第159話 夏休み

 

 時は過ぎ、今は、夏休み真っ最中。


 結局、ナナが、野営訓練の活躍の褒美として貰った爵位は、俺が預かる事となった。


 ナナが、ずっと自分は、お義父さんの子供でありたいと固辞したから。


 ナナに、お兄ちゃんなのに、お義父さんとか言われてるのはショックだけど、慕われてるのは事実で、嬉しい反面、相当、悲しかったりする。

 俺は、早くナナに、お兄ちゃんと呼ばれるようになりたいのだ。


 そして、爵位の件なんだけど、伯爵以上の貴族は、今迄に貰った爵位を、家を継げない子供とかに讓渡する事が出来るらしく、ナナが得た準男爵の爵位を、養父である俺が預かる事となったのだ。


 因みに、俺が現在持ってる爵位は、今の爵位の伯爵と、子爵と、準男爵が2つの合計4つだったりする。


 これで、もし俺に子供が生まれたとしても、爵位が継げない次男、三男、四男までに、俺が持ってる爵位が譲る事が出来るらしい。


 まあ、準男爵については、四男より、ナナに優先権があるのだけど。


 爵位の話は置いとて、俺は現在、ナルナー神社の建設の為、1人で全国行脚中。


 これは、少しでも女神ナルナーの恩に報いる為。

 鑑定スキルの話だと、俺の為に、死に戻りスキルや、新たに鑑定スキルを作ってくれたらしいので、その御礼も込めて。


 俺は、受けた恩は、しっかりと返したいタイプなのである。


 まあ、これが女神ナルナーの為になるとは思わないけど。

 長時間、この世界に具現化出来るようになったとしても、ただ、この世界の美味しい食べ物を、食い漁るだけだと思うし。


 そして、ナナはと言うと、親友のサクラと、護衛としてエリスと、カイを伴って、俺の領地であるグラスホッパー伯爵領に行くらしい。


 ナナは、シスに呼ばれたのだとか。

 シスは、俺の妹なのだが、本当の俺の妹であるナナに会ってみたいのかもしれない。


 シス的には、俺と結婚する気満々なので、俺と結婚したら、ナナは、シスの義妹になるので、今の内から、仲良くなっておこうと思ったのだろう。


 それにしても、ナナの方が歳上なのに、シスが義姉になってしまうのは、おかしな感じである。しかも、2人とも俺の妹なのに。


 でもって、ナナの護衛対象であるココノエは、夏休み中は、九尾神宮で、現人神としてバイトするらしい。

 九尾神宮を実質経営してるビクトリア婆ちゃんから、結構、バイト料が出るという話だ。


 九尾神宮では、ココノエグッズが結構売っていて、現在、巫女服を着たココノエのぬいぐるみが、大ブームだとか。


 カララム王国学園の女生徒達も、鞄に、小さなストラップ型のココノエぬいぐるみを付けてる子を、結構見るし。


 やはり、ビクトリア婆ちゃんは、商売上手である。


 少しだけ獣人差別があるカララム王国でも、ココノエ人気のせいなのか、少しだけ獣人に対する差別が無くなってきてるという話だし、ココノエも、現人神になって感無量であろう。


 因みに、神聖アンガス王国も、九尾教の人気が出てきて、おかしな感じになってるとか。


 まあ、アンガス教の巫女である神聖アンガス王国の女王が、九尾教の現人神になってしまったのだ。

 国民も、本当に、何が何だか分からない状態かもしれない。


 元々、ココノエは、神聖アンガス王国で絶大な人気だったので、なんとかなるだろう。牛を崇める宗教から、狐を崇める宗教に変わっただけだから。


 獣人にとっては、同じ獣を崇める宗教なので、すんなり受けいれられちゃうのだ。

 九尾教に改宗すると、牛も食べれるようになるしね!


 まあ、牛を食べたい衝動に駆られて、ドンドン、アンガス神聖国の住民達が、九尾教に改宗していってるというのは、公然の秘密。


 どうやら、宗教より、食い意地の方が勝ったというのが本当のようだ。

 どっかの残念女神みたいにね。


『なんか、ご主人様って、休み中、工事ばかりしてますよね……』


 鑑定スキルが、作業してる俺のBGMのように話し掛けてくる。完全にラジオ替わりである。

 言うならば、ラジオを聴きながら、作業するような。


「しょうがねーだろ! 俺は学生だから、長期休み中しか、遠出して作業できねーんだから!」


『どんだけ、ワーカホリックなんですか?』


「俺も、グラスホッパー伯爵領や、グラスホッパー男爵領に里帰りしようと思ってたんだけど、ナナが行く事になっちゃったら、流石に行けんだろ!」


『まだ、勃起治らないんですか?あんだけナナさんの事ばかり見てるのに』


 鑑定スキルが、分かってる癖に聞いてくる。

 いつも一緒に居るから、分かってる筈なのに。


「もう、モニター越しや、遠く離れた場所からだったら流石に、ナナを見ても勃起しなくなったけど。5メートル以内に入ると、意識し過ぎて勃起しちゃうんだよ!」


『どんだけ、残念お兄ちゃんなんですか!

 あんなに、ナナさんに慕われてるというのに……』


「下手に慕われちゃってるから、余計に直接会えないんだろうがよ!

 俺だったら、慕ってる人が、勃起して現れたら、幻滅するし!」


『もう、面倒臭いから、サラス帝国を滅ぼしちゃったらいいんじゃないですか?

 聖剣ムラサメ一振で、済んじゃう話ですし、そうすれば、トップバリュー男爵を確実に殺せますし!』


 鑑定スキルが、恐ろしい事を言ってくる。

 基本、鑑定スキルは俺ファーストなので、俺と、俺が好きな人の事は守ろうと努力するが、それ以外の人達には冷たかったりするのだ。


「俺には、大量虐殺する勇気なんてねーよ!

 多分、そんな事してしまったら、トラウマになって夜眠れなくなると思うし」


『サラス帝国に潜入して、トップバリュー男爵のチ〇コを切るって、中々のミッションだと思いますよ。

 カララム王国とサラス帝国って、休戦中と言っても、いつ爆発するか分かんないぐらい、現在、緊迫状態ですから!

 サラス帝国に入国する事さえ、不可能な事なんですからね!』


「いっそうの事、戦争起きねーかな……そしたら、どさくさに紛れて、サラス帝国に侵入して、速攻で、トップバリュー男爵のチ〇コを斬り裂いてやんのに!」


 とか、夏休みの最中、鑑定スキルと話してた事が、まさかの結果になるとは……

 ナルナー神社を全国に建設し続けていたヨナンには、知る由もなかったのであった。

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