第4話 一緒に下校
ふう、今日も一日お疲れさま。
グッ、グッと
忘れ物はないはず。
よし。あとは帰ってからのお楽しみ、ゲームの時間。
ガタッ
いざ帰宅部、始動!
「──ねえ、冬木くん」
……って、んん? 篠宮さん?
「なに?」
「あ、あのね、私と一緒に帰らない?」
「……えっ?」
一緒に、帰……る……?
「い、いや……ほらっ! 私っていつも一人で帰ってるから、たまには誰かと一緒に帰りたいな~って」
僕が女の子と? それも篠宮さんと?
そんなことって許されるの?
「たしか途中まで帰る方向が同じだったよね? 明代ちゃんたちは部活で忙しいし。冬木くんが良ければだけど……ダメかな?」
篠宮さんも帰宅部。
篠宮さんとの下校……
これは願ってもみないお誘いだけど、僕の答えはすでに決まってる。
「僕でいいなら構わないよ」
他でもない、篠宮さんの頼みだもん。
断ったら極刑。
「決まりだね。それじゃ、ちょっと待っててね」
「う、うん」
でも、ちょっぴり緊張するな。
──そして、
「それでね、主人公がプロポーズするって時に、唐突に地底人が出てきて、ヒロインが攫われるちゃうんだよ」
「恋愛モノなのに? また急な展開」
「そう! それで、実は地底人の方が先に地球にいたっぽくて、むしろ私たち人類の方が宇宙人だった~みたいな感じになっていって」
「本で読んだことあるよ。僕たちは元は隕石の一部で、それが地球に落下してってヤツ」
バッ!
「そう、まさにそれ! まんまその通りだよ! で、そのあと地底人と地球をかけた戦いが始まって……あまりにも酷すぎてそこで見るのやめちゃった。もうポカーンだよ!」
「今回はSF展開なんだ。なんであの人たちっていつも迷走するんだろう」
「ホントだよ。尺が余るからってやめて欲しいよね!」
今は放課後で、篠宮さんと下校中。
篠宮さんとは……うん、意外と気が合うかもしれない。
映画やアニメが好きらしくて、それについて色々と語り合ってる。
情報の共有、交換。
これは面白いよとか、アレは微妙、ハズレ、観覧注意とか。
むしろこういうのに関しては、篠宮さんの方が食い気味。
目をキラキラさせて、いつもよりちょっと早口になって、一段と笑顔で溢れてる。
そんな篠宮さんに釣られてなのか、不思議と僕までテンションが上がっちゃう。
姉さん以外の人とここまで話が弾んだのは初めてかもしれない。
うん、素直に楽しいよ。
ちなみにネタバレとか敵視するタイプだから、そこは要注意。
急なマジトーンで怒られるからね。
「はあ、冬木くんが転校してきてホントに良かったよ」
「えっ……」
それって……
「今まで話の合う人がいなかったんだ~。明代ちゃんたちにこういう話をすると、ちょっと引かれるんだよね。いっつも変なのばかり見てるって」
あっ、そういう意味か……
ホント、ドキッとさせてくれる。
「そうなんだ。じゃあ普段は一体どんな話をしてるの?」
知られざる女子の会話。
ちょっと踏み込みすぎ?
「……へっ? な、なんで?」
あら?
「いや、篠宮さんがいつも楽しそうに話してるからさ。気になって」
「そ、そうなんだ。えっ、えーと……い、色々だよ。うん、色々……あは、あはははは」
無粋、やらかした。
今のは聞いちゃダメなヤツだったみたい。
そっか、女子には色々あるんだね。
「そ、そう言えば、冬木くんってたしかゲームが得意なんだよね? どんなのをやってるのかな? 友ちゃんもそうだけど、やっぱりこういうの?」
ジャキッ!
篠宮さん、両手で銃の構えを作ってる。
FPSはたまにやるくらい。
「う~ん、得意というよりは好きだからやってるって感じかな。色々やってるけど、別に上手くも何ともないし」
僕って何かと中途半端だから。人生も。
「ふ~ん。私はゲームはからっきしダメかな。全然出来ないよ」
「そうなの?」
「うん。この間、友ちゃん家に遊びに行った時も、なんかこう、身体が一緒に動いちゃうって言うのかな? そういうのってダメなんだよね?」
操作にもたつく篠宮さん、何となくだけど想像がつく。
ちょっと見てみたいかも。
「ダメとかないよ。上手い下手じゃなくて、楽しいと思えるかが重要なんだ」
「うん?」
「ほら、篠宮さんが映画を観るのと一緒だよ。見たくない映画なんて別に観ないでしょ? ゲームもそれと同じ」
あくまで自分が楽しいからやってるんだ。
面白くないなら無理にやる必要はないよ。
「あとは自分の中でルールを作ってプレイするっていう手もあって、例えば敵を殺さないで進む。あえて性能の低いキャラを使ったり、とか」
人はそれを、縛りプレイと言う。
「まあ、要はごっご遊びみたいなモノだよ。自分で設定したキャラになりきってプレイする、それが意外と面白かったりするんだ」
今まで1人で遊んできたからね。
つまり自分だけの世界へ、レッツ逃避。
「ふーん、哲学的なんだね。ゲームって」
……篠宮さん、あまり分かってないみたい。
それに今の僕、早口でちょっと変な人になってたよね。
「じゃ、私はこっちだから。またね、冬木くん」
「うん、また明日」
バイバイ、篠宮さん。
「あっ、今夜のマジカルマリコ、絶対に見てよ! 絶対面白いから!」
「う、うん、見てみるよ……」
深夜アニメ……
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