4・森王国での修行編

第27話 帰ってきたエルトー商業国

 魔剣鍛冶の里での仕事を終えて、帰還した。

 報酬も結構もらった。


 魔法の針には手を付けないでおく。

 これは生活費に使うものじゃなく、俺の武器だからな……。


「金銭感覚が狂っちゃうねえ。あたし、その針をしばらく見ないことにしとくわ」


「俺も……。未だに頭が混乱してる」


 いつもの宿の部屋。

 ほんの三日ばかり空けてただけなのに、久しぶりという感覚になる。


 やっぱりここが落ち着くなあ……。


 戻ってきてすぐに、仕事に行くことにした。

 ミスティは部屋でゴロゴロするつもりらしい。


「ウーサーは真面目だねー」


「なんか休んでると落ち着かないんだ」


「真面目だなあ……。あたしが焦りを感じて来ちゃうよ」


「たっぷり休んでなって」


 彼女を宿に置いて、仕事場に来る。

 アキサクの武器屋だ。


「よう、ウーサー! 大活躍だったらしいじゃないか」


「うん、めっちゃくちゃ大変だった……」


 魔剣鍛冶がエルフとアビサルワンズの二人であったことや、十頭蛇エグゾシーの話をしたら、アキサクは目を輝かせて聞き入っていた。


「まるっきり、吟遊詩人が語る物語の世界じゃねえか! いいなあ、命の危険はありそうだが、なんか英雄譚に身を置いているような日々だな! ウーサーにはきっと、なんかそういう運命みたいなのが働いてるんだろう」


「運命かあ。そっすねー。多分働いてますね」


 ミスティの顔を思い浮かべる。

 彼女が与えてくる運命と宿命。

 間違いなくそれのお陰で、俺は色々なイベントに巻き込まれる。


 いいことも悪いこともあって、悪いことは命が危なくなるから、ガンガンに鍛えておかないといけないのだ。

 その後、アキサクに覚えてきた新しい技を見せた。


 魔法の短剣を作り出すやつだ。


「俺の目論見通り、魔剣を覚えてきたか!」


「覚えてきた」


「で、どうだ? スキルは強くなってるんじゃないのか?」


「あっ、確認してないや」


 あの後、ミスティと二人で魔剣鍛冶の里でのんびり過ごしていて、能力の確認なんかしていなかったのだ。

 どれどれ……?


《スキル》

 両替(七段階目)

 ・視界内に存在する金貨五十枚以下の物品の再現が可能。物品相当の貨幣が必要。

 ・再現した物品を手元へ引き寄せることが可能。物品の質量が大きい場合、使用者が引き寄せられる。

 ・手にした貨幣を視界内の任意の箇所に移動させることが出来る。障害物があった場合移動できない。


※レベルアップ条件

 ・金貨五十枚の物品を五個、貨幣へ両替。もしくは金貨五十枚から五個の同価格の物品を再現する。



 あまり表記が変わってない。

 いや、ちょっとずつ再現できるものの値段が上がってる気がする……。


「金貨五十枚までいけるって書いてます」


「おお、ついにか!! それはつまりだな……。ちょっとついてこい、ウーサー」


「うす」


 アキサクに続いて、店の外に出る。

 彼が指さしたのは、城壁に設置されている見張り塔だった。


「あの塔が金貨三十枚くらいだ」


「えっ、あの石造りでガッチリした塔がっすか!?」


「そうだ。つまりウーサー、お前、あれを調べてよく知ったら、あれを自在に作り出せるわけだ」


「う、うわあああ」


「見張り塔に設置されている様々な器具も全部合わせれば、金貨五十枚くらいになるだろ。今度、兵士の知り合い……ルーンと言ったか? そいつに頼んで見せてもらえばいい」


「う、うす!」


 ルーン、頼みを聞いてくれるかな……?


「よっしゃ、じゃあ詰め所に御用聞きに行ってきてくれ。ついででルーンとも話ができるだろ」


「いいんすか!?」


「いいに決まってるだろ。ウーサーがどれだけ育つかで、この国の運命が決まる……みたいな予感が俺はしてるんだ。期待してるぞ!」


 アキサクに肩をバンバン叩かれた。

 うおお、その期待に応えねば!


 詰め所は東西南北に合計四箇所あるのだそうで、まずはルーンがいるところに向かった。


「ちわーっす。アキサクの武器屋です」


「おう、ウーサーか。今日は一人だな。よしよし」


 ルーンが満足げに頷いた。


「うす。御用聞きに来ました。あと、お願いが」


「お願い? なんだなんだ」


「見張り塔を見せてほしいんすけど」


「おっ、そうか。いいぞいいぞ。それとな、国の偉い人がこの間来てな。城壁を守ったスキル能力者について聞いてきたんだ。そのうち偉い人から接触があるぞ」


「えぇっ!? マジですか」


「マジマジ」


 とんでもなことになってきてしまったぞ。

 どうしてそんなことに。


 いやあ、ミスティの力のお陰じゃないか。

 だったら、やるしかないよなあ。


 俺が唸っていると、あっという間に見張り塔だ。


 ルーンは塔の入り口にいる兵士と敬礼しあい、俺を中に招いた。

 見張り塔は、石造りの螺旋階段が中に設けられている。


 そして、一階ごとに見張り台がせり出していて、その中で寝起きできるようになっていた。


「便所は一階にしか無いから、わざわざ降りてくるのが面倒だけどな。おっと、見てみろ」


 見張り台に出たルーンが俺を呼んだ。

 なんだろうと思って行ってみると、そこからは先日の戦いで破壊された城壁が見えるじゃないか。


 もう、ほとんどが修復されていた。

 もちろん、元通りとはいかない。

 だけど、そこに漆喰やらを流し込んで、石や岩や金属のかけらを詰め込み、前よりも頑丈そうな城壁になっていた。


 無意識に、ルーンに聞いてしまう。


「あの修理って幾ら掛かったんすか?」


「あー、えーと、どれくらいだったかな。結構掛かったはずだ。金貨五十枚は行ったんじゃないかなあ……」


 金額、ぴったりじゃないか。

 見張り塔の後は、あの修理箇所にも触らせてもらおう……!!


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