私は八神君の愛され係

さくらみお

プロローグ


 「お前、今日から俺専用の奴隷係に決定な」


 八神やがみ君から告げられたのは、彼専用のだった。

 

 突然の理不尽な要求。

 

「な、なんで、わ、私が八神君の……奴隷なんて……!」


 私はあり得ない条件に、強く言い返そうとする。 

 けれど、実際は弱々しい声が漏れるだけで……。


「このまま野乃原を野放しにすると、俺が心配だからだよ」


 と、見せびらかす様にヒラヒラと揺らすのは一通の手紙。


 その手紙だって、私が書いたんじゃない。

 八神君の下駄箱の下に落ちていたから、拾っただけなのに……!!

 

 話が通じない八神君。

 逃げ出そうと身を翻すが、あっさりと右手首を掴まれて。


 獲物を捕らえた八神君の鋭い眼光。

 恐ろしさに喉から声が「ひえっ」と漏れた。


 八神君は私が怯える姿を楽しそうに目を細めて見つめれば、強引に引っ張って行く。

 南校舎二階の一番奥にある教室へ。


 教室に押し込まれ、後ろ手で扉を閉めた八神君。

 一呼吸おいて「……さて」と呟けば、


「どうしてくれようか」


 と、不敵な笑みを浮かべるのだった。

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