第七話 やっぱりモテる八神君
その後も授業は四つ葉ホールで行われ、そのままお昼休みとなった。
給食がない四つ葉学園。
お弁当を持ってきたり、食堂で食べたり、購買部で買ったりと食べ方も自由。
私はママがお弁当を作ってくれた。
二ノ宮さんが誘ってくれて、そのまま一緒に四つ葉ホールでお昼ご飯。
二ノ宮さんは大きな玉子ぎっしりのサンドイッチを鞄から取り出した。
鞄の半分はサンドイッチじゃないだろうか。
「いただきまーす♪」と大きな口を開けてバクバクと豪快に食べ始めた。
「うーん! 外でのご飯は最高ね!」
私もおにぎりをパクリと齧った。
大好きな鮭おにぎり。
他にも甘い玉子焼き、タコさんウインナー、アスパラベーコン巻き。
私の大好物が詰めこまれたお弁当。
まるでママが新生活を応援してくれているみたい。
「相変わらず、理亜の飯はデカいな」
頭上から声がして、見上げれば八神君が茶色い紙袋片手に立っていた。
それから私達と席一つ分距離を置いて、ドカッと座った。
彼は紙袋からメロンパンとジャムパン、牛乳を取り出す。
……クールな見た目と反して、甘党なのかしら?
メロンパンを頬張りながら、紙袋をガサゴソ。「手ぇ、出して」と私に言う。
ちょっと戸惑ったけど、八神くんの無言の圧に押されておずおずと手のひらを出すと、ポンっと小さな包みが置かれた。
「購買部のお土産」
それは透明フィルムに入ったマーブルクッキーだった。
……でも、私だけ??
焦って二ノ宮さんを見れば「私は甘いの苦手なんだ」とのこと。
「あ、ありがとう、ございます……!」
と八神君にお礼を言えば、「ん」とそっけない返事をしてくれた。
手作りっぽい包装。
どこかのお菓子屋さんのクッキーなのかしら?
私は包みを開けて、さっそくマーブルクッキーを頬張れば……。
「……お、おいしい!!」
あまりの美味しさに、思わず声が漏れてしまった。
その声の大きさに目をぱちくりさせる八神君と二ノ宮さん。
「そんなに美味しかった?」
くすくすと笑う二ノ宮さん。
私はあまりの恥ずかしさに熱くなる顔を両手で覆いながらコクコクと頷いた。
すると、二ノ宮さんの笑い声とは違う、くっくっくと少し低い笑い声が聴こえた。
私は自分の手のひらの隙間から、その笑い声の主を垣間見た。
そこには顔を歪めて笑う八神君が居て……。
屈託ない笑顔。
胸がトクンと鳴る。
……トクン?
なに、この音?
なんて考え事していたら。
いつの間にか手のひらの隙間が大きくなっていたみたい。
バチッと八神君と目が合った。
彼は慌てて目線を反らし、私も恥ずかしさのあまり、俯いた。
その時。
「や、八神君!」
足音と共に、女の子の声が私にも聞こえた。
思わず見上げると、見知らぬ女の子が三人。
もじもじとしながら八神君の前に立っていた。
「何?」
さっきまでの屈託ない笑顔はどこへやら。
スンとした真顔で返事をする八神君。
「あの、お話があって……」
三人の中で、真ん中に立つ一際かわいい女の子がそう答えた。
八神君ははぁ、とため息をついて、
「……じゃあ、あっちで話そうか」
と、
「……たぶん、告白ね」
八神君が居なくなると、二ノ宮さんはぽつりと言った。
「えっ、告白!?」
「うん。ゆづはイケメンだからね。頭も良いし、運動も出来るし、生徒会長だし」
「そ、そっかぁ。確かに、モテそうだよね……」
「うん、でもね。あいつの本性をみんな知らないんだよ」
「――え?」
その時、さっきの女の子の一人が泣きながら走り去っていく姿が見えた。
それを追っていく二人の女の子。
あっけにとられて、その光景を見ていれば、八神君が帰って来た。
「おかえり。今回もこっ酷く振ったんでしょ?」
二ノ宮さんは、当たり前の様に私の隣に座ってくる八神君に言った。
それに対して「別に」と冷たく言い放つ八神君。
……絶対に酷い振り方をしているよね?!
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