3章 カララム王国学園編
第71話 カララム王国学園編スタート
カララム王国学園は、カララム王都中央にある王城の北隣にある学園である。
貴族は、入学を義務付けられ、一応、一般庶民にも門戸を開いてるが、入学金が高過ぎる事と、寮生活が基本なので、よっぽどの金持ちしか入れない。
まあ、そんなカララム王国学園でも抜け道があり、一般庶民でも、攻撃スキルとか良いスキルを持ってれば、特待生として入学出来ちゃったりする。
そう。貴族はレアスキルに飢えてるのである。
レアスキルを貴族の血に取り込めれば、その家は繁栄するし、庶民も、貴族の妻や養子になれてウィンウィン。
まあ、カララム王国学園は、そんな貴族とレアスキル持ち庶民の出会いの場だったりする側面もあるのだ。
話によると、エドソンとエリザベスもこの学園で出会ったらしい。
ーーー
『ついに、入学式ですね!』
カララム王国の正門に向かうヨナンに、鑑定スキルが話し掛けてくる。
「だな」
『確か、グリズリー公爵家のカトリーヌさんも、ご主人様と同い年ですから、今年入学でしたよね?』
「だったな。あまり係わりないから気にしてなかったけど、確か、カララム王国の王子と婚約してたんだっけ?」
『ですね! カララム王国第1王子のルイ・カララム15歳と婚約してます!』
「15歳という事は、俺の1つ上で、アン姉ちゃんと同じ2年生か?」
『そうなりますね』
「ん?もしかして、他に王族って、学園に居ないか?」
『ルイ王子だけですよ?』
「そいつは、不味いな……」
日本の知識が、完全に頭に定着したヨナンは、気付いてしまう。
『何が不味いんですか?』
「アスカは異世界転生者で、魅了スキル持ち、しかも庶出の子で、トップバリュー男爵家には、実の母親が死んでから引き取られてる。そして、トップバリュー男爵家は成り上がりの家で、黒い噂まであるんだぞ!」
ヨナンは、アスカの経歴を羅列する。
『それがどうしたんですか?ただのアスカの経歴ですよね?』
「魅了スキル持ちで、庶子の男爵令嬢と言ったら、ズバリ!」
「成程、乙女ゲームの主人公ですね!」
鑑定スキルが、答えを言い当てる。
まあ、異世界転生者、男爵令嬢、庶子、魅了スキル、実家の男爵家に黒い噂があると続いたら、それは即ち、乙女ゲームの主人公に転生した敵キャラの女で間違い無い。
「俺は、乙女ゲームやった事ないけど、ラノベの悪役令嬢ものでいう前世の知識で暗躍する悪者の方な!」
『では、悪役令嬢役は、公爵令嬢のカトリーヌさんですか?!』
「間違いなく、カトリーヌだな。王子の婚約者だし、確実に、プロムパーティーで断罪されちゃうな……」
『じゃあ、カトリーヌさんを、アスカから救わないと!』
「う~ん……どうだろう? 大丈夫じゃないか?
基本、アスカの魅了スキルで、乙女ゲームの攻略対象がメロメロになっちゃうんだろ?
俺が、アスカの魅了に、引っ掛かった時みたいに」
『あっ! ご主人様、既に、アスカの魅了対策は終わってましたね!』
そう。ヨナンは危険過ぎるアスカの魅了スキル対策の為、カララム王国学園にグラスホッパー商会が開発したメチャクチャ可愛くて、メチャクチャ格好良い、しかも状態異常無効機能まで付けた制服を売り込み、そして採用させていたのだ。
寄付金たくさん払うとか言ってね。まあ、100%金の力なんだけど。
「そうだ! カララム王国学園の制服を着てる奴は、アスカの魅了が一切掛からないのだ!」
ヨナンは、ドヤ顔で、エッヘンする。
『流石です! ご主人様! いつの間にか、カトリーヌさんまで、助けてたんですね!』
鑑定スキルも、ヨナンのヨイショを忘れない。
「まあ、だけれども、アスカはしっかり見張っとかないといけないよな!」
『ご主人様、それについても対策済みでしょ!』
そう。ヨナンは、カララム学園入学前の有り余ってた時間、地下宮殿を作るついでに、夜間にカララム王国学園に忍び込み、学園中に高性能なカメラを仕掛けておいたのである。
これも、全て、アスカにザマーする為。
既に、アスカが入所予定の女子寮にまで、監視カメラを設置してたりする。
そして、その映像は、全て、ヨナンの少し大きめな地下の部屋の、100台近くあるモニターで見る事が出来るのだ!
「フフフフフ。これも全て、アスカにザマーする為。アスカの悪巧みも、これで全て丸裸!」
『確かに、アスカの丸裸も見えちゃいますね!』
「俺は、アスカの裸なんか興味ないからな!ただ、情報は力なんだよ!
