男女比が狂った世界の“女子”に転生してしまった男の話

03.男ウケの悪い女を目指そう

念の為、という言葉がある。

徹底して男女関係のいざこざから距離を置く為にも、あらゆる可能性を考慮し、最悪の事態を想定しておく必要があるのだ。

つまり、こちらから積極的に関与しない限りはまずあり得ないとは思うが、俺が男子から一方的に好意を持たれる可能性も考慮しておこう、という話である。

俺の姉と妹二人はそれぞれ母親似で可愛い顔立ちをしている。

一方で俺だけは父親譲りの薄い唇に、これまた父親譲りの少し切れ長の目と、完全に父親似だ。

四人姉妹の中で、俺は可愛いというより、どちらかといえばボーイッシュな顔立ちをしている、というのが自己評価だ。中性的とも言えるだろう。

前世と同じく、この世界でも可愛らしく小動物めいた女子ほど男子からモテる傾向にある。

俺はそれを踏まえた上で、とにかく男からモテない女子を目指す事にした。

欲を言えば女子にはモテたかった。こればかりは前世からずっと思っているのでしょうがない。

参考として、俺は前世の学生時代を思い出していた。

俺から見て近寄り難かったタイプの女子を具体的に想起してみると、大体３パターン存在する事が分かった。

一つ目はギャル、またはヤンキーのような一軍女子タイプ。

二つ目は成績優秀、部活動で確たる実績を残しているような高嶺の花……つまりは優等生タイプ。

そして三つ目は男女問わず、他人と距離を置いている陰キャタイプ。

だがこれはあくまで、二軍の下層に位置していた俺のような微妙な位置の男から見た場合である。上二つに関しては、これらに属していれば普通に彼氏が居る子の方が多かった。

しかしながら、それらに属しつつ意識して距離を置けば、ある種の壁のようなものを築く事は可能だろうと思う。

そしてこの中で俺が目指すべきだと思ったのは、二番目の優等生タイプであった。

一軍女子タイプの場合は周囲のコミュニティが重要になる。

そうなると、自然の摂理として男子に絡みたがる友人も出てくるだろうという予想だ。

つまりは俺にとっての地雷原の真ん中に位置しているのが一軍女子達なので、俺が目指す場所からは最も遠いのだ。

あと、正直言ってギャルが怖い。とても関わりたくない。ヤンキー女子とかもうぶっちゃけただの魔物だと思っている。

単に男子から距離を置くだけであれば陰キャタイプも悪くはない。

しかし、俺としては普通に女子の友達を沢山作りたかったし、あわよくば彼女を作ろうという目論見があった。

とはいえ、半端に目立って男子からの興味を惹く事態は最も避けるべきであるし、この世界にも……というより、こんな世界だからこそ質の悪いヤリチンは間違いなく存在する。

無駄に目立った挙句変な男から粉をかけられ、周囲の女子から嫉妬されて嫌われる……というのが想定しうる中で最悪のルートだ。

となると、俺が目指すべきは「男から見て可愛らしさに欠け、話しかけても素っ気なく、成績も上位の、感じの悪い女」だ。

要は男から見て性的魅力に乏しく、一緒にいても楽しくない存在を目指すわけである。

大前提として、男には絡まない。

必要最低限しか話しかけないよう心掛け、もし仮に向こうから絡んできても塩対応を貫き通す。

俺と男が一対一の状況で相手が死にかけている場面に遭遇したりすれば話は別であろうが、とにかく距離を置くのだ。

全ては俺の将来と、いずれ来（きた）る日々の安寧の為に。あと彼女欲しい。