失われた世界で
美鈴
全て失くした世界
「目を覚まして下さい…」
─声?
「
─僕が?
「そうです。貴方にしか出来ないことなのです…」
─何故?
「地球で一番ゲームが大好きで一番ゲームが上手く、何より心が綺麗な人が貴方だから選ばれたのです…」
─確かにゲームは好きだよ。ということはゲームをすれば良いの?
「少し違います。私が造った異世界へ行って欲しいのです…」
─異世界!?
「そうです。異世界です。その異世界で失われたたモノをどうか取り戻して欲しいのです…」
─取り戻す?
「!?」
─?
「ごめんなさい。時間が足りませんでした…勝手な事をする私をゆ…る…し……」
─えっ?何?聞こえない…うわぁぁぁぁ!
聞こえていた声が聞こえなくなり急に身体が地面に叩きつけられる。いたたたた!何?どうなってるの?起き上がってみるとそこは真っ暗な明かり1つ無い街だった。なんだろう。真っ暗なのは分かるんだけど何か違和感が。
あそこに居るのは人?
「あの~すいません。ここは?」
「…」
「え~と、言葉は分かりますか?」
「…」
立っている人の正面に立ち言葉を掛けるが一向に動かない。
「ひっ…し、死んでるの?」
立ったまま微動だにしない中年の男性。恐る恐る触れてみると固い。石像を触っている様な感触。
「人では無い…の?それにしては良く出来ているけど…」
周りを見渡すと同じ様にまるで時が止まった様に色々な姿で止まっている人?の姿がちらほら見える。
「一体ここは…」
「あっ!居た居た!」
「えっ?」
なにやらこちらに近付いて来る影が…
「ねぇ、君が女神様に連れて来られた男の子だよね?」
「女神?」
「あれ、女神様からこの世界について聞いて無いの?」
「うん。気が付く前に聴こえてきた声がもしかして君が言う女神様?」
「あ~、多分そうだと思う。それでどこまで話は聞いたの?」
「え~と、異世界に行って失なわれた何かを取り戻して欲しいと言ってた様な…」
「うん。大体そんな感じかな。あっ、自己紹介がまだだね。私はリース。この世界で女神様の加護を受けて神託を聞く事が出来る聖女よ」
「僕は
「分かったわ。繁ね!早速だけど付いて来て」
「うん」
リースの後に付いて行きながらも周りを見ると人も犬や猫、鳥もやっぱり時が止まったているかの様。そして真っ暗だけど分かった事がもう1つ。色が無いのだ。目が慣れてきたから分かった事だけど全てが黒い。もしかして失なわれたモノって色?そうこうしていると一件の古びた教会へとたどり着く。中に入ると急に明るくなる。
「まぶしっ」
「ごめんね!眩しかったよね?」
ゆっくり目を慣らしながら閉じた目を開いていく。透き通る様な腰迄ある長い銀髪の美少女の姿が視界に映る。
「綺麗…」
「ふ…ふぇ!?」
「いや、ごめん。何でも無い。それでここは?」
「…ふぁい、ぇぇと…」
『ごめんなさいね、繁。リースは男の子にそういう事を言われるのは慣れていないの…』
「め、女神様…にゃにを…」
「本当にごめんね。リース。思った事をそのまま言ってしまって…」
「あぅぅ…」
『…さ、流石心が綺麗なだけあって無自覚なのね…。おっほん!とにかく貴方を勝手にこちらの世界に連れて来て申し訳無いと思っているわ。今の私には地球に干渉出来る力が殆ど残っていなかったから…ごめんなさい。本当に貴方しか居ないの…』
「分かりました。何が出来るか分かりませんが教えて頂けますか?」
『まずここは私がリースの為に与えた女神の祝福が施された場所。つまり聖域です…』
「なるほど。女神様と話せる場所という事ですか?」
『そうですね。そういう解釈で大丈夫です。それで繁がここに来る迄に気付いた事はありますか?』
「え~と、この世界は時が止まっているかの様になっている事とか色が無いとかそういう事ですか?」
『大体合っているわ。この世界は全て奪われ全てを失っている状態なの…』
「失われてる?」
『ええ。堕ちた女神によって…』
「堕ちた女神…」
『ええ。堕ちた女神は今力を失い眠りについてるいます。その辺りについては追い追い説明していくわね。まずはこれを…』
天から光が降り注ぎ何か野球ボールの様な物が3個ゆっくりと落ちて来て視界の高さでプカプカ浮いている。
『その球は
光輝く球の1個を手に取りよく見ると真ん中に文字が見える。これはひらがなの…
「『ひ』?」
ポォォォ!ヒュッ!
「「消えた(わ)?」」
『残りの二つも手に取って下さい…』
「はい。こっちは『り』…それと『か』」
ポポォッ!!シュンシュン!!
