うんちな魔王さまはドジっ子スキルで最強に至る

む~ん

第1話 混ぜるな危険

 細田太ほそだふとしくんは最初からクライマックスを迎えていた。


「何だ! 転移魔方陣だと!」


「落ちてきたぞ! 人間? いや辛うじてオーク?」


「黒髪に黒目のオーク……おいおい変異種か?」


 どういう事でしょうか? 確か、歓迎遠足で山登りをしていて……珍しい花を発見したから道を外れて見に行ったら足を踏み外して転落したまでは記憶があります。何故なにゆえに建物の中にいて、化け物みたいな外見の人たちに囲まれているのでしょうか?


「こここここ、こんにちは!!」


 挨拶は人としての最低限の礼儀だとおばあちゃんが言ってた。あと何かよくわからなかったら頭を下げときなさいとも言ってた。


「ふははははっ! 名もなきオークよ魔王軍は力が全て! 今、貴様が倒したデーモンロードの代わりに我に挑む権利を与えてやる!」


 おばあちゃん、この日ほど自分の体形が憎らしく思った日はありません。これは毎日甘やかしたおばあちゃんのだと思います。不可抗力ですがデーモンロードさん?という人をお尻で潰してしまい、魔物の王様みたいな人とガチンコバルトをしなければいけなくなりました。ラップバトルだったらワンチャンありますかね?


「ほーう……我を前にしても恐れを抱かない胆力! 気に入った!」


 違います! 混乱しているだけです! やめてください! ありえない長さの剣を振り回しながら階段を笑いながら降りてこないでください! あっ!? 自己紹介がまだすよね!? 話せばわかるはず! そうだよそうだよ! さっき名もなきオークとか言ってたし(人間だけど)。ここは丁寧にあいさつをしなければ。


「さあ! 殺し合いを始めようかぁぁぁぁ!!」


 細田太ほそだふとしくんは暴力が苦手な心優しいお花大好き少年です。


「初めまして! 細田太ほそだふとしと申します!」


 五体投地。それは両手、両膝、額を地面に投げ伏す丁寧な挨拶。


 すかっ!


「わ、我の薙ぎ払いを躱すだ……と? うっ!! 勢いでバランスが」


「ほえ?」


 どすんっ!


これはきっと挽回のチャンスだ! この魔王さん?を助け起こせば何かが変わる! そんな予感がビンビンする。


「だ、大丈夫ですか!?」


【ドジっ子スキルが発動します】


「うっ! 足が痺れ……」


 ゴーーーーンッ!


「ぐああああっ!!!」


「あいたたたたたっ! あぁぁぁぁぁぁ! ちょ、違うんです! 足が痺れて!」


 おばあちゃん、助け起こそう思った相手が白目を剥いて反応しません。小さな頃僕がけがをした時、おばあちゃんは庭のアロエを切ってはその樹液を塗ってくれましたね。アロエを塗った方がいいですか? ここにアロエはありますか?


 ざわざわ ざわざわ ざわざわ


「おい! あのオークが魔王様を倒してしまったぞ! しかも一撃だと!?」


「まじかよ、今代最強の魔王だぞ!」


「どうしよう俺、最初に失礼な事言っちゃったわ~」


 魔王を倒された魔物達は困惑していた。


「はっ!」


 おばあちゃん、アロエを手に入れる前に魔王さん?が目を覚ましてくれました。あちらも少し混乱しているようなのですが、対話による平和的解決を僕は望んでいます。


「我は敗れた……のか。よもや一撃とは」


「な、何か……ごめんなさい」


「よい、新たな魔王よ勝鬨をあげよ」


「ほえ?」


「さあ!」


「と、獲ったどおおおお?」


「「「「「「「おおおおおおおおお!!!!」」」」」」


 新たな魔王の誕生に大歓声が上がった。


「ではこれを纏い玉座へ行くのだ」


 馬子にも衣装とはこの事を言うのでしょうか? 大きすぎるマントを羽織らされ角の生えた王冠を載せられました。玉座は僕には大きすぎたのか、足が届かないのでちょっと格好悪いです。


「「「「「「魔王様ばんざーい! ばんざーい!」」」」」


 おばあちゃん、どうやら僕は異世界に転移をして魔王になっちゃったみたいです。

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