先輩がいた夏(仮)

@lotus_novels

プロローグ

あれは確かに先輩がいた夏だった。


誰かに話したところで馬鹿にされるだけだ。夢だったんじゃないかとも考えた。


信じてくれない周りを憎んで、先輩の居なくなった世界に意味なんてなくて、だけど先輩のいた夏は愛おしくてたまらなかった。


2人きりで過ごしたあの夏の生ぬるい夜も、マヌケな先輩が零してくれた微笑みや涙も全部無くなっていい。俺はただ、先輩が世界のどこかで生きていてくれればそれで良かった。


これから説明する物語は俺の中では確かに存在していて、まるで作り話のような曖昧で不鮮明且つ不可思議な夏があった。



あれから少し月日が経った。先輩と過ごしたこの部屋の時計はあの時から止まったままだ。

先輩のいないこのセカイに取り残された、数年後の俺は、先輩が残していった数冊の本とベッドで寝そべる先輩の残像を思い出しながら、俺はペンを持つ。


一夏の終わりと秋の訪れがまた僕を淋しくする。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る