私小説(15分)

@tabuchiozigi

ハッピーメールで会った人に処女を買ってもらった話

 完全に忘れていた。多分書いておかないとまた忘れるので一番最初に書いておこうと思う。インパクトもあるし。

 処女を失ったというインパクトある出来事のはずなのに、それが何歳のことか、何月のことか、記憶にない。町田で待ち合わせたことだけ覚えてる。(いつから人とセックスするようになったかとかを逆算したら多分大学2年とか3年のことだと思う。)


 性的なことに興味はあったけど体が追いついてなかった。自慰行為をしても快楽を拾えなかった。あと多分この期間、いわゆる制服リフレ(出張)みたいなとこにちょっと在籍し始めた頃だった。


 制服リフレでは、本番禁止(当たり前ではあるものの)だった。逆リフレという追加オプションがあって、それが入るとお客さんに体を弄られた。なんか気持ちよくはなるし、「お店に内緒で!払うから!」って本番を交渉されることが多々あった。

 ただバレたりするのがやっぱり怖くて断ってた。(当たり前ではあるものの)


 じゃあ自分で、誰か知らない人と交渉してセックスをしよう、と思った。

 大学や身の回りの友人の誰かと、夕飯に行って関係と信頼を作って、処女をもらってもらうのは大変遠回りで面倒に思えた。

 出会い系を使うのは私には大変いいアイデアに思えていた。


 小田急線沿線で待ち合わせたいことと、処女であること、ゴムを使って欲しいこと、この2点を他の人の書き込みを参考にしながら書いたらたくさんメッセージがきた。

 その中で、若すぎずおじさんすぎない適当な人を選んだ。


 ここからは記憶があまりない。

 スーツを着た、20代後半〜30代前半くらいの人がいた。年齢より若く見られそうな、学生っぽさの少し残るようなそんなに冴えない人だった。

 相手も緊張していた。なんかぼんやりしながらよろしくお願いしますとか言ってる私よりよっぽど私の処女の体に緊張していて心配そうにしていて、丁寧にしてくれた。

 快感はあまり感じなかった。大きい体と必死な息遣いがなんだか嫌だなと思うくらいだった。


 行為が終わった後に、「相手は処女を奪うことに価値を求めて時間を割いたはず」と思ったら、血が出ているのかが心配になって、シーツにほんの少しついた血に「あ、よかった」と安心した。


 それだけだった。その後帰りの支度をしている間と、町田駅の人混みの中で別れるまでの間、酷く私に情が湧いたらしく言葉を選びながら話しかける彼を見ていた。

 恐る恐ると手を繋いでいいかと尋ねられて、ホテルから駅を手を繋いで歩いた。別れる前に「大切にしたい、また会いたい」と言われたことと、それからしばらく定期的にメッセージをもらっていたことを覚えている。


 私がどうでもよくて、もらってもらった処女に、責任を感じてもらったことを、一瞬にして情を覚えて感情を傾けてもらったことを、なんとなく覚えている。



 その後からはセックスが心置きなく(心置きなく?)できるようになった。

 大して快感を拾うことのできる体でもなかったらしく、別にセックス狂いになることもなく、こんなものか、と思うだけだった。

 その人とはその後会うことはなかった。


 それだけである。

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