第97話 レッドドラゴン再び

 

「キャアアアアアーー!!」


 世界樹の方に、先に1人で走り出していったリサリサの断末魔が聞こえてくる。


「なんか、不味いんじゃないのか?」


「多分、大丈夫。念話で既に仲間に伝えてある」


 俺の問い掛けにエリスが答える。


「だけど、心配だよな!」


 俺は急いで、リサリサの断末魔が聞こえた方に向かう。


「てっ?!」


 そして暫く走ると、突然森が開け、そこにはなんと、気絶して口から泡を吹いてるリサリサと、尻尾が切れた巨大なレッドドラゴンがそこに居た。


『ご主人様! あのレッドドラゴン、尻尾が無いですよ! しかも、ご主人様の鞄の中にあるレッドドラゴンの尻尾と、同一のレッドドラゴンで間違いありません!』


 鑑定スキルが、知りたくもない情報を俺に知らせてくる。


「だな。生きてたのかよ……」


『ご主人様! 早く戦闘準備をして下さい!確実に倒すには、聖剣ムラサメが必要ですよ!』


 鑑定スキルが、相手の力量を測って、的確な指示を出してくる。


「おお! 分かってるって!」


 ヨナンは急いで、魔法の鞄の中から聖剣ムラサメを取り出す。


 すると、


「チョチョチョチョチョ! 誤解だ! 我は、貴様と戦う気などコレっぽっちもない!

 ただ、エリスに言われて、お前達を迎えに来ただけだ!

 そして、このハーフリングは、我を目の前にして勝手に気絶しただけじゃ!」


 レッドドラゴンは、聖剣ムラサメを見て、慌てて言い訳をする。

 どうやら、ヨナンが持ってる聖剣ムラサメの恐ろしさを身をもって知ってるようである。


 そしてエリスが、ヨナンに遅れる事、3分程経って現れる。


「エリス、早く、この者に説明して、あの聖剣を仕舞わせろ!」


 レッドドラゴンは、やはり聖剣ムラサメにビビってるようだ。

 というか、レッドドラゴンとエリスは知り合い?


「少し、尻尾が伸びてきたようですね?これなら後、2、3年もしたら元通りですよ」


「そんな事どうでもいいから、この女神ナルナー様のお気に入りをなんとかしろ!」


 レッドドラゴンは、エリスに逆ギレする。


「あっ、主様。この蜥蜴は、世界樹の護り手のレッドドラゴンです。

 そしてレッドドラゴンの仕事は、間違ってここまでやって来た者を殺す役目をしてます」


 もう少しオブラートに包んで話てもいいと思うが、ボキャブラリーが乏しいエリスには無理か……。

 多分、子供の時に見た事がある、大森林を捜索する為に来たカララム王国の探索隊も、このレッドドラゴンに食べられているのだろう。


「エリス! 蜥蜴とか言うな! そしてもっと、言葉を覚えろ! 我は世界樹の護り手!

 大森林を近づく者は、誰であっても容赦せん!」


「やっぱり、俺は来ちゃいけなかったのか?」


「どうぞ!どうぞ!女神ナルナー様のお気に入りを止める権利など、我にはございませんので!」


 ヨナンの言葉に、レッドドラゴンは、冷や汗を垂らしながら慌てて答える。

 というか、レッドドラゴンは相当、ヨナンに恐れを成している。まあ、ヨナンと言うより聖剣ムラサメにビビってるだけと思うけど。


「本当に、このレッドドラゴンって強いのか?」


 あまりに腰が低いレッドドラゴンに、ヨナンは疑問を抱き、鑑定スキルに質問する。


『強いですよ。多分、ご主人様の次ぐらいに強いですね。なにせ世界樹の護り手ですので』


 名前: レッドドラゴン

 種族: 龍

 称号: 世界樹の護り手 調停者

 スキル: 火魔法Lv.10、雷魔法Lv.10、風魔法Lv.10、重量魔法Lv.5、転移魔法、ファイアーブレス、咆哮、etc……

 力: 9999

 HP: 9999

 MP: 9999


 鑑定スキルが、レッドドラゴンのステータスを見せてくれる。


「力とかHPとか、全て9999でカンストしてるじゃねーかよ! それなのに聖剣ムラサメが怖いのか?」


『ご主人様、気付いてます? 聖剣ムラサメって、限界突破してるんですよ。

 因みにこれが、前にも見せましたが、聖剣ムラサメのステータスです』


 聖剣ムラサメ

 属性: 雷、火、風、氷

 スキル: 斬撃波、雷撃、炎剣、氷剣、自己修復、HP自動回復、MP自動回復、魔法攻撃無効、所有者の攻撃力3倍、防御力3倍、素早さ3倍、即死系攻撃1回無効

 攻撃力: 10000

 耐久力: 50000


「攻撃力10000、で、耐久力50000?」


『ハイ。普通は9999でカンストですね。9999と10000の違いは、たった1ですけど、雲泥の違いがあるんです。因みに、レッドドラゴンを殺せるのは、この世でご主人様だけですので、あのようにいつも尊大なレッドドラゴンが、ご主人様にビビってるんですよ!』


 何故か、俺の事なのに、鑑定スキルが自慢げに話す。


「あの腰が低いレッドドラゴンって、いつもは尊大なのか?

 というか、攻撃力が10000で、耐久力まで50000って、限界突破し過ぎだろ!」


『ですね。絶対に壊せれませんね! しかも自己修復スキルまで備わってますから、この世から消滅させる事も出来ません。

 まあ、耐久力50000の聖剣に、自己修復スキルが必要かどうかは分かりませんけど……』


「俺が作った聖剣ムラサメって、本当に凄かったんだな……」


『ですね。ご主人様の場合、適当に作っても物凄い性能になるのに、聖剣ムラサメの場合は、暗殺者から逃れる為に、ご主人様が死ぬ気で作った聖剣なので、トンデモない聖剣になってしまったんですよ!

 多分、この聖剣ムラサメを手にした者は、世界征服出来ちゃいますね!』


「俺、世界征服する気なんか更々ないけど?」


『まあ、その気になれば、簡単にやれるという話です』


 鑑定スキルは、事も無げに答えた。

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