第161話 アスカ・トップバリュー再び

 

『アッ!アスカの馬車が、カララム王国学園の正門前に、今、到着しました!』


 鑑定スキルが、俺に実況中継してくれる。

 それを聞いて、俺は、急いで正門に走る。


「オイ! アスカの野郎、サラス帝国の王室が使う馬車に乗ってねーか?」


『間違いないですね! アレは完全に、サラス王室関係者しか乗れない馬車ですよ!』


 もう既に、正門前には生徒がたくさん集まって来ている。


 そして、馬車の扉が開き、アスカ・トップバリューが登場した。


「アイツ、どんだけ面の皮が厚いだよ……」


『大体、詐欺師系の人って、面の皮が厚い傾向がありますから、アレが標準だと思いますよ!』


「確かに、地球時代も、テレビで賑わす嘘吐き野郎って、どんだけ叩かれても平気そうだったもんな。そして、絶対に自分の非を認めないんだよ。焼〇屋になったお笑い芸人とか、暴露系ユー〇ューバーとか!」


『ですです!詐欺師の人達って、物凄くメンタル強いんですよ!

 成功してない研究を発表して、話題になった人なんて、その後、グラビアとかやってましたもんね!』


「そんなのも居たな……。まあ、詐欺師って、地位とお金と女が大好きなのが共通項だから、完璧に当てはまるアスカも、また、詐欺師系で間違いないって事だな!」


『アスカの場合は、イケメン好きですけどね!

 気に入った男子全員と関係持っちゃうぐらいですから!』


「という事は、アスカは、サラス帝国で王子を誑かして、ハメハメしまくって、

 本来、サラス王室関係者しか乗れない筈の馬車に乗って、カララム王国学園に来たと?」


『間違いなく、サラス帝国でハメハメして、サラス帝国王子の婚約者になり、今の地位に上り詰めたと推測されます!』


「というか、その王子も、今はサラス帝国の王様なんだろ?

 という事は、アスカは、サラス帝国の王様の婚約者?もしくは、もう、王妃とかになってねーのか?」


『十分有り得ますね!』


 鑑定スキルが、俺の推測に同意する。


「そしたら、簡単に、サラス帝国の王妃を、カララム王国学園から追い出す訳に行かねーじゃねーかよ!」


『多分、勝算があって、カララム王国学園に単身で乗り込んで来たと思われます!』


 流石に、ここまで来ると、ヨナンも青ざめてくる。

 恋愛イチャイチャキングの舞台に戻りたいからって、ここまでするかと……


『で、ご主人様。今回はどうするんですか?』


 鑑定スキルが、心配そうに尋ねてくる。


「暫く、静観だな。アスカの出方を少し見てみる」


『ご主人様が、サラス帝国に留学する件は?』


「そんなの絶対に行く訳ねーだろ!

 この学園には、ナナも居るんだぞ!

 俺の実の妹と知れたら、アスカに何されるか分かんねーだろうが!」


『ですね』


 てな感じで、俺は、アスカを暫くの間、静観する事にしたのだった。


 ーーー


 新学期が始まり、初めてのホームルーム。


 案の定、担任のグロリア先生が、サラス帝国からの留学生アスカ・トップバリューを連れて来た。


「皆さん。お久しぶりです!サラス帝国王妃アスカ・トップバリューです!

 この学園では、ヤリ残したことを、ヤリに舞い戻ってきました!」


 アスカは、アレだけの事をしでかしたというのに、平然と挨拶する。

 というか、やはり、アスカ・トップバリューは、サラス帝国の王妃まで上り詰めていたようである。


 Sクラスの生徒達は、驚き過ぎて、ちょっと引いてるし。

 まあ、カララム王国の公式見解により、アスカ・トップバリューが、魅了を使って、ルイ王子や有力貴族を籠絡していたという事実は、誰しも知ってる事なので。


 本来なら、アスカ死ね!とか、ギャーギャー騒ぐ場面だと思われるが、現在のアスカは、サラス帝国の王妃様、下手にアスカに暴言を吐いてしまうと、不敬罪とかにされてしまうかもしれないので、みんな口を閉ざしてしまっているのだ。


 なんか、してやったりとドヤ顔してる、アスカの顔がムカつき過ぎる。


 恋愛イチャイチャキングダムの攻略対象と思われるマイク・タイガー君と、グレイブ・ホース君なんか、顔面蒼白になってるし。


『ご主人様。よく、モブに成り果てた2人の名前覚えてましたね!』


「当たり前だろ! 俺だって、アレキサンダー君以外の男友達欲しいんだよ!

