第27話 話し合い

 

「オイ! お前ら何者だ!」


 ヨナンは、2人の不審者に問いただす。


「我々は怪しい者ではない! カナワン伯爵様の使いの者だ!」


「何で、使いの者が、こそこそ俺らを嗅ぎ回ってんだよ?

 伯爵の使いの者なら、自分達の身分を明かして、普通に話し掛けてくればいいだけだろ!」


 ヨナンは、メチャクチャ警戒する。貴族なんてロクな奴らじゃないのだ。

 トップバリュー男爵で、散々懲りてるし。


「あの、私達は君達の力量を測ってたのだ。済まない」


「力量を測るって、俺達まだ、子供なんだけど?」


「ああ。たまたま、城壁の外で美味しい焼き芋を売ってる子供達の話を聞いてね。そして、調査に訪れたら、なんとグラスホッパー騎士爵の家紋が描かれてる荷馬車で、焼き芋を売ってるじゃないか!

 まあ、子供達だけで、焼き芋を売ってるのも不審だが、子供達3人だけで、片道半日も掛かるカナワン城塞都市に来るだけでも、普通じゃない。で、どんな子達か、ずっと様子を見てたんだよ!」


「いや、幼い子供の後をつける大人の方が怪しいだろって!」


 ヨナンは、逆に言い返す。


「いやいやいや! こちらもタダの子供なら、普通に事情徴収するが、君達は、あの大戦の英雄エドソン・グラスホッパーの子息だぞ!

 それに、今、カララム王国学園に入学してる4人の子息達も、戦闘能力においてだけは優秀だと話を聞いている」


「で、何が言いたいんだ?」


「君達の今の立ち振る舞いを見て、是非、イーグル辺境伯の陣営に入って貰いたんだ!

 我々の尾行に気付くなんて、やはり、ただの子供達じゃないと分かったんでな!」


「ん? カナワン伯爵じゃなかったのか?」


 ヨナンは、首を捻る。


「我が主、カナワン伯爵様は、イーグル辺境伯の寄子だよ」


「イーグル辺境伯って、確かカララム王国東側を治めてる大貴族か?」


「そうだ。カナワン伯爵家は、イーグル辺境伯を寄親とする勢力に属している!」


「もう1つ確認するが、トップバリュー男爵家とは関係有るか?」


 ヨナンは、気になる事を1つ確認してみる。


「成り上がりの金の力でものを言わせて、王家に近付く売国奴の男爵家の事を言ってるのか?」


 どうやら、カナワン伯爵家と、トップバリュー男爵家は、相当、仲が悪そうである。


「そこまで言うという事は、トップバリュー男爵家とは、敵対関係と考えていいのか?」


「ああ。敵と言われれば敵だな!」


 カナワン伯爵の使いと名乗る男は言い切った。


『ご主人様! 敵の敵は味方という事になると思います!

 僕の鑑定で調べても、イーグル辺境伯と、カナワン伯爵は良識派。前の周回でエドソンが殺された戦争でも、イーグル辺境伯とカナワン伯爵は関与してませんね!』


 丁度知りたかった情報を、鑑定スキルが教えてくれる。


「なるほど。俺も、トップバリュー男爵家は大嫌いだからな。

 イーグル辺境伯の陣営につくという話は、一応、養父である父に話しておく! それでいいか?」


「ああ。頼む! で、返事はいつ貰える?」


「取り敢えず、親父も考える時間が欲しいと思うので、1週間後、俺がグラスホッパー騎士爵の考えを代わりに伝えるということでいいか?」


「君は、カナワン城塞都市で、焼き芋を売りに来てるのだよな?」


「ああ。多分、焼き芋を売ってる筈だから、いつでもコンタクトを取ってくれ!」


「分かった。じゃあ、カナワン伯爵様に、そう伝えておく」


 カナワン伯爵の使いの男達は、そう話すと街の中に紛れるように消えて行った。


「ヨナン兄ちゃん! 凄いよ! 大人の人達と対等に話すなんて!」


「お兄ちゃん、凄ーい!」


 男達が消えると、コナンとシスが、羨望の眼差しをしてヨナンを見てくる。


 まあ、実際、鑑定スキルにより前世の地球の知識も得て、この世界でも2回目の人生を送ってるので、普通の子供よりは大人と話し慣れているだけなんだけど。

 どうやら、地球ではサラリーマンとかいう職業をやってたらしいしね。


「まあ、俺は、コナンとシスの兄ちゃんだから、こんぐらい出来て当然だな!」


「凄い!ヨナン兄ちゃん!」


「お兄ちゃん! 私が大きくなったら結婚して!」


 コナンとシスに褒めらて、少し気分が良くなってしまうヨナンであった。

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