第119話 カレン登場

 

「ヨナン待たせたわね! 私達も、カララムダンジョンを完全攻略して来たわよ!」


 カレンが、ヨナンに、ドヤ顔で言い放つ。


「おっ……おお……」


 取り敢えず、おお。としか言えない。

 だって、俺的に、カララムダンジョンの70階層より上の階層では、魔物1匹とも戦ってないのだ。

 心情的には、カララムダンジョンを完全攻略した感触が、全くないんだよね……


「これで私も、ヨナンの横に並び立ったわね!」


 カレンは、鼻高々。相当、カララムダンジョンを完全攻略出来たのが嬉しかったのだろう。

 まあ、それでも聖剣ムラサメを持つ俺の敵じゃないんだけど。


「スゲー!どうやってアン姉ちゃん達、空中に浮いてるんだ!」


 ここで、コナンが、今更ながら、カレンや、アン姉ちゃんや、カトリーヌが空中に浮いてる事について指摘する。


 まあ、聖剣ムラサメを持って、スローモーションの中で生きてる俺には、普通に分かってるんだけど。

 どうやら、まだまだ未熟のコナンには分からないようだ。


「フフフフフ。凄いでしょ!」


 なんか、コナンの羨望の眼差しで見られ、ますますカレンは調子に乗ってしまったようだ。


 種明かしをしたら、何て事ないんだけど。

 むしろ、俺的には、格好悪いと思うんだけど。


 そう。カレン達は、空中で高速貧乏揺すりをしてるのだ。


 空気を超高速で、思いっきり蹴ってるだけ。

 鳥とか、羽を広げて羽ばたいて飛ぶでしょ。

 それを、面積の少ない足の裏だけで、やってのけているのだ。


 これも、身体強化Lv.3による、有り得ない程の力強い蹴りと、その有り得ない猛スピードの貧乏揺すりに耐えれる、強靭な体の強さにより、為せる技。


 まあ、イーグル辺境伯の血筋の身体強化Lv.3を持ってる、カレンと、アン姉ちゃんと、カトリーヌにしか出来ない、ただの脳筋の力技なんだけどね。


 コナンの目には、あまりに高速過ぎて、普通に空中に立ってるように見えるかもしれないが、俺には、必死に空中で足踏みしてるように見えている。


 多分、今現在、相当必死に足踏みしてるんだろう。1歩、1歩、強靭な蹴りで空中を移動するより、その場に留まる方が、相当大変と思われる。普通に海でクロールで泳ぐより、立ち泳ぎの方が沈みやすいように。


 だって、徐々に高度が落ちてきてるもん。


 なんか、ドヤ顔でいるが、顔に疲れが見えて来てるし。


「スゲーぜ!カレン姉ちゃん!」


 コナンが、物凄く褒めるものだから、カレンは調子に乗って、長めに空に浮いてるのだろう。

 爺ちゃんのイーグル辺境伯と同じで、カレンは、褒められるのが大好きなのだ。


 だって、イーグル辺境伯のお城に、強そうな魔物の剥製が、たくさん飾られているのは、多分、訪れた客に、「凄いですね! これ、イーグル辺境伯様が、全て狩ったんですか?」と、褒めて欲しいから。


 爺ちゃん子のカレンは、それを真似して、やたらと自分が倒した魔物を、魔法の鞄に入れずに、見せびらかすように、いつも引きずって移動する。

 今回も、わざわざカララムダンジョンの上層で狩った魔物を、皆に褒めて欲しくて剣術祭の会場でばらまいたのだ。


「ねえねえ! カレン姉ちゃん、どうやって飛んでるの!」


 そんな、見栄っ張りのカレンに、コナンが、目をキラキラさせて質問する。


 多分、カレン的には、もう限界だというのに、コナンも罪な子供である。


『コナン君。アレは、ただ、空中で貧乏揺すりしてるだけの力技ですよ!』


 ここで見兼ねた鑑定スキルが、コナンに、種明かしをしてしまう。

 だって、カレン、尋常じゃない汗をかいてるし。


「ええ~貧乏揺すりするだけで、空って飛べるの!」


 コナンは、相当、驚いている。

 まあ、身体強化Lv.3を持ってる人だけが出来る力技なんだけど。


「ちょっと、やってみようかな?」


 そんな軽い感じで、コナンは、その場で超高速貧乏揺すりをする。

 すると、どうだろう。ホバリングを越えて、徐々に浮き始めた。


「やってみたら、簡単に出来た!」


 これには、カレンと、アン姉ちゃんと、カトリーヌも驚愕してる。

 だって、カレン達は、その場で留まるホバリングする事がやっとなのだ。


 流石に貧乏揺すりするだけでは、空中に浮き上がらない。


 カレン達が空中に居るのも、空気を1歩1歩強く蹴って、そこまで移動したのだ。


 それなのに、コナンときたら、貧乏揺すりだけで空中に浮いてしまった。


『どうやら、みじん切りスキルLv.3は、身体強化Lv.3の発展系スキルで間違い無いですね! 身体強化Lv.3のスピード特化型とでも言いましょうか。

 平民で、みじん切りスキルLv.1を持ってる人は、結構居ますが、みじん切りスキルLv.3は、この世に、コナン君ただ1人しか居ません!

 これは、みじん切りスキルLv.3のスピードに、誰も体が耐えれないから。身体強化Lv.3を持ってる事前提で、生えるスキルで間違いないですね!』


 鑑定スキルが興奮気味に、鑑定スキルっぽく解析する。

 というか、鑑定スキルの癖に、今まで分からなかったのか?


「あの? ご主人様、いつも言ってるように、僕のデータベースに入ってる情報しか、僕にも分かんないんです!

 今迄、コナン君以外に、みじん切りスキルLv.3を持ってた人が居なかった訳ですから、僕のデータベースに乗ってる訳ないでしょ!」


 鑑定スキルは、勝手に俺の頭の中を読んで怒ってくる。

 俺、言葉に出してないんだけど……。


「ヨナン兄ちゃん! 見て見て!」


 でもって、コナンは、猛スピードで空中を蹴って自由に走り回ってる。完全に、ことスピードに関しては、カレンより上を行ってしまっている。


 兎に角、俺の可愛い弟のコナンが、凄いという事だけは分かった。


 そして、逆に、カレンが悲しい顔をして、剣術祭の会場の1つに下りたったのは、見なかった事にした。

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