 だけれども、アレキサンダー君にストーカーされてるから、誰も、俺に近付いてこないし!」


『確かに、あれほど、アレキサンダー君がいつも一緒に居たら、みんな恐れ多くて近付けないですもんね!』


 鑑定スキルと、小声でワチャワチャ話してると、


「あら?何でまだ、ヨナン・グラスホッパーが、カララム王国学園に居るのかしら?」


 なんか、アスカ・トップバリューが、上から目線で言って来た。


『ご主人様、もう、アスカ・トップバリューは殺しちゃっていいんじゃないですか?

 もう、ザマーもある程度済ましてますし、この人の存在意義って、それほど無いと思います!

 僕的に、この人の存在自体が不快ですから』


 鑑定スキルが、恐ろしい事を言ってくる。


「ああ。確かに不快だが、元トップバリュー男爵を引き摺り出す為には、まだ、存在意義は有る。なんてたって、現在、カララム王国とサラス帝国は、戦争状態じゃないので、元トップバリュー男爵のチ〇ポを切り落とす、大義名分が全く無くなってるしな」


 ヨナンは、口を押さえて小声で鑑定スキルに返す。


『ご主人様って、本当に、大義名分とか気にしますよね。

 ご主人様の力を持ってすれば、サラス帝国を滅ぼす事なんて、1秒も掛からないのに!』


「ちょっと! アンタ! いつまで、サラス帝国王妃の、この私を無視してんのよ!」


 なんか、アスカ・トップバリューが、無視されてると思ったのか、怒りだす。


「オイ! その話は、勝手にそっちが言ってるだけじゃろーが!

 黙って聞いてたら、有ること無い事、いけしゃあしゃあと言いおって!」


 アレキサンダー君が、椅子に座ったまま腕組みして、不快そうに、アスカに言い放つ。


「アンタ誰?新顔が偉そうに! モブの癖して、私の話に入ってこないでくれる!」


 アレキサンダー君に、全く面識が無かったのか、アスカが、暴言を吐いてしまう。

 まあ、アレキサンダー君は、見た目が滅茶苦茶若くなってるから、しょうがないと言えば、しょうがないのだけど。


「ほほ~。元男爵令嬢の売女が、随分、偉くなったものだな……」


 なんか、アレキサンダーが、打ち震えて頭に来てるようだ。

 無理もない、アレキサンダー君は、このアスカのせいで、辛酸を舐めさせられてるし。


 だって、アスカは、自分の息子がAV男優になってしまった原因の女なのだ。


「何、アンタ、随分偉そうね?

 でも、このサラス帝国王妃である、この私に比べたら、たいした事ないでしょ!

 今のうちに土下座して、私の足の指の間を、犬のようにペロペロ舐めたら許してあげるわよ!」


 アスカは、もう地の性格を隠す気もないようである。

 偉くなったので、その地位を利用して、カララム王国学園で、やりたい放題するするつもりなのかもしれない。


「お主、ワシに、その臭そうな足の指の間を舐めよと言うのか?

 その意味を、お主は、分かって言っておるのじゃな?」


 アレキサンダー君は、アスカに念を押す。


「ハッ? 分かってるに決まってんでしょ!

 アンタ、殺されたくなかったら、早く舐めなさい!

 舐めなかったら、カララム王国と、サラス帝国は、再び戦争になるんだからね!

