第70話 一夜城

 

 地上の家を建てたら、お祝いやら、なんやら、なんかひっきりなしに人が訪ねてくるようになり、全く、地下工事が進まなくなってしまって、頭を悩ませたヨナンは、グラスホッパー商会カララム王都店に居るエリザベスに相談してみる事にする。


「グラスホッパー準男爵が、王都に立派な家を一夜で建てたって、王都中で話題になってるわよ!」


 エリザベスが教えくれる。


「なるほど……それで、訪問客以外にも、やたらと家の周りに人が居たのか……」


 そう。現在、ヨナンの家は、ハリウッドセレブの家みたいに、観光名所みたいになってしまっていたのだ。


『ご主人様が、凝りすぎて、夜間のライトアップとか豪華にしちゃうからですよ!

 というか、完全にオシャレなデートスポットになっちゃってますし!』


「俺的に、適当にやっただけなんだけど……」


『だから、ご主人様は、鼻糞ほじりながら、そして、お尻をかきながら適当にやればいいんですって!

 少しでも本気を出すと、とんでもない物が出来上がっちゃうんですから!』


「でもな……一応、俺が住む家だし、ある程度は真面目に建てちゃうだろ?」


『それでもです! 次からは、爪楊枝で家を建てて下さい!』


「爪楊枝は、流石に無理だろ!」


『いや、できますよ』


 鑑定スキルが、真顔で答える。

 まあ、スキルなので顔などないんだけど。


「取り敢えず、屋敷を管理する人が必要という事よね?

 なら、セバスチャンに来て貰いましょう!

 確か今は、王都から3時間程の街にある支店に居るはずだか、今から使いを出せば、今日中には来てくれる筈よ!」


 エリザベスが提案する。


「エッ? セバスチャンさんって、商会の仕事は大丈夫なのか?」


 ちょっとだけ、ヨナンは心配する。


「大丈夫よ! セバスチャンの教え子は、みんな優秀だから、実際、もう、教え子に任せて、セバスチャン自身の仕事は何も無いんだから!」


「グラスホッパー商会って、本当、どうなってんだよ?」


「ここまで来れば、私達が何もしなくても商会は回っていくわ!

 後は、進む道筋を示すだけね!」


 なんかもう、グラスホッパー商会は、ヨナンの財布を満たすだけのマシーンになっているようだ。何もしなくて、金が稼げるって最高!


 てな感じで、セバスチャンさんがその日のうちに来てくれ、足りないメイドとかは、ビクトリア婆ちゃんに頼んで、暫くの間、グリズリー公爵家から借りる事となった。


 取り敢えず、これで地上の家の方は大丈夫だろう。

 これで心置き無く、地下の家の方の建築に集中できる。


 そして、ヨナンは、カララム王国学園入学の春になるまでの間、カララム王国学園の真下に、地下5階まである巨大地下宮殿を作ってしまったのであった。


『ご主人様……やっちゃいましたね……』


「ああ。今回は、アスカに騙されて、トップバリュー男爵家の領都を建築させられた時より本気を出してやったぜ!」


『これ、完全にシェルターにもなりますよね……』


「ああ。地下宮殿全体を、アダマンタイトミスリル合金で覆ってやったからな!

 核爆弾を落とされても、ビクともしないぜ!

 しかも、防音もバッチリで、幾ら騒いでも、絶対に音は地上に漏れない」


『というか、こんな巨大な地下宮殿、必要だったんですか? 貴重な鉱石やら宝石やら散りばめて、凝りに凝って、過度な彫刻やら、絵画やら、超絶技巧で織った絨毯やら、もう滅茶苦茶ですよ!』


「なんせ、カララム王国学園の敷地の地下5階分だからな!

 その場で思いついたものを、ひたすら作っただけだ!」


『お風呂だけでも、20箇所も作っちゃったでしょ!』


「ヤッパリ、前世は日本人だからな! 風呂は大事だろ!」


『だからって!限度があります!』


「お前も、止めなかっただろうが!」


『あんなにも楽しそうに作ってたら、流石に止めれませんよ!』


「まあ、だけど使う場所は、多分、ほんのちょっとだけになるんだよな……」


 そう。家がいくらデカくても、結局は、使う場所などたかが知れてるのである。


『ですね……多分、ご主人様が入寮予定の部屋の真下にある、少し大き目な部屋を使うんですよね……』


「ああ。一部屋に、キングサイズのベッドと、まあまあ巨大なジャグジー風呂がある部屋な!しかも、完全空調で、いつでも快適な温度を維持して、冬でも半袖で過ごせるんだぜ!」


『最初から、その部屋だけ作れば良かったんじゃないですか?』


「しょーがねーだろ!チョー暇だったから……。やる事無さ過ぎて暇を持て余してたんだよ!」


『だけれども、明日からカララム王国学園が始まりますよ!』


「だな! あれ程、学校行きたくなかったのに、こんだけ暇だと、学校に行きたくなっちゃうって不思議だよな!」


 そう。今現在、ヨナンは、とてもカララム王国学園に入学するのが楽しみなのである。


『ご主人様、短期間で突っ走り過ぎたんですよ!

 なので、ちょっとやそっとの刺激じゃ物足りないくなってたんですね!

 だって、1年のうちに、死んじゃったり、人も、1人殺しちゃってますもんね!』


 鑑定スキルが、記憶の悪いとこ取りをする。

 もっと、楽しい記憶や、凄い偉業を成し遂げた記憶を選択してほしい。

 レッドドラゴン倒したとか、グラスホッパー商会を立ち上げたとか、開拓不可能と思われた大森林を開拓したとか、他にもたくさんあるのに……。


「人を殺したのは、不可抗力だ! 殺されそうになれば、普通対処するだろ!」


『まあ、兎に角、これから学校が始まりますんで、楽しんで下さい!

 元婚約者のアスカ・トップバリュー男爵令嬢とも再会できますしね!』


 鑑定スキルが、なんか、全てが満たされてしまっていたヨナンに、成すべき事を思い出させてくれる。


「ああ。これからが本番だ。アスカには、俺が味わった以上の地獄を見せてやんよ!」


ーーー


 ここまで読んで下さりありがとうございます。なんとか、2章が終わる事ができました。次は、やっと、アスカへのザマーの舞台である学園編になります。

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