第38話 グラスホッパー商会カナワン支店

 

「ヨナン君!想像以上よ! こんなに立派な正門になったのなら、カナワン伯爵も喜ぶこと間違い無しね!

 既に、城門周辺の華やかさなら、この辺りで一番栄えてると言われている、トップバリュー男爵領の領都より完全に上を言ってるわよ!」


 何か、エリザベスが興奮してる。

 一つ一つ、新たに建てた施設を見て、何やらメモを取ったり、計算したりしている。


「これは、募集を掛けた従業員の数じゃ全然足りないわね……今から、他の周辺の街や村にも、従業員の募集のチラシを配りに行くわよ!」


「えっ! 今から行くのかよ!」


「あら? 駄目かしら?」


 どうやらエリザベスは、ヨナン以上にワーカホリックの公爵令嬢であるようだった。


 なんかよく分からんが、グラスホッパー家の人間は、みんな働き者である。

 エリザベスもそうだし、コナンもシスも、仕事をする事を全く苦としていない。

 まあ、今まで貧乏だったので、金にガメツイだけかもしれないけど。


 兎に角、働くのだ。もう、ブラック企業も真っ青な程に。まあ、勝手に働くんだから、俺も強く言わないけど。

 だって、エリザベスも、コナンも、シスも1日1万マーブルで、残業代も払わずに働いてくれるので、メッチャお得だし!


 まあ、グラスホッパー家は、何もしなくても、グラスホッパー商会と作物の独占販売権を結んで、勝手にお金を稼げる仕組みを作っちゃってるから、そんなにお金など要らないのかもしれないけどね!


 てな感じで、今日は、暗くなるまで、カナワン城塞都市の周辺の街に、従業員募集のチラシを配りまくり、そのままグラスホッパー領には帰らずに、新たにカナワン城塞都市に作った高級ホテルの泊まり心地を確認したのだった。


 ーーー


「凄いわね! このホテルは。こんな豪華なホテルなんて、王都にも無いわよ!」


 なんか、エリザベスは御満悦である。


「だけれども、こんな高級ホテルだと、従業員のマナーとかも完璧にしないといけないわね……」


 なんか、エリザベスがブツブツ言っている。


「今日は、どうするんだ?」


 ヨナンは、一応、エリザベスに確認する。


「私と、コナンと、シスは、カナワン支店で、在庫の公爵芋の石焼き芋とスゥイートポテトの販売。

 ヨナン君は、一度、本店に戻って、グラスホッパー商会の流通本部長をやってるナスさんに、計画通り、毎日、本店とカナワン支店を結ぶ定期便を始めるようにと、指示出して頂戴!」


 何か、エリザベスが、流通本部長とか聞きなれない言葉を発する。


「何それ? 流通本部長? そんな役職、いつのまにグラスホッパー商会にあったんだ?」


「あら?言ってなかった? ヨナン君が商会長兼、生産部長。そして、私がグラスホッパー商会の番頭で、企画部部長。そして、コナンとシスが、グラスホッパー商会専務で、販売部の部長よ!」


「そんなのいつ決めたんだよ!」


「いつだったかしら? 多分、私が初めてカナワン城塞都市で、公爵焼き芋を売った時ね。あの時、ヨナン君寝てたから、私と、鑑定ちゃんと、コナンと、シスで会議して決めちゃったの!

 適材適所に、しっかり、人事できてるでしょ!」


「確かに出来てるけど……」


 ヨナンは、自分だけハブられた気がして気分が悪い。


『ご主人様、適材適所ですよ! ご主人様が苦手な事は、みんな家族に丸投げしちゃえばいいんですよ!

 僕から見ても、グラスホッパー家の皆さんは、働き者だし、みんな良い人ばかりですから!』


「そうよ! ヨナン君は、商会長なんだから、デン!と、構えてたらいいのよ!

 私が貴族のコネを使いまくって、グラスホッパー商会を、王国一の、大商会にしてあげるから!

 それに、ヨナン君は、トップバリュー商会にザマーするんでしょ!

 鑑定スキルちゃんに、全部聞いたわよ!

 私も、鑑定スキルちゃんの話を聞いて、凄くトップバリュー男爵家に頭に来てるのよね。私の愛する夫と、子供達を戦争で殺したなんて、どうやっても到底許せる事じゃないから……」


 なんかどうやら、相当、エリザベスもトップバリュー男爵家に怒っている。

 多分、それが、今のエリザベスの原動力なのだろう。

 だって、エリザベスの仕事ぶりも、ちょっと常軌を逸してるし……。


「私も、トップバリュー男爵家のアスカは、絶対に許さないよ!

 私の大好きなお兄ちゃんを弄んだんだから!」


「俺も、許さない! 絶対に、父さんと、兄ちゃん達の仇をとって、ザマーしてやるんだ!」


 ヨナンによるトップバリュー男爵家への復讐計画は、鑑定スキルのチクリにより、どうやら知らないうちに、グラスホッパー家全体の復讐計画にすり替わってたようだった。

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