第37話 城壁拡張工事

 

 夕方になると、エリザベスとコナンとシスが、カナワン城塞都市から帰ってきた。


「あらあらあら。倉庫も、スゥイートポテト生産工場も、荷馬車も出来てるわね!

 ん?これが新しいグラスホッパー商会の紋章?今までより、高級感があっていいわね!」


 エリザベスは、帰ってくるなり、ヨナンを褒める。完全に飴と鞭である。


「それから、コレもな」


 ヨナンは、まるまるティファ〇ー丸パクリのスゥイートポテト用の箱を見せる。


「エクセレント! この箱なら貴族もこぞって買うわよ!」


 まあ、元公爵令嬢のエリザベスがそう言えば、売れるのであろう。


「で?そっちはどうなったんだよ!」


「一等地のある程度の大きさの土地は、どこも空いてなかったわ。

 なので、カナワン伯爵と交渉して、城塞都市の正門辺りを少し拡張して、そこにグラスホッパー商会を建てる事を了解させたわ!」


「嘘だろ……」


「ヨナン君なら、簡単に城塞都市の拡張ぐらい出来るでしょ!

 鑑定スキルちゃんに、ヨナン君が死に戻り前に、巨大な城塞都市を1人で作った経験があると聞いてたので、引き出せた交渉結果よ!」


「お前、死に戻りの事も話したのかよ!」


 ヨナンは、鑑定スキルに問い詰める。


『はい。もうエリザベスさんとは一蓮托生なので!

 それから、僕は、ヨナンさんについて聞かれた事を答えただけです!

 だって僕って、鑑定スキルだから嘘言えないんですよね……』


 鑑定スキルは、少し反省したのか、ションボリとした。

 多分、俺の事を、エリザベスに根掘り葉掘り聞かれたのであろう。


「まあ、言っちゃった事はしょうがないけど、もう誰にも言うなよ! 勿論、エドソンにも!

 エドソンは、ちょっとした事を気にする、優し過ぎる人だからな!」


『わかりました。もう誰にも喋りません』


 鑑定スキルは、ヨナンに誓う。


「で、従業員の募集の件は?」


「それは、1週間後に、グラスホッパー商会カナワン支店で、面接を行う予定よ!」


 エリザベスが、万事OKとヨナンに伝える。


「面接行う予定って、まだ、カナワン支店出来てないだろうがよ!」


「なので、明日から工事お願いね!

 もう、いつから工事始めてもいいように、カナワン伯爵からの許可は取り付けてるから!」


「嘘だろ! 俺、ちょっと、大森林掘ってくるわ!

 城壁拡張するなら、石やらコンクリートやら、まるで材料足りないし!」


 そんな感じで、ヨナンは仕事が終わった後だというのに、また、一仕事する羽目になってしまったのだった。


 ーーー


 そして夜のうちに、また、カナワン城塞都市に向かう。行きは移動中にヨナンとコナンとシスが睡眠をとり、エリザベスに荷馬車の運転をお願いする。

 そして、カナワン城塞都市に着くと、今度はエリザベスが仮眠を取り、コナンとシスが、石焼き芋と新商品スゥイートポテトの販売。

 そして、ヨナンが、グラスホッパー商会カナワン支店作りと、役割分担である。


 まず初めに、顔見知りの門兵に工事の挨拶と、新商品のスゥイートポテトを、賄賂として渡す。


「ああ。工事するんだったよな! 伯爵様に聞いてるよ!

 それにしても、あのやり手のお嬢さん。行方不明だったグリズリー公爵のとこのお嬢様だったんだな。カナワン伯爵から、くれぐれもも丁重に扱えと言われてるんで、何でも困った事があったら言ってくれよ!」


 元々愛想が良かった門兵が、もっと愛想が良くなっていた。やはり、公爵令嬢の威光は改めて凄いものだとヨナンは感じたのだった。


 それは置いといて、ヨナンはスグに工事を始める。

 なにせ、グラスホッパー商会の従業員募集の面接は、後6日後なのである。時間はあってないようなもの。


 取り敢えず、正門から200メートルぐらい離れた所の城壁を取り壊して、新たに門を作り、そこを臨時の正門として使ってもらう事とした。


「ちょっと、どうなってんだよ!

 つい、5分前に、あんな所に門なんて無かったぞ!」


 顔見知りの門兵が驚愕してる。


 ちょっと説明に困ったヨナンは、取り敢えず、


「エリザベス公爵令嬢の身内なので、グラスホッパー騎士爵位の人間は、みんなスペシャルなスキルを持ってるんですよね!」


 と、ヨナンは、適当な理由を付けて誤魔化しといた。


「成程、貴族でも公爵レベルのスキルになると、物凄いんだな……」


 何故か、門兵達は簡単に納得してくれたのだった。なんかチョロいん。


 そんな感じで、正門をぶっ壊し、まず城壁の拡張工事を始める。

 というか、コレって、どこまで大きくしていいんだ?

 大きくした分、グラスホッパー商会が土地を貰えるって話だったよな……


 そう。エリザベスは、城塞都市を拡張して上げる代わりに、土地の所有権を貰えるという契約を、カナワン伯爵から取り付けていたのである。


 ヨナンは、取り敢えず、適当に城壁を拡張する。

 まあ、一応、常識な範囲で、1000坪ほど。


 そして、前よりゴージャスで、荘厳な正門を作り上げると、続けて、正門入ってすぐの、商売する上で打って付けの土地に、これまた荘厳なグラスホッパー商会カナワン支店を作ってしまう。


 まだ、土地有るな……一等地だし、宿と酒場作ったら儲かるかも……。


 ついでにノリで、高級ホテルと、高級レストランを作ってしまう。


 これだと、俺のような庶民は入りにくいよな。


 てなワケで、リーズナブルな宿と食事処も幾つか建ててしまった。他に居るのは、荷馬車置き場とか、旅の汚れを落とす温泉設備とか、お土産屋とかか?


 取り敢えず、その辺の所を、半日掛けて全部作って、


「あの、工事終わったので、新しい正門の方を使って下さい!」


 門兵に工事の終わりを報告する。


「えっ! もう終わったのか!?」


 流石に、門兵も驚いている。


「ええ。一応、公爵家の血筋なんで!」


「流石だな公爵家は!」


 公爵家、メッチャ便利!

 ヨナンは何でも困ったら、これからはスグに公爵家の名前を出しちゃおうと思ったのだった。


ーーー


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