 アンタのせいで、大国サラス帝国と戦争になってしまうの!アンタの行動が、この国の命運を握ってるって、よ~く考えなさいな!」


 アホなアスカが、ドヤ顔で言い放った。

 アレキサンダー君のサラサラな金髪の髪が、逆だってる。これが怒髪天というのだろう。


 アスカなんて、靴を脱いで、足の指を舐めさせる、準備してるし。

 どんだけ、アスカは、人に足の指の間を舐めさせたいのだろう。


 多分、人を完全に征服させる事に、悦に入ってしまう性格に違いない。

 俺も、よく、裸にされて人間椅子とかにされてたし。


「さあ、早く舐めなさいよ!」


 アスカは、アレキサンダー君に自分の足の間を舐めさせる事を、Sクラス全員に見せつける事で、優越感に浸っちゃうのだろう。


 俺を個室に閉じ込めてやってた時より、スケールが大きくなってる。

 これもそれも、サラス帝国を手中に収めた自信が無せる業。


 今のアスカは、多分、自分が神にでもなった気分なのかもしれない。


 そして、いつもだったら怒る担任のグロリア先生も静観してる。


 まあ、アスカがイキってる相手が、カララム王国第15代国王だからって事もあるけど。

 少し、グロリア先生が笑いを堪えてるのが、笑えてしまう。


 だけれども、Sクラスの生徒達が、冷めて見てる事に全く気付かないアスカは、勝手に、Sクラスの生徒達がビビってると勘違いして、ますます暴走してしまうのだ。


「アンタ! 分かってると思うけど、私の指を舐める時は、全裸でしなさいよ!

 そうしないと、私が興奮しないんだから!」


 もう、アスカは何でも有りだ。サラス帝国の力を手に入れて、増長しまくっている。


「オイ。ヨナン、コイツを不敬罪で捕まえろ」


 アレキサンダー君は、直接、自分の手で下さず、俺に命令する。

 きっと、頭に来過ぎて、自分が動いてしまったら、アスカを殺してしまうと思ったのかもしれない。


 俺は、なので、鉛筆を持って、すぐさまアスカを取り押さえる。

 まあ、分かってると思うが、俺は何か持ってないと、アスカにも簡単に殺られてしまう程、弱いのだ。


 だけれども、鉛筆を持った俺は、この学園最強に変わるのであった。


「ちょっと! アンタ、何すんのよ!

 この私に刃向かって、タダで済むと思ってんの!

 もう、これは国際問題よ! 戦争よ!アンタに、この責任が取れると思ってんの!

 私は、この国の代理王とも良い仲なんだからね!」


 なんか、またアスカが、アレキサンダー君に言ってはいけない事を言ってしまう。


「ほほ~貴様は、我が息子と良い仲とな?」


 なんか、アレキサンダー君が、自分の魔法の鞄から、俺が昔作ってやった剣を取り出してるし。


「え?! 息子? アンタ、ルイ王子の親なの?」


 今更ながら、アスカがビックリしてる。

 というか、アスカは逃げた方がいいと思う。

 このままだと、絶対にアレキサンダー君に斬られちゃうし。


 多分、アレキサンダー君的には、サラス帝国との戦争終結など、望んでいなかったと思うし。


 話の流れでは、ルイ王子の独断で、サラス帝国との終結を決定したと思うし。


「ちょっと、今の無し! アンタ、よく見ると結構イケメンだし、私の男の1人にして上げるから!」


 アスカは、必死にアレキサンダー君に魅了を掛けようとするが、そもそもカララム王国学園の生徒は、全員、アスカ対策の状態異常無効の制服を着てるから無理な話。


「ちょっと! ヨナン・グラスホッパー! 私を助けなさい!同じ日本出身の同胞でしょ!」


 なんか、アスカがイキナリ訳の分かんない事を言い出した。

 というか、俺は、アスカと同胞だと言う事を、誰にも知られたくなかったりする。


 そして、気付いた時には、アスカをお姫様抱っこした状態で、窓を割り、そのまま学園の外に逃げていたのであった。

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