人気Vtuberである俺のリスナーの『せれな』はいつも変なコメントをしてくる 〜生徒会長である超絶美少女の瀬玲奈が俺のリスナーなわけがない〜
エリザベス
『俺が超絶美少女の生徒会長の奴隷にされた』編
第1話 昨日は私の悪口を言ったのかしら?
「……返してくれ」
「それは君の返事次第かな」
「お前は生徒会長だろう!」
「あら、これは生徒手帳だよ?
「くっ……!」
警察手帳をひけらかしながら犯人を追い詰めてるかのように、生徒手帳を掲げて俺に壁ドンを現在進行形でしている少女がいる。
もちろん、この生徒手帳は
「なにが目的だ!」
「私がなにか企んでいると思ってるのかしら?」
「そうじゃなきゃ、なぜこの体勢なんだ!」
「別に大した意味はないわ? 私はただ、
「拾ったら何も聞かずに返すのが礼儀だろう!」
「可愛い女子に声を荒らげる雲母くんこそ礼儀がなっていないのではないかしら?」
ド正論すぎて反論ができない。
空風さんのさらさらとした長い黒髪は時々優しく俺の顔に触れてきて鬱陶しい。
「分かったよ……返してください。これでいいだろう」
「無茶言わないで? ただで返すわけないだろう」
「やはりなんか企んでるじゃないか!」
「そんな人聞きの悪いこと言わないで欲しいわ。条件を飲んでくれたら、普通に返すわよ」
「くっ……その条件ってのはなんだ」
「
耳がおかしくなったのだろうか?
「ごめん、もう一度言ってくれる?」
「しばらく耳掃除してないのかしら? 私の奴隷になりなさいって言ったわよ?」
「待って……」
顔を手で覆って、とりあえず深呼吸する。
うん、落ち着いた。冷静になろう。お前はやればできる子だ。雲母
「奴隷ってあの奴隷……?」
「その奴隷よ?」
「その人権がなく、ご主人様の命令にただただ従うしかないあの奴隷?」
「だから、あの奴隷だよ! 雲母くんって健忘症なのかしら」
「さりげなく悪口を挟むな!」
「奴隷の分際でご主人様に
「待って……俺はまだ承認していないから……」
本気か……?
こいつは狂ってる。前々から関わってはいけない人種だと思っていたのに、まさか向こうから接近してくるとは……。
こんなことになる前に転校すればよかったかな……。
いや、転校したところで、こいつは追ってくるだろうな……。
普通に詰んだ。
「うちの高校って、生徒手帳がないと色々不便だよね。たとえば登校できなかったりとか」
「そんな校則知らない!」
「生徒会長の権限で明日から追加するわ」
「き、脅迫だ!」
「それを、誰が信じるのかしらね」
ふん、お前の知らないところで、俺の話を信じてくれる人が一万人くらいいるわ!
「……分かった」
「ごめん、聞こえない〜」
「俺を空風さんの奴隷に……して……ください」
「『様』だろう?」
「それだけは勘弁して! クラスメイトに聞かれたら俺の人生終わるから!」
「……まあいいか、とりあえずよろしくね? 雲母くん♡」
「くっ……」
◆❖◇◇❖◆
「みんな、聞いてくれ! 今日まじであの生徒会長が許せない!」
声を変えて配信していると、コメント欄がぽんぽんと、勢いよく流れた。
自分の動きと表情にリンクしているアバターを見てると、まるで別人になったかのような清々しい気分だ。
◇
名無しの梨:まじっすか。またあの生徒会長かよwww
フランスのゴリラ:ちょっ、うちの推しになにしてくれてんの!?
ハートは君の心臓:( ・-・̥ )
ゴールデンウィークは休みたい:シン様にそんなことしてる女の子の顔見てみたいわ!!
せれな:見せてあげるわ
◇
最後のせれなというよくコメントをくれる常連さんの名前は、あの生徒会長の下の名前の
まあ、内面はともかく、あいつは顔がいいんだよな。
文武両道で、成績は常に学年トップでテニス部のエース、おまけに生徒会長。
編み込んだ長いストレートな黒髪はさらさらで、つり目がちな瞳も彼女の凛とした雰囲気を高めてくれる。超絶美少女という呼び名に相応しい。
と、俺以外の男子が思ってる。
それはさておき、そう、今のこれこそが俺の真の姿―――人気Vtuber『シン』である。
身バレしないために、声を変えてこつこつ配信をやってたら、いつの間にかフォロワーが一万人を超えた。
もはや、人気配信者と言ってもよくないか、否、いいんだよ!
「それで、俺がびしっと言ってやったんだ。お前は生徒会長ならそんな脅迫紛いのことすんなって」
◇
名無しの梨:おう! シンさんかっこいいっすwww
フランスのゴリラ:さすがシン様! 愛してるわ♡
ハートは君の心臓:v(。・ω・。)
ゴールデンウィークは休みたい:私もシン様に怒鳴られたい♡
せれな:明日が楽しみだね♡
◇
このコメントが大量に流れる感覚やはりたまんないな! うひょー!
せれなってやつまたわけのわかんないこと書いてるなー。まあ、気にしたらキリが無いか。
とりあえず、そろそろ配信切り上げて寝よう……。
◆❖◇◇❖◆
昨日と同じ踊り場で、同じ姿勢で立っている少年と少女がいた。
俺と空風さんである。
「昨日は私の悪口を言ったのかしら?」
「そ、そんなわけあるか!」
「あっ、そう」
「くっ……」
なんのことについて追及されてるのか分かんないけど、事ある毎にここに呼び出すのはやめて欲しい。
空風さんが納得したのか、やっと解放してくれた。
彼女から発せられるフルーティーな香りに汚染されていない美味しい空気を、三分ぶりに口に含んで幸せを噛み締める。
「とりあえず、焼きそばパン買ってきなさい」
「なんで俺が―――」
「―――私の奴隷わよね?」
「ただいま!」
くっ、覚えてろよ……いつか絶対に見返してやるんだからぁ!
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