第22話 ヨナン、伐採無双する所を家族に見せつける

 

『ご主人様、木工スキルの事、エドソンに話しちゃって良かったんですか?』


 ヨナンが自分の部屋に戻ると、鑑定スキルが聞いてくる。


「別にいいんだよ!」


『だけど、ご主人様、前回の時、エリザベスに搾取されるから、絶対にグラスホッパー家の人達にバレないようにと言ってたんじゃないですか?』


「別に、エリザベスに搾取されても構わないよ。それ以上に稼げばいいだけだし。

 それに、エリザベスだって、根は優しい人だと思うんだ。

 ただ、グラスホッパー家は貧乏過ぎて、視野が狭くなってただけだと思う。

 だって、国に税金払わないといけないし、今だって、セントとジミーとトロワと、それから長女のアンをカララム王国学園で寮生活さしてるんだぜ。

 そして、これから五男コナンもカララム王国学園に入れなきゃいけないので、今からお金の工面に躍起になっているんだよ!」


『言われてみれば、そうですけど……』


「だから、グラスホッパー領に隣接する大森林を開拓して、秘密裏にグラスホッパー領をデカくするんだよ!

 誰も辺境過ぎて、グラスホッパー領の大きさなんか知らないんだから!

 いつの間にか広くなってても、誰も気付かないだろ!」


『なるほど、大森林の肥沃な土地を、グラスホッパー領と繋げちゃうんですね!』


「ああ。アスカもやってただろ! まあ、アスカの方が壮大で、トップバリュー領と、グラスホッパー領と、開拓した大森林を全部合体させちゃったけどな!」


『だけど、そんな事したら、またアスカが現れて、グラスホッパー領を搾取しようと企んでくるかもしれませんよ?』


「それも考えてるよ! だから今回は、トップバリュー男爵領には近づかない」


『え? それじゃあ、アスカにザマーできませんし、大森林で取れた公爵芋や、ご主人様が作る木工細工が売れませんよ?』


「アスカに下手に近づいて、エドソン達が殺されたり、グラスホッパー領が搾取されるよりマシだろ?

 アスカにザマーするのは、俺がもっと力を付けた後で構わない。

 だって、今の俺には、お前に見せてもらった地球の知識だって有るんだぜ!

 しかも、アスカは、商会のお嬢様だってのに、異世界転生お約束のマヨネーズも世に出してねーんだぞ?

 これは付け入る隙が、幾らでもあるって事だし、多分、アスカは異世界転生ラノベを全く読んでない筈!」


 ヨナンの勘は、当たらずとも遠からず。確かに、アスカは異世界転生のラノベなど、全く読んでいなかった。

 何故ならアスカが、地球でハマってたのは、乙女ゲームだったから。


 まあ、ヨナンも乙女ゲームなどやった事ないので、どっちが優位とか全くないんだけどね。


 ーーー


 次の日、エドソンが、妻のエリザベス。五男のコナン、次女のシスと、家に居る家族全員を呼んで、ヨナンが大森林を開拓する様子を見せる事となった。


「アナタ、ヨナンが大森林を開拓出来るって本当なの?」


 エリザベスは、全く信じてない。


「ああ。ヨナンは嘘を付かない男だ! アイツの本当の父親も、友達思いの気持ち良い奴だったし、俺はヨナンを信じる!」


 エドソンは、いつものようにヨナンに過大過ぎる信頼を置いている。

 まあ、前回死に戻り前は、ずっとエドソンに、木工スキルの本当の力を隠して嘘ついてたんだけど……。


「ヨナン兄ちゃん! 頑張れ!」


「お兄ちゃ~ん、頑張って~!」


 殆ど絡んだ事のないコナンとシスも、何故だか分からないが、物凄く応援してくれている。


「じゃあ、まあ、見ててくれ!」


 ヨナンは、斧を持ち、そして、


「ウオリャァァァァァァァァァァァーー!!」


 スパッ! スパッ!スパッ!スパッ!スパッ!スパッ!スパッ!スパッ!スパッ!スパッ!スパッ!スパッ!スパッ!スパッ!スパッ!スパッ!スパッ!スパッ!スパッ!スパッ!スパッ!スパッ!スパッ!スパッ!スパッ!スパッ!スパッ!スパッ!スパッ!スパッ!スパッ!スパッ!


 一気に大森林を開拓する事、5分。

 地球の知識で言うと、東京ドーム2つ分の土地の木を伐採してしまった。


 そんな様子を、エドソンとエリザベスと、幼い弟と妹は、口をポッカリ開けて見ていただけ。


「まあ、こんな感じなんだけど?」


「こんな感じって、お前の大工スキルはどうなってんだよ!」


 エドソンが、驚き過ぎて、ヨナンの肩を掴みガクガク振る。


「ちょっと、痛いって! まだ、木を切っただけで、土地を耕してないんだから!」


「おお、そうか、スマン」


 エドソンは、我に返り、ヨナンを離す。


「そんじゃあ、今から耕すから!」


 ヨナンは、斧からクワに持ち替え、一気に畑を耕していく、それも5分で、


 ここまでくると、誰も呆れ返り、ヨナンに突っ込まなくなる。

 だって、突っ込んでもしょうがないし、ヨナンがそういう生き物だと認識するしかないのである。


「ヨナン兄ちゃん、凄いや!」


「お兄ちゃん~格好いいーー!」


 なんか、コナンとシスのヨナンを見据える目が熱い。


「俺って、こんなにコナンとシスに、人気あったけ……」


 ヨナンは、知らない。

 コナンとシスは、別にヨナンを嫌いで、ヨナンに近づかなかった訳ではないのだ。

 ただ、母親のエリザベスが、「ヨナンに近づいちゃ行けません!」と言っていたので、近づかなかっただけで、いつも芋堀りが異常に上手いヨナンに興味津々だったのである。


「じゃあ、今から芋を植えるぞ!」


「やったー!」


「ついに!」


 何か、コナンとシスの盛り上がりが凄すぎる。

 まあ、コナンとシスは、今までヨナンと喋るのを禁止されてたのだけど、その禁止していた張本人のエリザベスが、今も放心状態なので、今まで喋れなかった分、頑張って応援してるのである。


「じゃあ、一気にいくぞ!」


「「おおーー!!」」


 何か、よく分からないが、エドソンも、コナンとシスに混じって応援している。


『ご主人様……何泣いてるんですか?』


 鑑定スキルが、泣きながら芋の種付けをしてるヨナンに話しかける。


「だってよ……絶対に嫌われてると思ってた、コナンとシスに応援されてるんだぜ。こんな嬉しい事、他に無いだろうがよ!」


『ええと……別に、コナン君とシスちゃん、ご主人様が死に戻る前も、別にご主人様の事、嫌ってなかったですよ。

 たまに、楽しそうに、ご主人様の事、こそこそ見てましたし、どっちかというと応援していたような……』


「えっ?そうだったの?」


『そうですよ。知らなかったのは、ご主人様だけですよ』


 知らぬが仏。この諺が今の心境にあってるか疑問だが、地球の知識を得たヨナンは、早速思い出した日本の諺を使って、今の気持ちを噛み締めたのであった。

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