「「また消えた(わ)?」」
『消えたのではありません。失なわれた文字が再び放たれたのです…』
「これが繁の力なのですね女神様?」
「僕の力?」
『そうです。文字球を解放出来るのは繁だけなのです。それだけではありません。解放した言葉は繋げる事でそれぞれ言葉に宿る言霊の力を繁は使う事が出来るのです。試しに解放した3個の文字を使って言葉を作ってみて下さい…』
「『ひ』と『り』と『か』だから…えっと、ひか…り…『光』」
僕の周りが明るく照らし出される。
「凄いわ繁!これなら真っ暗な外を不自由無く移動出来るわ」
『まだ言葉が足りない為、今は繁の周りを照らすだけの光ですが他の文字球を見つけ解放していく事で街にも…いずれはこの世界全てを照らせると思います。他の文字球は繁が心で念じると文字球の場所が把握出来る筈です。色々な場所に散らばっています…時間が来た様です。大事な事を伝えて置きます。この世界は空気も失われています。生物を解放する前に生物が生きていけるだけの環境作りからお願いします。あなた達2人には女神の加護が与えられているので空気も水も食料も必要ない様にしていますのでどうか早く……………』
「女神様?」
「時間が来たのよ」
「時間?」
「ええ。女神様は堕ちた女神を封印する為に力を使われたの。だから今は女神様からの神託も限られているの」
「なるほど。少しでも早く文字球を見つけないといけないんだね?」
「ええ」
「じゃあ早速出発しよう!女神様の言う通り文字球を心で思うとなんとなく文字球の場所が分かるんだ」
「ええ。宜しくね、繁!」
「うん。宜しくね、リース!」
「じゃあリース着いて来て。この街に二つ文字球があるっぽい」
「うん」
光を解放したお蔭で先程とは違い僕の周りだけだがよく見える。教会を後にして道なりに進んでいると露店は所狭しと並び、賑わってる最中だったのだろう、沢山の人が行列を作り止まっている。人を避けながら目的の場所を目指す。
そこは噴水だった筈の場所。水という存在が失われている為水か発射される場所からは水が噴き出した状態で固まっている様だ。
近付いてみると噴水の水が貯まる場所に三つもの文字球が確認出来る。
「繁見て見て!3つも文字球が…」
「うん。案外早く見つかって良かったよ。後は何の文字なのかという事だけど…」
濡れるという概念も失なわれている為か普段と同じく水がうる筈の場所を普通に歩いて文字球を手に入れる。
「何、何?何の文字球なの?」
「う~んと、こっちは『き』でこれか『く』
そして『う』。これはツいてるよ、リース!」
ポオォ!シュンシュンシュン!!!
「どうして?」
「解放して手に入れた文字を組み合わせてみると『空気』!これで生物が呼吸する事が出来る様になったんだ!」
「やったぁー!また一歩この世界をあるべき姿に戻す事が出来たのね」
「うん。ちょっと待ってて!」
「うん」
─今手に入れてる文字はひ、か、り、く、うき、の6つの文字。これで出来る言葉は他にあるか考えてみよう。『引く』・『狩り』・『
『茎』・『羽化』・『瓜』・『浮く』・『喜雨』・『帰化』・『気化』・『霧』・『菊』
『聞く』・『聴く』・『効く』『機器』・
『危機』等、今思いつくのはこれくらいかな?
「リース、今の所思いついたのはまだ必要な言葉では無いみたい」
「そっかぁ、どんどん探さないとね!」
「うん。じゃあ、次に行ってみるとしよう!」
「分かったわ!」
俺達は街を離れ西にあった森の中へと足を進める。森の中は真っ暗でいかにも何か出そうな感じ…。
「光があるとホント真っ昼間みたいで便利ね」
「…そうだね」
「どうかしたの、繁?」
「あ~、反応がどうもここの上なんだよね」
「この大きな木?」
「そうだよ。どうしようかな…」
「私もこんなに大きな木は登れないし…」
「えっ、リースは木登りが出来るの?」
「忘れて今の言葉は!」
「あ、はい」
「どうしようか繁?」
「そうだ。言霊の力を使うね」
「!?…分かったわ」
「言霊よ、2人に言葉の力を!『浮く』!」
自然と足が地面を離れ身体が浮いている。木のてっぺんを目指す様に念じると段々目的の場所へと浮いていく。
「凄い繁!浮いてるわ!浮いてるわよ!空なんて飛ぶの始めて!」
「そうだねぇ…あああぁぁぁぁぁー!」
「繁どうしたの!?」
「し、白…」
「んっ?」
「いえ、何でも御座いません!」
「…………見た?…………見たのね!」
「違う!今のは不可抗力で…!リースが先に進むから!」
「ば、馬鹿!エッチ、スケベ!」
「とにかく行こう!」
「誤魔化したわね!せ、責任は取って貰うんだからね!」
「コホン!ほら…あったよ!」
「もうー!この話は今度するんだからね!それで何の文字球なの?」
「ちょっと待っててね……『み』みたい」
ポォ!シュン!
「何か解放出来るの?」
「う~ん、そうだね。え~と……『海』とかかな?」
パアアァァァ────────────!!
