正月に疲れたサルは屏風に絵を描く

野間小雪

第1話 除夜の鐘は何度響く?

ゴーーーーーン、ゴーーーーーン、ゴーーーーーン……

鐘の音が鳴る。近くの寺からだ。

70近い住職(いや、もう70超えたんだっけ?)が年末の大仕事として毎年108回

鐘を鳴らしている。お年寄りが結構なことだ。

俺はこの音を聞きながら、汚い部屋で寝転んでくだらない動画を観るのが好きだった。

108回は煩悩の数という。鐘の音を数えつつ、怠惰な自分の姿を客観視してみると

煩悩まみれな自分が浮かび上がるようでそれがなんとも滑稽で笑えてしまうのだ。

自虐的で趣味も良くないかもしれないが、他人に迷惑をかけてるわけでも中傷しているわけでもないし......な。笑いの自家発電ってやつだ。

そんな俺だったが、今は除夜の鐘にうんざりしていた。

理由は明白。許容値を超えたからだ。人が生涯聞くことができる除夜の鐘は100歳まで生きたとしても最大で108×100=10800回。だが、俺は26という齢で今日を含めて

41580回、385年分の除夜の鐘を聞いていた。

「畜生......。」

ここまで思い返した後、俺の口からなんとも無意味な言葉が零れた。

口元が少し緩んだ。まだ自分を笑える気力はある。絶望的な状況だが、もう少し踊ってやろう。365日繰り返した12/31から脱出しなければならない。

これまで脱出の糸口は掴めなかった。

だが、最初から思い返してみよう。客観的に、他人事のように。得意だろう?

そう、この永年休業中・現在営業中の雑貨店を俺が知ったこと、あの少女シーミアと

出会ったことから全ては始まったのだ......。

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