無い。やりたいことがあればそれは応援するし」
「…………………………………………………………っせぇよ」
「高校だって専門学校とかならやりたいことがやれる。それに、お前のテストの点数だって……」
「うっせぇよ!」
「あ、
「母さん、落ち着けっ。今追ったって間に合わない‼」
「けど、
何も聞こえていなかった。
その日が雨だったことも忘れていた。
「……だったら出てってやる」
白い高級そうな制服を着ていることも忘れてしまう程、ただがむしゃらに走っていた。
なんとか家から離れるように。
とにかく走った。
教科書が入ったカバンを追いてったからか、体は思ったより重くはなかった。
「……もう、帰らねぇから」
何を考えたらいいのか分からなかった。
最後に父さんが何を言ったのかも覚えてない。
ひょっとしたら母さんが自分のことを呼んでいたかもしれないし、家の近くで傘を差していた同じ制服の人は彩人だったかもしれない。
その日、
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