「眩しい、何?この光」
「もしかしたらこの世界の海が本来の姿を取り戻したのかも?」
「なるほど。確かにそれしか考えられないわね」
「そのうち確認に行こう。今光った方向と違う所から次の文字球の反応があるからそちらに向かおう!」
「うん」
僕達は次の文字球の反応がある場所へと向かう。進んでいると見渡す限りの森が見えてきた。
「ここは精霊の森と呼ばれていた森よ」
「そうなの?」
「ええ、今では見る影も無いけど…」
「ああ~、色も失われているからだね?」
「ええ」
「精霊の森という事は精霊が棲んでいたのかい?」
「そうね、精霊はよく街の中でも見かけていたわよ!」
「流石異世界だね。いつか見てみたいな」
「見れるわよ。だって繁が救ってくれるんだから」
「僕に出来るかな?」
「出来るわ、繁と私なら!」
「…うん、そうだね。リースとなら出来そう…ううん、出来るよね!」
「うん!じゃあ森の中へ行くわよ!」
「うん」
道なき道をゆっくりと力強く僕とリースは進んで行く!突然リースが僕の口を塞ぎ木の影に引っ張り隠れる。何があったんだろう。
(見て、繁)
リースが指指す方には動く人影?
(あれは堕ちた女神の化身よ。たまに見掛けるの)
(倒せるの?)
(う~ん、女神様からは見掛けたら隠れる様に言われているわ)
(そうか。倒す方法はあるけど今の僕達では無理だという事だね)
(多分その通りよ)
(このまま隠れてれば良いの?)
(ええ、化身は堕ちた女神の力で動いているから堕ちた女神が封印されてる今は活動時間が少ないの)
(万が一見つかっても逃げれば消えるんだね?)
(うん。ただ化身にも強さがあるから見つからないのがベストね)
(分かった)
(ほら、消えていくわよ)
化身はゆっくりと霧状になり霧散する。
「さぁ、気を付けて先に進んで行きましょう」
「そうだね」
どの位森の中を歩いただろうか?太古の森ともいえる神聖な感じがする人の手が全く入ってない森。色が失われてなければさぞかし神々しくもあっただろう。そんな獣道を奥へ奥へ進むと泉ある場所に出れた。泉の底から文字球の気配。3つもある?
「リース泳げるかい?」
「一応泳げるけど…」
「けど、ってどうかしたのかい?」
「服が濡れちゃうから脱がないと…」
「ああー下着は着てるんだよね!大丈夫!僕達の世界にも泳ぐ時は下着みたいなものだから」
「えっ、そうなの?は、ハレンチな世界なのね。繁の世界は…」
俺はそう言うとパンツ一丁になる。
「きゃあー!いきなり脱がないでよ!」
「えっ、大丈夫!履いてるから!」
「んもぅー!分かったわよ。脱ぐけどこっち見ないでね!」
「うん」
シュッ…シュルシュル…パサッ!シュル…パサッ!パサッ!…。
「じ、準備出来たわ!」
「じゃあ、行こう………か……」
「どうしたの、繁?」
「……ぁ……あぱ…」
「あぱ?」
「パパパ、パンツが…」
「何、聞こえないんだけど?」
「リースパンツが脱げてる!」
「ふぇ……………………きゃあー!」
バチン!
「エッチ、スケベ、繁のアホ!マヌケ、エロ親父ぃ!」
「僕のせいではない様な気がするんだけど、殴られ損じゃない?」
「もう~、馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿!!先に行くから!」
水に飛び来んだ筈なのに音も無い。もしかして脱がなくても濡れなかった?リースの綺麗な色白な裸を見れて役得だったかも知れないけど後で殺されるかも…ハハハ…。僕も取りあえず行くか!
川の底には3つの文字球があった。
「あのね繁!1つ言いたい事がさっき出来たのだけれど…」
「ちょっと待ってて。文字球から解放するから!えっ~と『ず』、『も』、『り』だね」
ポォポォポォ!!シュッシュッシュン!
「もしかして繁」
「うん!解放するよ『森』に『水』よ!」
精霊の森が一気に色づいていく!側にある水も。ただ水は流れてはいないみたい。その場に水が留まっている感じかな。川を解放したら多分流れていくのだろう。
これで解放した文字球は、『か、り、く、う、き、み、ず、も、り』だね。
「やったわね、繁!」
「うん!森が色づいて水も解放された。少しずつ解放出来てきてるね。先は長いけど…」
「でも繁と私なら必ずこの失われた世界を取り戻せるわ!」
「これからも宜しくね、リース!」
「末永く宜しくね旦那さま♡」
「えっ?」
「だって私の裸を見たんだもの、当然でしょ!」
「う~ん、まぁ、良いか。それではこちらこそ末永く宜しくね奥さん」
「はい♡」
こうして二人の長い旅路は続いていく事になるのだが困難で険しい道になることを二人はまだ知らない。
失われた世界で 美鈴 @toyokun
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