第14話 ダズ視点〜貴族の俺が土下座までしたのに〜
……だが今更後悔したところでもう遅い。
既に期日は差し迫っており、この俺を裏切ったクソ女とはいえすがりつくしかないわけで。
「俺を騙していたことはこの際聞かなかったことにしよう、だから頼む――頼みますどうか見捨てないでください! 今ルアンナ嬢に捨てられたらもうどうしようもないのです!」
恥をしのんで土下座する。
こいつに頭を下げるのは死ぬほど屈辱的だが、それでも借金を抱えて実際に死ぬ思いをするよりはいい。
「ああやだやだ、そんなことしないでもいいわ。アンタの土下座に銅貨一枚ほどの価値もないし、たんに見ていて不快になるだけだわ」
「そうおっしゃらずに! せめて結婚が駄目ならお金だけでもお貸しくだされば……!」
「無理に決まってるでしょ。わたしのわがままで自由になるお金なんてそれこそ一般的な慰謝料の相場と変わらないわ。だけどそれをアンタに貸す義務も義理もないから他を当たることね」
「ーっ、なら俺とメリエッダが復縁できるように取りなしてください! 貴方にだって説明責任があるはずだ!」
「まあ一理あるわ、でもそれはあとから個人的にわたしの方でやっておくからアンタは気にしないでいいわよ。それにあの子ならもうとっくに良縁に恵まれたから、今更アンタがよりを戻す余地はないけど?」
「なんだと! あいつめ、もう新しい男を作ったのか、くそっいやらしい女め! ……いや待てよ俺と婚約破棄する前から本当は別の相手がいたんじゃないのか⁉ だったらこれは向こうの有責? なのだから、慰謝料を逆にもらえるのでは⁉」
「自分勝手な妄想もそこまでいくと大概ね、付き合ってられないわ。なら頑張って一人でも不貞の証拠を探すことね」
「つれないことを言わないで俺に協力くらいしてもバチは当たらないだろうルアンナ、偽りの関係だったとはいえ愛を囁きあった仲じゃないか!」
「気持ちの悪いことを言わないで、鳥肌が立って仕方がないわ。だいたいアンタと会うのだって、今回で三回目でしょ。その中でわたしがひそかに囁いたのは愛じゃなくてアンタに対する悪口だけよ。それじゃあね!」
「あっ、待ってくれ!」
踵を返して俺のもとから去ろうとするルアンナに手を伸ばす。
しかし次の瞬間段差に蹴躓いてその場で転び、右手は虚しく空を切った。
「せめて証拠探しの探偵を雇うお金くらい貸してくれルアンナーっ!」
最後に恥も外聞もなくそう叫んだが、当然彼女からの返事はなかった。
https://kakuyomu.jp/my/news/16817330656963313053
↑情けない姿のダズの挿絵です。
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