第10話 新入生歓迎パーティ前日②

「これからソフィア嬢の部屋で、

少しばかり話しがあるのだが構わないかな、

勿論私の侍女も同室させる」

「どうぞごゆっくり」

「ああ、ありがとう、いこうかソフィア」

「…はい」


アーサーを見ると嫌みの一つも言いたくなるが、

ここで下手な事を言うのも得策ではない。

側に使えているのは、先日の国王陛下直属の侍女だし、

こちらが不利な流れにもならないだろう。


助けて貰えたのは素直に嬉しいし。


アーサーと付き添いの侍女を部屋に招き入れて、

アーサーには机の椅子に座って貰った。

侍女の人にも椅子を持ってくるつもりだったのだが断られた。

私は自分のベットの端に座って話をする事にした。


「そうそう、早速だけど先日は紹介をしていなかったね。

侍女のエバだよ」

「エバです、よろしくお願いしますソフィア様」

「こちらこそ、よろしくお願いね、エバさん」


「それでどういうおつもりですか、アーサー様。

私を助けてくださった様に思えてしまうのですが、

あまりお好みのドレスでは、なかったのです?」

「好みかと聞かれると困るんだけど、あの格好の君を他の男に見せたくなくてね」

「ああ、理解しました、婚約者の私が余りにも貧相なので、

みっともなくて周りに見せたく無いってお話しでしたか。

気づかず申し訳ありません、おっぱい星人ですものね、

たわわに実って零れそうなマスクメロン級じゃ無いと許せ無い派でしたよね。

これでもミルク飲んで頑張ってた時期もあるんですけどね」

「いや違うよ、まずおっぱい星人じゃないからね。

普通に愛おしい婚約者を邪な目で見られたくないだけだから」


「訴えますよ、卑猥な目で見ないで下さい、次に会うときは法廷ですね」

「ソフィア様」

「…何でしょう、エバさん」

「法廷では私にソフィア様の弁護をさせて下さい」

「ありがとうエバさん、貴女とはあった時からシンパシーを感じていたの」

「私もですソフィア様、二人で国家の巨大悪と戦いましょう」


私達二人は、互いを見つめ合い、手を握りあってお互いの信頼を確信した。


「ねえ、何か二倍面倒くさくなってるんだけど、

もういいや、いきなりだと思うけどドレスを用意したので受け取っ欲しい」


確かに父親が用意するとの事で明日のドレスは用意してなかった。

ここ最近のドレスは先程のドレス程では無いけど、どれも品が無い。


「私にですか」

「ああ、君が好きそうだと思って」


そう言ってアーサーが渡してくれた箱の中のドレスを見ると、

可愛らしいアフタヌーンドレスが入っていた。

薄いに水色をベースにした袖の長い絹製のドレスだった。

基本的に我が国は、デビュタントを迎える前の学生は父親が用意したような、

派手で露出の高いドレスは着ない。

色合い的にはもう少し深い色が一般的だけど、学生にはピンクとか可愛らしい色が好まれる。

私も若いうちだけしか着れないから憧れていた。


「な…んで今なのですか、私を愛してもいない、言葉も届かない、

期待させる様な、思わせぶりな態度はやめて下さい」


私は泣きながら思いをぶちまけてしまった、弱みなど見せてはいけないのに。

だけどもしも、もしも前回の私に同じ様な事をしてくれていたら、

どれ程嬉しかったか、何故全て壊れてしまった後に、私をまどわすんだろう。

その思いをとどめて置くことができなかった。


「きっと君には信じてもらえないし、

きっと私は信じて欲しいと願う権利もない。

だから死ぬその時まで私は君に伝えつづけるよ。

誰よりも何よりも君を愛している」


エバ、後はまかせた、私は席を外すよと

アーサーは、そういうと静かに私の部屋から出ていった。


私は変わらない、あの時の私の絶望を味あわせる為だけに、

この人生を生きると決めたのだから。


だからお願い過去の私、あの人の事を許さないで、愛さないで、お願いだから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る