俺は決して、にっくきアスカをオカズにする事はないと誓う!」
てな感じで、鑑定スキルとお喋りしながら歩いてると、いつの間にか、カララム王国学園の正門前に到着していた。
正門前には、次々に貴族の馬車が到着し、カララム王国学園に入学する貴族の子弟子女が降りてくる。
そして、丁度、グリズリー公爵家の馬車が正門に到着して、中からカトリーヌが出て来た。
そして、直ぐに、カトリーヌはヨナンの存在に気付いたのか、ヨナンに近付いてくる。
まあ、血は繋がってないけど、一応、従兄妹なので当然なんだけど。
「おはようございます。ヨナン君。今日から同級生ですね」
「ああ」
でもって、これがカトリーヌのステータス。
一々言わなくても、鑑定スキルが出してくれるのだ。
名前: カトリーヌ・グリズリー
年齢: 14歳
称号: 悪役令嬢 聖女
スキル: 剣術Lv.1
ユニークスキル: 身体強化Lv.3、治癒魔法Lv.2
力: 450
HP: 400
MP: 1200
なんか、カトリーヌが乙女ゲームの悪役令嬢だと気付いたら、いつの間にか、称号に悪役令嬢が追加されていた。ついでに聖女も。
まあ、よく考えたら血統的には、聖女になってもおかしくない。
グラスホッパー家も、次女のシスは、殴り僧侶とかいう珍しいスキルをもってるし、三男のトロワは、癒し手のスキルを持ってる。
どうやら、グリズリー公爵家の血筋は、身体強化以外にも、回復系のスキル持ちを多く輩出する家系で、それがグラスホッパー家にも受け継がれているのだろう。
『ご主人様。これで決定ですね。ステータスにも、悪役令嬢と書き加えられました!』
鑑定スキルが、ヨナンにだけ念話で伝えてくる。
相変わらずのウキ○ディア的加筆能力。
本当に、鑑定スキルのデーターベースはどうなってるのだろう。日々肥大化し進化してるのは確実だ。
暫くしたら、鑑定スキルLv.4になってしまうかもしれない。
でもって、折角会ったので、カトリーヌと一緒に正門をくぐる。従兄妹だし。
すると、そこには、
「やあ! カトリーヌ! 入学おめでとう!」
カララム王国第1王子ルイ・カララムが、カトリーヌを待ち受けていたのであった。
「ルイ様。ありがとうございます」
カトリーヌは、顔を赤らめ、恥ずかしそうな顔をして頭を下げる。
そこに、なんの脈絡もなく、突然、アスカ・トップバリューが訪れて、ルイ王子の前に、わざとらしくハンカチを落とす。
「アッ! 君、ハンカチを落としたよ!」
ルイ王子がハンカチに気付き、アスカに声をかける。
『アッ!今、アスカが、ルイ王子に魅了スキルを使いましたよ!』
一々、鑑定スキルが解説してくる。
そして、声かけられたアスカは、何故か、ハンカチを拾おうとして、ピタッと、止まっている。
『多分、これは乙女ゲームのイベントですね。
本来なら、ルイ王子も一緒にハンカチを拾おうとして、手と手が触れて何かが始まる感じじゃないですか?』
「ああ。本来なら、アスカの魅了効果で、一瞬にして、ルイ王子がメロメロになる所で間違いない。
だけれども、完全にルイ王子に魅了が効いてないみたいだな!」
どうやら、カララム王国学園の最新制服の状態異常無効の効果が、存分に発揮されてるようである。
「ん? どうしたの? 早く拾えば?」
ルイ王子は、アスカの気も知らないで、上から目線でトドメを刺してくる。
「オイ! 早く拾えよ! そんな所で止まってたら、迷惑だろうがよ!」
ヨナンも、ここぞとばかりに、アスカに暴言を吐く。
ヨナンは、アスカに奴隷にされた日々を一生忘れないのだ。
毎日、殴る蹴る、足の指の間を舐めされられて、キショ男と罵られた日々を絶対に忘れる事などできない。
「何止まってんだ? パントマイムでもやってんのかよ!」
ヨナンは続け様に、アスカに口撃する。
『ご主人様……上手いこと言ったと思ってるかもしれませんが、ハッキリ言って、全然上手くないですからね! というか、意味分かんないですから!』
そんな、ヨナンの暴言に、アスカは振り返り、ヨナンの顔を見て、キッ!と睨みつけてきた。
そして、ハンカチをそのまま拾うと、ヨナンの方にスタスタ歩いて来て、すれ違いざまに、
「アンタ、覚えときなさい」
と、ヨナンにだけに聞こえる声で、威嚇してきたのであった。
ーーー
カララム王国学園編始まりです。
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