第79話 集う仲間たち

 財宝の山みたいなのをチェックして回るだけで一日が終わる!

 もう大変だ!


「ウーサーお疲れ! これ濡れタオル」


「ありがとう! ひゃー、冷たい! こんなのどうやって作ったの?」


「エルトー商業国からみんなが手伝いに来てくれてるんだよ!」


「なんだって!」


 振り返ったら、たくさんの荷馬車が到着している。


「おーい!! 久しぶりだなあ! ウーサー、お前がこんなでかいことをやるとはなあ!」


 武具屋のアキサクだ!

 そして、兵士のルーンがその辺りに置かれている財宝を物珍しそうにペタペタ触っている。


「なあ、こんなにあるならちょっとくらい持ち帰っても……」


「ダメに決まってるだろう」


 ゴウに小突かれて、ルーンが「ですよねー」と笑った。


「ふむ、ウーサー。随分腕を上げたようだな……! 恐るべき成長速度だ」


 ゴウが近づいてきて、唸った。


「いやあ、色々あって……!」


「色々有りすぎだな……! そして本番はこれからと来た」


 その通りだ。

 魔王ポンデリグはこれから降りてくる。


 そいつをどうにかしないといけないわけなんだが……。


「ふーん? ちょっとは雑魚じゃなくなったみたいじゃない。今なら姫といい勝負できるんじゃない?」


「出たな姫」


 シェリィ姫が空から降りてきた。

 当たり前みたいに、ゴウの肩の上にちょこんと座る。


 前に見た時よりもちょっと背が伸びてるな……。

 この人、小さいんじゃなくて本当に見た目通りの年齢なのか。


 俺より年下じゃん。


「なんだこの生意気なガキは」


 そこへ過激な言葉を発するのはヒュージ。


「はぁ!? 姫をガキって不敬なんだけど? なにこいつ? 不敬? 処してもいいんだけど?」


「なんだとぉ!? 俺をやるってのかガキが! てめえ降りてこい! それともそっちのデカブツが俺とやるか!」


「ゴウの力は借りないし! 姫が生意気なお前をけちょんけちょんにしてやるんだから! ふん、ざーこ!」


「こ、このガキぃ~!!」


 ヒュージとシェリィ姫がちょっと離れたところに行ってしまった。

 そこで、バカでかい金属の蛇が現れ、シェリィ姫がでかい光の翼を広げて飛び上がっている。


 とんでもない試合が始まってしまった。

 再会して早々、大暴れしているなあ……。


「そう言えば、なんでゴウは王女様と一緒に来たの?」


「彼女が留学中でな」


「ふーん」


「うちに住んでいてな」


「えっ!? 王女様と一緒に暮らしてるの!?」


 とんでもない話を聞いてしまった。

 これにはミスティも目をキラキラさせて、


「えっ、じゃあゴウは召使いみたいな感じでやってるの!? 想像できない!」


「ああ見えて彼女は実は家事ができる……」


「えっ!?」


「えっ!?」


 衝撃を受ける、俺とミスティ。

 王女は趣味で、掃除に炊事洗濯もやれるんだそうだ。

 あまりにも意外……!


「俺の妻になるならば、彼女は王族ではなくなるからな。自らの手でできねばならない。それを考えて力を高めてくれていたのだろう……。ありがたい……。本当にいい女だ……」


 ゴウがこんな優しく微笑むとは……。

 とりあえず、マナビ王からは「成人するまでは子ども作るなよ。作ったら殺すぞ」と言われているらしい。

 ゴウ曰く、「注意してる」だそうだ。


 そうか……。そうかあ……。


 なんとなく、ミスティとチラチラ視線を交わす。


「ま、魔王を倒したらさ」


「うん、もちろん!」


 ミスティがちょっと赤い顔をしながら、親指を立ててくれる。

 これはもう、頑張るしか無い。


『わたくしももちろん大丈夫ですよ!』


 うわーっ、ニトリアまで加わってこようと!


「あんたはお呼びじゃなーい! どいてどいてー!!」


『あーっ、なんというご無体をー』


 ゴウが俺たちを見て、頷いた。


「モテるな、お前」


「勘弁して……!」


 こうしてたくさんの仲間が駆けつけて、みんなに協力してもらいながら財宝をチェックした。

 これだけの財宝があれば、おそらく全てを消費して、ギリギリ伝説の魔剣を三本召喚できる。


 魔王がどれほどの相手かは分からないが、いい勝負はできると思う……!


 何日も掛けて財宝をチェックし、魔剣を両替する練習をした。

 練習中は、一度も本物の魔剣を両替できなかった。


 やっぱり、使える機会にならないと出てこないんだろうか。


 そして新しい仲間が駆けつけてくる。

 後ろにおサルを乗せた神官騎士だ。


「アンナ! イサルデ!」


「お久しぶりです皆さん!」


『久しいなウーサー! また強くなったなあー! 全盛期のおいらほどじゃないが、いい勝負できるんじゃないか!』


 アンナは馬から降りると、聖印を見せてきた。


「見てください。イサルデ様からたくさん寵愛を賜ったので改宗したんです。技巧神教団の騎士になりました!」


「あ、そうなんだ……!」


『アンナはもう、技巧神教団の騎士で最強だぞ。おいらの技を三つも使えるからな。アンナをトレードする代わりに、至高神教団においらの技を一つ授けてきた。あっちの教団も底上げが図られたことだろう』


 信者のトレードってのがあるのか……!!

 とにかく、魔王と戦うためにこれ以上無い仲間が集まってくれたみたいだ。


 それにウーナギが世界中に声を掛けてくれている。

 これで、準備は万端だ。

 さあ来い、魔王!


 空を見上げると、魔王星は俺の拳ほどの大きさに見えていた。

 もう、明日にでも降りてきそうなのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る