第2話 魔王様のお仕事はやんごとない
おばあちゃん、魔王という職業はとても大変な役職だったようです。何をするわけでもなく玉座に座り、笑い方にも指導がはいりました。
「俺は認めないぞ!」
これまでに何人もの挑戦者が魔王の座を狙い僕を殺しにきました。僕としては穏便に魔王の座を明け渡したいのですが上手くいきません。
「どうぞどうぞ! 僕も認めてませんから!」
細田太くんは立ち上がる。
【ドジっ子スキルが発動します】
「おっとっとっとととととととととと!!!!
!!!! あぁぁぁぁぁ助けてえぇぇぇぇ!!!」
細田太くんは背の丈より長いマントを踏んずけました。
どーーーーーん!!!!
「おお!! 四天王の一人ドラゴン族のドイル様をも一撃で!」
なぜでしょうか? 毎回戦う前にすべてが解決してしまいます。少しダイエットをすればこのような事は起こらなくなるのでしょうか。
「床にめり込んでる……相手に攻撃する暇も与えず無力化するとは」
「これで何連勝だ」
「よもやオークが魔族のトップに躍り出るとは……」
おばあちゃん、僕は人間の子ですよね? この世界に来てからというものずっとオークと呼ばれています。つい先日、僕と同じようにオークと呼ばれる化け物が会いに来てくれましたが、どう贔屓目にみても豚でした。
「さすがは魔王様! さすまおです!」
執事のセバッサンは大喜びです。
次の週……
「ウフフフフフッ! さぁオークの魔王様、今日は私が相手ですわ」
このように四天王と呼ばれるような重鎮の化け物達も魔王の座を狙ってやってきます。お手紙でも書いて持ってきてもらえたら交代するのに、文字は書けないと言われてしまいました。
「四天王の一人サキュバスのジレイユ様だ!」
細田太くんは動けない。
「さあ、魔王様! ここまで降りてきて私にひれ伏しなさい!」
細田太くんは動けない。
「なぜ玉座から降りようとしないっ!」
細田太くんは動けない。
「私の魅了が効かない! なんという胆力なの……」
おばあちゃん、十四歳の僕には刺激が強すぎる格好をしたお姉さんから誘われました。立ち上がり威風堂々と階段を駆け下りたいのは山々なのですが、降りる事が出来ない諸事情を抱えてしまい残念でなりません。
「私の負けね……さすがは魔王様といったところかしらね?」
ジレイユは投げキッスをするとそのまま去っていった。
「あっ! まって……」
いろんな意味でとても残念です。
次の週……
(俺は四天王の一人、暗殺を得意とする獣人族のツヴァイス! ドイルとジレイユは正面から戦いを挑んだ結果敗れた。ならばありとあらゆる暗殺術を極めた俺の出番だ)
「セバッサンさん、今日は平和っすねぇ~いいですね~」
「魔王様、セバッサンとお呼びください」
セバッサンは年上なのに敬称をつけさせてくれません。セバッサンのサンが敬称っぽいからまあ良いか。こういう平穏な日々をすごせるのなら魔王も悪くないですね。
(クックック! まさか天井に潜んでいるとは思うまい。この毒をグラスに垂らすだけの簡単な仕事だ……)
【ドジっ子スキルが発動します】
がんっ!!
「あっ! 蝋燭を倒しちゃった!! あわわわわわわ!」
ボッ! ゴオオオオオオオオオオオオオオ!!
なんか雰囲気がいい感じの蝋燭が倒れカーテンに燃え移りました。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ドンッ!
炎に包まれた忍者が落ちてきました。きっとこの人は僕を影から見守ってくれている配下の人だと思います。やけどの跡が痛々しいです。こんな時におばあちゃんのアロエがあればと悔しい思いをしました。
「くっ、殺せ!」
嬉しくないくっころいただきました。
「おい、あれって」
「ああ、四天王の一人である獣人族の殺し屋ツヴァイス様だな」
「あのツヴァイス様ですら叶わないのかよ!」
……次の週
「とうとう最後の四天王である鬼人コーディル様が魔王様に挑むってよ」
「まじか!」
「どうやらコロッセオで戦うらしいぜ!」
「それは盛り上がるな!」
おばあちゃん、僕は今大勢のギャラリーに囲まれ命の危機に晒されており、この恐怖感は先代の魔王さんと出会った頃を思い出させます。
「魔王様、このような場所までおいでくださりありがとうございます」
「は、はい」
「では参る! ハァァァァァ!!」
「うわぁぁぁぁ!!」
【ドジっ子スキルが発動します】
細田太くんは背を向けて逃げ出したら足に蹴躓いた。
「いったぁぁ! ひぃっ!」
「これを躱しなさるか……」
無理です! 無理ゲーです! 身体強化? 何それ食べられるの? 唯一馴染みのある手斧を持って(他の武器は重くて持てませんでした)挑んだのにその手斧すらなくなりました。
シュルルルルルルル! サクッ! シューーー!!
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! そうか! あの瞬間、倒れたと見せかけて粉塵に紛れさせて手斧を!!」
「あ、あの……血が噴き出て……」
「目がっ! 目がァァァァァァァァ!!」
コーディルは噴き出た血が目に入りバルス。
「チャンスだァァァァァァァァ!」
「ここかぁぁぁ!!!」
【ドジっ子スキルが発動します】
スカッ!
「痛っ!! 足が攣った! あーーーー!」
キンッ!
「アガっ!」
おばあちゃん、鬼人さんの鬼人さんはまさに鬼人さんでした。
四天王最後の一人鬼人コーディルは戦闘不能になりました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます